電子帳簿保存法について
令和6年から、電子帳簿保存法(以下「電帳法」)の適用が始まりました。実務対応はすでに進んでいるところかとは思いますが、改めて内容を整理します。
1.電子取引の対象
電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいい、取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます(電帳法2五)。取引情報の範囲は、案外と広く、例えば、従業員を雇用する際、賃金や労働時間等の労働条件を記載した「労働条件通知書」を、電子データとして電子メールに添付して相手方に送信し、また、クラウドサービスを利用して「雇用契約書」の授受を行った場合においては、「労働条件通知書」や「雇用契約書」も、保存の対象となります。
2.電子データと書類が混在している場合の対応
例えば、消耗品を購入し、領収書を入手する場合、電子データとして受領したり、レジから出力されたレシート等を受領したりする場合があります。このような場合、経理事務の便宜から、電子データとして受領後した領収書を書類として印刷しても差し支えありません。ただし、電子データは削除せず、電子帳簿保存法の保存要件に従って保存しておく必要があります。電子帳簿保存法の保存要件とは、訂正削除の防止に関する事務処理規程の策定・運用・備付け(電帳法規則4①四)等の4要件のいずれかに対応した上で、事後的な確認のため、検索できるような状態で保存し(電帳法規則2⑥五)、ディスプレイ等を備付けることになります(電帳法規則2②一イ、二)。
3.ECサイト発行の領収書やETC利用証明書の対応
ECサイト上でその領収書等データの確認が随時可能な状態である場合には、必ずしもその領収書等データをダウンロードして保存していなくても差し支えありません。なお、この取扱いは、ECサイト提供事業者が、電子取引に係る保存義務者において満たすべき真実性の確保及び検索機能の確保の要件を満たしている場合に受けることができるものであるため、要件の充足が不明確である場合は、ご自身でその都度保存しておく対応が必要になります。
また、ETC利用証明書については、高速道路の利用が多頻度にわたるなどの事情により、全ての高速道路の利用に係る利用証明書の保存が困難なときは、消費税法上、クレジットカード会社から受領するクレジットカ―ド利用明細書と利用した高速道路会社などの任意の一取引に係る利用証明書をダウンロードし、併せて保存することで、仕入税額控除を行って差し支えないという消費税法上の取扱いに準じて、納税者が受領していないETC利用証明書についてまで、あえて発行を受け、ダウンロードして保存する必要はありません。ただし、いったん発行されたETC利用証明書については、電帳法の要件を満たして保存する必要がある点に留意する必要があります。