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土壌汚染地の評価



1.20年ぶりに評価方法が明らかに

 7月5日、国税庁は「土壌汚染地等の評価の考え方について」を公表しました。土壌汚染地等の評価については、平成16年7月5日に情報という形で公表されていましたが、保存期限が過ぎてしまい、国税庁のHPでは確認できなくなっていました。

2.土壌汚染対策法

 平成15年2月15日に施行された土壌汚染対策法では、次のように定められています。


都道府県知事は、土壌の特定有害物質による汚染状態が基準に適合しない土地について、その区域を指定区域(要措置区域又は形質変更時要届出区域)として指定・公示するとともに、指定区域の台帳を調製し、閲覧に供する。


要措置区域の土地の所有者等は、都道府県知事から指示された汚染除去等計画を作成、提出し、その計画に従って汚染の除去等の措置を講じ、その旨を報告しなければならず、要措置区域では原則として土地の形質の変更が禁じられている。


形質変更時要届出区域内で土地の形質を変更するときは、形質の変更の種類、場所、施工方法、着手予定日等の事項を都道府県知事に届け出なければならない。

3.土壌汚染地の評価方法

 評価方法は①原価方式、②比較方式、③収益還元方式の3つの評価方法が考えられますが、②では売買実例の収集、③では汚染等による影響を加味した純収益及び還元利回りを決定することが困難であることから、課税実務上は①の原価方法が合理的な評価方法として定着しています。

①汚染がないものとした場合の価額
 汚染がないものとして路線価等に基づき評価した価額です。

②浄化・改善費用に相当する金額
 土壌汚染の除去措置又は封じ込め等の措置に係る費用で、見積額の80%相当額とします。

③使用収益制限による減価に相当する金額
 土壌汚染の封じ込め等の除去以外の措置を実施した場合に、その措置の機能を維持するための利用制限に伴い生ずる原価をいいます。

④心理的要因による減価に相当する金額
 心理的要因による減価(スティグマ)は、土壌汚染の存在に起因する心理的な嫌悪感から生ずる減価をいいます。数値化や標準化をすることは困難で、措置の内容や措置の前後、措置後の経過期間等によって減価の程度が異なるなど、一定の減額割合(減価に相当する金額)を定めることができないため、個別に検討せざるを得ないものですが、基本的には考慮しません。

4.その他

①浄化・改善費用の額が確定している場合
 課税時期において評価対象地について、都道府県知事から汚染の除去等の命令が出され、それに要する費用の額が確定している場合や、浄化・改善の措置中の土地ですでに浄化・改善費用の額が確定している場合には、土地の評価額から控除するのではなく、相続財産の価額から控除すべき債務に計上し、他方、評価対象地は浄化・改善措置が終了したものとして評価することが相当です。

②汚染の除去等の措置の費用を汚染原因者に求償できる場合
 土地の土壌の特定有害物質による汚染が、土地の所有者等以外の者による行為であるときは、その汚染原因者に対し、除去等の措置に要した費用を請求することができます。この場合には求償権を相続財産として計上するとともに、土地は浄化・改善措置後の土地と評価することになります。

【執筆者プロフィール】
税理士 永井智子(ながい ともこ)
(社)ファルクラム租税法研究会研究員。
『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント』シリーズ(共著/第一法規)ほか、論文・寄稿多数。

第一法規「税理士のためのメールマガジン」2024年9月号より

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