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#エッセイ 告〇 その1

お肉券を発案したのは、私だ。 
発表したあと、世間の評価を知り、怒りに震えている。

これは告白なのか?告発なのか?どちらなのかはわからないけど
ある部分では告白であるし、部分では告発なので、告〇としよう。

嘘つきや、虚言やら、そう思う人もいるだろう。
私も自分がそういう類だったらいいなと思うし、
そう思った人が正しい世界であってほしい。

まぁ、どちらが正しいかは置いておいて
表に出いいる権力者は、方針を決めるだけで
具体案は世に名前の出ない人間たちで決めるものだ。 

これは説明なくても理解していただけると思う。

何故選ばれたのかなどは、
どう書いても自慢になってしまうので省略する。

今回も、自分含めた数人(年齢も性別も職業もバラバラ)が緊急に招集され
対策会議をした。

始まって、すぐ一番若いのが、電子マネーで給付を提案をした。
推進しているし、いいんじゃない? 額いくらにする?みたな話に
なりかけた時に、私はご年配の方が使えないんじゃない?と発言
すぐさま、これを機に覚えたらなどと反論される
そこは反論できないので、論点をずらす。

何をしても奪おうとする人は出てくる。
ただ、電子マネーを奪おうとする人は、凄く頭良くて凄く悪い人だ。
そんな相手が出てくる場所に今進まなくてもいいんじゃないか?
強敵を相手にする時間や労力を他の事に回すべきじゃないのか?
そんな事を言った気がする。 

それに電子マネーは現金より有難みを感じずらいみたいな話も
こういう時は、一石何鳥出来るかが大事なのだ。 
最低でも10鳥くらいは欲しいものだ。
10鳥を取れる意見を言えないのなら、この会議に参加する資格はない。

電子マネーはとても良い意見だし、最善手な気もする。 
有難みに弱いと致命的な欠点を持っていたし、
一番初めに言うとうミスもあり、
言った人が若くて自信満々だったというのも
相まって、周りのメンバーも反対の意思を示した。

呼ばれた以上、意見いいたしね。 
若くて自信満々な人なんて好きじゃないし。

若い人は意見に自信があるなら
出す時間、出す態度などを考えなければならなかった。
意見より、意見を思いついた自分を大切にしていたのだ。
あの人には、これをキッカケに学んでほしいものだ。

問題はそこからだ
いい意見を手前で否定したのだから、当然煮詰まる。
電子マネー以上の意見を言わないと、どんな否定をされるかわからない。

みんな悩んでいる顔をしているが、考えてはいない。
若い人は、イライラしだしてた。 ため息に貧乏ゆすり。
もう意見を否定されない若い人は無敵の状態だ。
世間話でお茶を濁すのも許されないほど張り詰める空気。

その空気に耐え消えなくなり、老婆が「しょ しょ 商品券」と
意見なのか、独り言なのかわからない言葉を発した。

しかし、無敵の若者は見逃さず「商品券!!!」と怒鳴ったのだ。
その後の無敵の若者と気弱な老婆の口論にもならない口論は悲惨だ。

老婆の「私にも孫がいてね」を遮り、若者の「知らねーよ!!」の瞬間は 
今思い出しても、心が痛い。 

その後、沈黙は続き
老婆は天井を見続けて泣いていて、若者は次の獲物を探して周りを睨む。

この時私は、どういう対策を考えるかよりも、どう帰るかを考えていた。
噛みつく価値もない意見を言って、才能のなさを見せつけて
呆れさせてたあとに、逆切れして その場を去る これがベストだ。
 
ただ、無敵の若者でさえ、
噛みつく気もしない意見というのを考えるのは難しい。

考えに考えて思いついた「お肉券」
言葉の響きの馬鹿馬鹿しさ、この単語を怒りに任せて言い続けられない。
なにより、駄目すぎて反論するところしかないのが良い。
反論はある程度しっかりしている論にじゃないと発動できないのだ。

精一杯考えた顔をして、この意見を信じているのを伝えるための
低く声でゆっくりと丁寧に「お肉券ってどうでしょうか?」と発言した。

しばしの沈黙。
想定内の沈黙。 あとは、無視されるか鼻で笑われたら逆切れするだけだ。

沈黙を悲痛だという顔をして、その時を待っていると
若い男が笑顔になり「というと?」と投げかけてきた。

これは想定外の出来事だ。 「というと?」の意図は
私にお肉券のことを散々しゃべらし、
その内容の薄さで、自己崩壊を起こさせ、廃人にしようという事だろう。

天井を見ていた老婆が、急に姿勢を正し、
こちらを見て「というと?」と言ってきた。
完膚なきまでに叩きのめされ、若者に屈したのか?
さきほど、助け船を出さなかった私への恨みか?

無敵の若者と怨念の老婆を前にして、持っている武器は「お肉券」
電子マネーを狙う悪い人たちと戦うほうが、どれだけ楽だったか
あの時賛成してたら、こんなことにならなかったのになぁ
いつだって災難の始まりは、自分のエゴだ。

ただ、ここから生きて帰らなければならない。
待っている人はいないけど、人間は来たら帰る生き物だ。

私は帰るために戦わないとならないのだ。 
不毛な争いだとわかっていても、戦わないとならないのだ。

わかってはいるが、戦う覚悟を決めるために、少しだけ時間が欲しい。
10秒、10秒だけでいいから時間が欲しい。

若者と老婆が、黙っている私を、じっと見ている。
もう黙っていてもいられない。 
「馬鹿な自分にもわかるように丁寧に説明してくださいよ」などの
下から発言されたら窮地に追い込まれる。

私は10秒間の時間稼ぎのために、堂々と大きな声で
「というとというと?」と発した。

これは逃げじゃない。 10秒後の開戦の合図だ。

つづく

#エッセイ #日記 #お肉券  
 





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