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忘れものをした日

水分補給は大切だ。
特に夏場は更に大切だ。

 
利用者というのは極端で
水分補給をし過ぎてストップがかかる方と
水分補給をしなさすぎて促しが必要な方がいる。

障害というのは加減の調整が難しいことをさすような気がしている。

やりすぎか、やらなすぎというか。

 
利用者Aさんはその日、水分補給をあまりしていなかった。 

何度も促したが、拒否が激しかった。
あまりに促しすぎると苛々して噛みついてくるが
水分補給をしないと体に良くないので
こちらも噛みつきくらいを恐れて促さないわけにもいかない。

 
その日は暑い一日だったが
水筒はあまり減っていなかった。

ギリギリまで粘ろうと
私は水筒をバッグに入れなかった。
いつもなら水筒を入れるタイミングでバッグに入れなかった。

 
そんなタイミングで他の利用者から話しかけられ、対応しているうちに
Aさんは帰る時間になり
まんまと水筒を置いていった。

運転手の同僚に慌てて電話をし、LINEをしたが時すでに遅しで間に合わなかった。

 
Aさんの家には予備の水筒があるし
施設にも予備の水筒を預かって置いてあるが
忘れた日がお盆休み前日だったのがよくなかった。

何日も預かりっぱなしはよくない。

 
帰り道に私が届けると言った。
ちょうど私が帰る方面に家があるし、大した寄り道ではない。

私が最終確認を怠ったのだから
私が届けるのは当然だと思った。

 
「いや、俺行きますよ。俺の家のが近いですから。」

リーダーが言う。

いやいや、リーダーにわざわざ寄ってもらうなんて申し訳ない。

 
「それがいいわね。真咲さん、リーダーに任せなよ。」

事務長が言う。
私はなおも自分が行くと言った。

 
「でもあそこは細道バックだし、入りにくいよ。俺は行き慣れているからいいけど、壁が近い。

俺んちの方が近いし届けるって。」 

リーダーはなおも言う。
気にするな、と言わんばかりに。

 
それで結局はリーダーが帰り道に届けてくれることになった。
頭が下がる。
リーダーができた人すぎて申し訳ない。

 
 
施設職員は日々忘れものと戦っている。

どんなに気をつけていても
時々利用者の持ち物を忘れてしまう。

日々確認。
みんなで確認。

それが大切だ。

 
忘れてしまった時はすぐに運転手や保護者に連絡。

場合によっては届ける。

それが仕事だ。

 
それでもリーダーや事務長が私を責めず
快く届けると言ってくれて
それが仕事からの発言だとしても
私は嬉しかったんだ。

リーダーの優しさを再確認した
お盆休み前日の仕事の日。

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