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所得税法における利子所得について



 日本銀行が、7月の金融政策決定会合において、政策金利を0.1%から0.25%に引き上げました。政策金利とは、景気や物価の安定など金融政策上の目的を達成するために、日本銀行のような中央銀行が設定する短期金利のことで、金融機関の預金金利や貸出金利などに影響を及ぼします。一部金融機関の預金金利が引き上げられたことが報道されており、今後は、預金等の利子の受取額が多くなると予想されます。

 そこで、今回は、所得税法における利子所得について内容を整理します。

1.利子所得の内容

 利子所得とは、預貯金及び公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配(以下、まとめて「利子等」ということがあります。)に係る所得をいいます(所得税法23)。利子所得の金額は、源泉徴収される前の利子等の収入金額そのものです。利子所得に該当する利子は、所得税法23条で限定的に規定されていることから、貸付金に係る利息や、利子の性格をもつと説明されることがある還付加算金等に係る所得は、利子所得には該当しないため留意が必要です。

2.源泉分離課税

 利子所得は、原則として、その支払を受ける際、利子所得の金額に一律20.315パーセントの税率を乗じて算出した所得税等が源泉徴収され、これにより納税が完結する源泉分離課税の対象となり、確定申告をすることはできません。ただし、以下の利子等については、源泉分離課税の対象とはなりません(租税特別措置法3)。

①特定公社債※の利子
※特定公社債とは、国債、地方債、外国国債、公募公社債、上場公社債、平成27年12月31日以前に発行された公社債(同族会社が発行した社債を除きます。)などの一定の公社債や公社債投資信託などをいいます。

②公社債投資信託で、その設定に係る受益権の募集が、金融商品取引法に規定する公募により行われたもの又はその受益権が、租税特別措置法37条の11第2項1号に掲げる株式等に該当するものの収益の分配

③公募公社債等運用投資信託の収益の分配

④特定公社債以外の公社債の利子のうち、平成28年1月1日以後に支払いを受けるべき同族会社が発行した社債の利子で、その同族会社の判定の基礎となる一定の株主およびその親族等が支払を受けるもの

⑤令和3年4月1日以後に支払いを受けるべき同族会社が発行した社債の利子で、その同族会社の判定の基礎となる株主である法人と特殊の関係のある個人及びその親族等が支払を受けるもの

 また、銀行等の金融機関等の受ける利子所得に対して、源泉徴収が適用されない点にも留意が必要です(租税特別措置法8、租税特別措置法施行令2の36,3の3①)。

【執筆者プロフィール】
公認会計士・税理士 越田圭(こしだ けい)
『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント』シリーズ(共著/第一法規)、『税理士が知っておきたい!土地評価に関する建築基準法・都市計画法コンパクトブック』(共著/第一法規)ほか、論文・寄稿多数。

第一法規「税理士のためのメールマガジン」2024年8月号より

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