ロッカーとシュレッダー
前の職場では、正職員は更衣室にロッカーを一つと
事務室にマイデスクとマイパソコン(マイアドレス)を揃えてもらえた。
そこで10年以上働いていた私は、それが当たり前だと思っていた。
途中で職員が増え、更衣室のロッカーはパートさんに譲ったが(パートさんはロッカーを一つ借りられる)
その時にはマイデスク足下に段ボールを置いてものを置いた。
移転に伴い、再びロッカーを借りられた。
やがて私は転職し
前の職場ではかなり恵まれていたのだと痛感した。
マイデスクやマイパソコンはなく
与えられたのは小さなロッカーが二つだった。
施設開設当時はロッカーがまだなくて段ボールに荷物を置いていたという。
それに比べたら、ロッカーがあるのはまだ幸せなのかもしれない。
やがて転職先も移転した。
前よりも敷地も建物も広くなった。外観はキレイだ。
だけど、敷地内は遊ぶスペースが狭くなり、掃除範囲は広がった。
物を引っかけるスペースはなくなり、上の空間が活用しきれなくなった。
水道やトイレの数は増えたが、使い勝手が悪くなった。
前の職場も同じだった。
移転したら、外観はよくなったが、使い勝手はすこぶる悪くなった。
移転先では、事務室から一番遠い場所にロッカーが設置された。動線がすこぶる悪い。
うちの職場は大抵半日が野外仕事で半日が室内仕事であり
いちいち荷物や上着を取りに行くのが面倒だった。
なんせ、直前に今から野外だの室内だの言われるのだ。
利用者が登所してから、長い距離を移動するのは大変だ。部屋には誰かしら職員がいなければいけないのだから。
仕方なく、バッグや上着は適当な場所に置いた。
下駄箱も使い勝手が悪くなった。
上履きを置く場所がなくなってしまった。だから適当な場所に置いた。
移転してから一年が経ち
上が事務室の配置を大幅に変えた。
共用パソコンの位置は変わり、やりにくくなった。
上は共用パソコンを使わないからどうでもいいのだろう。
下駄箱も新しくした。
靴を置く場所はできたが、使い勝手は更に悪くなった。
だが、一番の問題はロッカーだ。
今使っているロッカーを撤廃し、大きさを1/3以下にするという。
私は異論を唱えたが、無駄だった。
移転はよりよく生活するためにするものだと思っていた。
だけど、福祉施設における移転とは、我慢と諦めの連続なのかもしれない。
前の職場だけでなく、今の職場でもそうなのなら仕方ない。
私は荷物整理をした。
いくつかの荷物は捨てたり、持ち帰ることにした。
ロッカーからは、様々な資料が出てきた。
転職して三年かけてやった、あの仕事、この仕事。
褒められなくても認められなくてもよく頑張ったな
と、自分で自分を褒めたい。
シュレッダーにかけた。
もうどうでもいい。
見返すこともないし、置き場所もない。
ゴミでいい。
かつての自分の頑張りが一つ、また一つとシュレッダーにかけられて粉々になり
私はスッキリした。
断捨離は心を軽くする。
期待をしなくなると心は軽くなる。
あれもこれも捨ててやる。
そんな気持ちでシュレッダーに次々にかけた。
もう段ボールでいい。紙袋でもいい。棚の上でもいい。荷物の置き場所がほしい。
そのためには更に転職しかないんだろうな。