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脚本家は何を考えているのか?

『涙の女王』脚本分析

の続きです。

前回では、ワンラインはこうだろうというのを書きました。
『一人の男が運命的に出会った女を、愛し、命をかけて守り抜く、女は愛されていることを知り、男を愛する話』

脚本家は、これを書いたら、次にやるのは、主人公のキャラクター作りです。

まずは主人公の男を作ります。
視聴者の人たち(多くは女性)の誰もが好感を持つような人物にしなければなりません。脚本家は、まずここにエネルギーを注ぎます。
このとき、主演をする俳優が、もう決まっていたりするので、その俳優をイメージしながら設定作りをしていくことになります。
視聴者が好きになれるような主人公像にできるように、脚本家はイメージをふくらませていくのです。

名前は、ペク・ヒョヌ。(三十代)

田舎育ちで、小さなスーパーを経営している両親の元に生まれた末っ子で、神童と言われるくらいの秀才でスポーツ万能の少年だった。
性格も正義感が強くて、気持ちが優しく、誰にでも好かれる。
身長も高く、顔もいい。軍隊では海兵隊に属していた。
ソウル大学とロースクールを卒業し、弁護士となり、大手財閥の経営する会社に勤めることとなる。
彼は、そこでインターンをしている女性と出会い、恋に落ちる。
その女性が、運命の人である。
頭が良くて優秀だが、人柄はいたって素直で、ぼくとつとしている。恋愛に関しては、初恋の女の子をずっと思い続けている純情そのものだ。

ざっと書きましたが、大枠はこんな感じです。
実際にはもっと詳しく設定していると思います。

トップクラスの大学卒で弁護士でスポーツ万能で、軍隊でも海兵隊の猛者であるという、ありえないようなキャラですが、田舎育ちで、純朴ということにすることで、一気に多くの人が好きになるような人物になってます。
純粋な性格というのは、韓国ドラマでは、主人公によく使われる設定でもあります。

この主人公のキャラクターを設定していくなかで、彼を取り巻くその他の設定しなければならない登場人物が見えてきます。

この時点で、主人公周りで設定しなければならない登場人物をリストアップします。
運命の人である女性
両親。父と母。
兄弟。姉と兄。
最低、これらの人物は詳しくしなければなりません。

次に脚本家は、これらの人物たちの設定に取りかかります。


そのときに羅針盤であるワンラインを振り返ります。(この羅針盤を振り返って見るということは、たびたびやります)
『一人の男が運命的に出会った女を、愛し、命をかけて守り抜く、女は愛されていることを知り、男を愛する話』

するとやらなければならないことが、また見えてくるわけです。
主人公は、愛する女を守り抜かなければならないということは、『守る必要があること』が起きなければなりません。
女は愛することを知ることになるわけなので、物語の最初は、それを知らない状態なのです。
つまり、もう一人の主人公である、この運命の女性は、主人公のヒョヌにとっては乗りこえなければならない問題でもあらなければならないのです。

そのことを頭に入れながら、この主人公ヒョヌにふりかかるトラブル(問題)を考えていきます。

脚本家にとって、もっとも大事で、楽しい作業の一つ、『主人公にふりかかるトラブル作り』です。



ゼロから物語を立ち上げる時は、この作業に時間をかけるのですが、今回はすでに配信されたドラマを分析しているので、どういうトラブルが起きたのかを、洗い出すのは簡単です。
さて、どんなトラブルが起きたでしょうか。

妻の性格が悪い。高慢ちき。非常識。
妻は自分の会社の社長。
結婚生活が冷めている。離婚考えている。
妻が、仕事で無理難題を押しつけてくる。
妻の家族の性格が悪い。
家族からも指図される。
小作りを強要される。名前まで決められてる。
家庭内別居してる。
妻は頑になってる。
行動を監視されてる。
トラブルメーカーの親族がいる。
妻の祖父が、会長。
会長の愛人と家族がもめている。
祭祀の準備をおしつけられる。年に15回。
家族にしいたげられている。
義父は傲慢で冷酷。
ストレスで体調不良。精神科に通う。
妻は結婚契約書をかってに書いていた。離婚しても財産は残らない。
実家には、自分にうるさい家族、兄、姉、両親がいる。
離婚決意するが、言い出せない。
妻が余命宣告される。三カ月。

なんと、これが一話で起きるトラブルです。
オーマイガッ!
まさにトラブルの連続。
これでもかとばかりに主人公を追いつめていってます。

よくぞここまでトラブルを考えついたものだと感心します。
しかしこれは一話に使ったものだけなのです。

ここから最終話の16話まで、脚本家はトラブルの種を用意しなければなりません。
いったい、全部でどれだけのトラブルを考えたのでしょうか?

一話を例に取りましたけど、これでわかるのは、脚本家の仕事は主人公にふりかかるトラブルを考えることと言っても過言じゃないということです。
これがドラマの王道ともいうべき作り方なのです。

『主人公には、思いつく限りのトラブルをおしつける』
これがワンラインに続く、脚本への道でした。

このトラブルを書き出すことと同時に、主人公周りで必要な登場人物たちがまた出てきます。
それらを詳しくしていくことが、脚本づくりの二段階目なのです。

脚本家志望の人は、ヒット作を見て研究するのも大事ですよ。


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