税理士の先生が知っておきたい雇用をめぐる最近の法律問題 #12 育児休業(5)
「働き方改革」といった言葉で表された一連の労働法規制の改正が行われてから数年、雇用関係をめぐっては続々と変化が現れてきています。
この連載では税理士の先生方にもぜひ知っておいていただきたい、最近の雇用をめぐる法律問題をご紹介していきたいと思います。
これまで、産休・育休に関する法律の規定についてご紹介してきましたが、今回は法律的な側面とは少し離れた、実際の会社における既存従業員の負担の問題について触れたいと思います。
1 一般社員の負担
同じ部署で働いていた同僚社員が産休・育休を取得することとなった場合、それまで担当していた業務を他の人が代わりに行う必要が出てきます。
人員が補充され、一人あたりの業務量がそれまでと変わらなければそこまで大きな問題にはなりませんが、人員の補充がされないケースも珍しくありません。
企業としても、復職後は原則として従前と同じ職務に復職させる、というルールを守ろうとすると、なかなか部署異動に伴って人員の補充がしにくい部分もあったりします。
育休が明けて復職しても、時短勤務となっていたり、子どもの病気などで急な欠勤、早退などが繰り返されてしまって、他の従業員に負担がかかり、不満が出てしまうケースも少なくありません。
一般の従業員に負担がかかってしまうケースが出てくることは否定しがたいところです。
2 復職意思がないケースも
しばしば受ける相談で、育休の期間が終わった後に復職しないで退職するつもりなのに育休を取得している場合があります。
実際には子育てに集中するつもりなので復職する意思はないけれど、育児休業給付金の支給を受けるために退職するタイミングを育休後にするケースがあったりします。
制度上認められたものなので、本来なんら問題が無いのですが、会社側には退職することを伝えていない一方で、親しい同僚などには戻るつもりがないと伝えていたりして、軋轢を生んでいることも少なくありません。
会社としては戻ってくると思っているので、人員補充がされず、業務上の負担が生じているケースではなおさらです。
3 企業側の取り組み
このような軋轢が社内で生じることは企業としても好ましいことではありませんし、育児をしている従業員にとっても制度が利用しにくくなるなどの悪影響が生じかねません。 企業によっては研修を設けて制度の周知を図ったりしているほか、育休取得者が所属している部署の一般の従業員に手当を支給して負担に報いたりしているケースも出てきています。
人手不足の折り、子育て支援が充実している企業ということは人材確保の面でもアピールポイントになると思われるところで、今後の動きが注目されるところです。