ズボンを下げた時
利用者Aさんがたまに行う行為がある。
それが、女性の前でいきなり無言でズボンを下げ、股間を見せる行為だ。
その発動条件はよく分からない。
某トイレ前でB職員の前でやったこともあったし
会議室で私の前でやったこともある。
だが
一番多い場面は
職員Bさんと利用者Cさんが某トイレに行く夕方だ。
ズボンを下げてはいけないことはわかっているのだろう。
さすがにみんなの前では行わない。
女性と二人きり、もしくは三人でいる時にしかやらない。
私が前の職場で働いている時も
やはりトイレとか個室や個室に近しい場所で二人きりの時に
男性利用者は卑猥なことをやったり、やろうとしたり、股間を出した。
だから男性利用者が
股間を女性前に出すのはそう珍しくない。
女性利用者でパンツを人前で下げる方はいないから
男の性というか
男性特有の何かなのかもしれない。
毎日もしくは毎週もしくは毎月その行為があればこちらも警戒するが
その行為がたまにあるからこちらも油断する。
その日
私はリーダーに頼まれて
利用者Aさんを見ていた。
顔つきが険しく、無言である。
あまりいい状態ではなかった。
BさんとCさんの足音が聞こえ
Aさんは走った。
そしておもむろにズボンを下げた。
ちょうどBさんがトイレットペーパーが切れて
補充しようと後ろを向いた瞬間で
明らかにCさんに見せていた。
Cさんはかわいくて大人しくて
人気No.1の女性だ。
反応を見たかったのかもしれない。
Cさんは眉間に皺を寄せながら言った。
「…汚い。」
「汚い。汚い。汚い。汚い。汚い。」
その声は小さかったから
Aさんに聞こえたかは分からない。
Cさんはかわいくて大人しくて
それでいて正義感が強い。
怒りんぼうでもある。
大人しく見える人がどこまでも大人しいわけではない。
Aさんは「キャー!」と言われたいのだろうか。
はたまた、「汚い。」等罵られることが嬉しいのだろうか。
真意は分からない。
思えば
前の職場でも今の職場でも
こういった場面で「キャー!」と言いそうな女性利用者はいない。
職員も「しまっときな。」と慣れた感じだ。
私も「ほぅ。」と言った感じで
何回も出せば出すほど
人は慣れる。
まして職員も新卒や未経験ならまだしも
もう30歳以上なのだから。
女性は案外肝が据わっている。