お祖母ちゃんに会ったら『宗教』の語について思うところあった件について

先般の春休みは家族で母方の祖母に会いに行った。ひ孫の顔を見せ行ったのだ。特に末っ子は生まれた年からコロナ禍が始まったので、初めて会わせてやることができた。

その時に当山に植っている枝垂れ桜の話題になった。その桜は昔、祖母が贈ってくれたもので、ある有名な桜の枝分けである。祖母が観光に行ったらそこで売っていたそうな。そこで当山に3本、祖母の自宅に1本、買ったわけだ。
ところが祖母の家のは鉢植えなので大きくならないし、花も数えるほどしか咲かない。それでも祖母の毎年の楽しみではあるのだが、地植えにした当山の桜は石垣のように立派に育っている。それもそれで、写真で見るのを楽しみにしている。そのため顔を合わせるたびにその桜の話題になるというわけだ。

今回はこんなことを聞かれた。
「あんた、桜の管理はどこの業者さんに頼んでるの?病気になったり虫がついたり大変でしょうよ。」
私は一瞬キョトンとして、それから苦笑いになって言った。
「管理なんかしてないよ。放ったらかしさ。」

桜のために業者など頼んだこともないし、別段、病気や虫が問題になったこともない。スクスク育っている。何を管理などと身構える必要があるものか……そう思って苦笑いになった。

ところが、だ。先日YouTubeのメンバーシップ「大慈の密室」限定動画で、桜の剪定の動画をアップした。剪定と言っても、桜はあまり切るべきではない木だ。樹形を整えたりするわけではなく、てんぐ巣病の枝を切り落とすという、ただそれだけの動画だ。

動画でいい加減なことを行ってもいけないので、撮影に当たっててんぐ巣病について一応ググってからトークすることにした。曰く、

>カビの一種が原因で発生する伝染病で、病気にかかった枝についた葉の裏面に形成された病原菌の胞子が、空気中に飛んで感染していきます。感染すると枝が異常に発生して、花が咲かなくなる病気です。放置しておくと感染した枝はやがて衰弱し、枯死してしまいます。
(公益財団法人日本花の会 https://www.hananokai.or.jp/sakura/sakuramihonen-info/sakuramihonen-info-list11/

……ん?伝染病??病気???……あっ、これ病気やん。そういえばテング巣『病』っていつも言ってたやん。病気だという認識はしていたけど、なんと言うか……病気としてピンと来ていなかったと言うか……。そしてこれ、毎年毎年毎年、師匠や私が枝を切除して処置していた。これを『管理』と言うんだな。管理としてピンと来ていなかった。

お祖母ちゃん、ごめん。大嘘言ったわ。「管理なんかしてないよ。放ったらかしさ。」って言ったけど、業者を呼ばずに自分たちで管理してた。毎年毎年切ってて放ったらかしじゃなかった。ただ、管理という自覚が無く、『枝を切ってる』としか思ってなかった。。。

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おそらく、日本人の「初詣やお墓参りはするけど、無宗教です」という感覚もこれと同じなのだろう。私は「毎年、枝を切ってるだけで、管理なんて大したことはしていない。」と思っていたわけだが、「いやいやいや、その毎年、枝を切ることを管理と言うんだぞ」という話なわけだ。私は撮影の時にたまたまピンと来たが、その前にお祖母ちゃんに言われてもキョトンとしてしまった。
これがそのまま「毎年、初詣やお墓参りはしているが、宗教なんて大したことはしていない。」「いやいやいや、その毎年、初詣やお墓参りをすることを宗教と言うんだぞ。」(キョトン)と当てはまるわけだ、

この「ワタクシはそんな大層なことはしておりません」という思い込みは他にも生活の節々にたくさんあるように思う。例えば推しのミュージシャンなどでも、「私がファンなんて言ったら本物のファンの方々に大変失礼ですが……」というアレ。アレなども同類ではなかろうか。

宗教の場合はカルトのイメージが宗教の語感に付いてしまっている問題もあるが、このように考えると宗教という語感を自然な本来のニュアンスに戻すのはなかなか容易ではないように思われる。それでも頑張るべきか、それとも「ファン」に対する「推し」のような(現状として)柔らかい語感を持つ言葉を工夫すべきか、なかなか難しいところだ。

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宗教の語感についてはYouTubeでも語っています。そもそも政府が語感を変えたのですよという全く別の切り口ですので、よろしければ併せてご覧ください。

宗教はなぜアブナイか!?曹洞宗のお坊さんが真相を語る!!

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