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税理士の先生が知っておきたい雇用をめぐる最近の法律問題 #23 個人情報保護法(5)
社会全体で「プライバシー」という意識が高まる中で、個人情報の取扱いに対する社会の関心は高まっています。
この連載では税理士の先生方にもぜひ知っておいていただきたい、個人情報保護法を取り上げていきます。
今回は、前回に引き続き実際の事例をふまえてポイントを解説していきます。今回取り上げるのは、名簿の取得についてです。
事例
営業活動の一環として、見込み顧客にダイレクトメールを発送しようと検討しています。発送先について、名簿を販売している業者から購入することを検討しているのですが、問題ないでしょうか?
インターネット上に公開されている情報を自社で収集して発送する場合はどうでしょうか?
解説
まず、名簿の購入についてですが、結論から申し上げると名簿業者から名簿を購入すること自体は禁止されているわけではありません。ただ、個人情報の取扱いについては個人情報保護法が適用されますので、その取得に当たって適正取得に関する規制(法20条1項)や第三者提供を受ける際の確認・記録義務(法30条)が適用される点には注意が必要です。
また、個人情報の提供を受ける場合には、その提供者の氏名や名称、所在地などを確認すること及び個人情報の取得の経緯を確認することが義務づけられています。したがって、名簿業者から名簿を購入するにあたっても、業者が個人データを取得した経緯などを確認・記録する必要があります。
そして、確認した結果、相手方が不正の手段により個人データを取得したことを知ったうえで、もしくは容易に知ることができたにもかかわらず個人データを取得する場合、法第20条第1項に違反するおそれがあります。
なお、現行の個人情報保護法では、名簿業者は個人情報語委員会にその旨の届出が必要とされています(法27条2項、3項)したがって、購入に当たっては個人情報保護委員会のホームページ上で、名簿業者が届出をしているかを確認する義務があると考えられています。
他方で、インターネット上で公開されている情報を自社で収集する場合ですが、このように公開されている情報も個人情報保護法の保護の対象になってきます。そのため、取得した個人情報をデータベース化して事業の用に供する場合には、利用目的の通知もしくは公表が必要となる点は注意が必要です(法18条1項)
次回も引き続き、事例をふまえて個人情報についてご説明していきます。
【執筆者プロフィール】
弁護士 高井 重憲(たかい しげのり)
ホライズンパートナーズ法律事務所
平成16年 弁護士登録。
『税理士のための会社法務マニュアル』『裁判員制度と企業対応』『知らなかったでは済まされない!税理士事務所の集客・営業活動をめぐる法的トラブルQ&A』(すべて第一法規) 等、数々の執筆・講演を行い精力的に活躍中。