団地の「風景」
先日NHKのドキュメント72時間にて、千葉市の花見川団地が特集されていました。昭和43年につくられた団地だそうです。
団地にはUR(旧日本住宅公団:1955年発足)の運営する賃貸や、分譲団地、または企業の所有する団地など、いろんな形態がありますが、あまりに解説が長くなってしまいますので、ここでは省略します。住戸内のリノベーションなどは、主に分譲団地になります。個人が区分所有しているので、専有部分は個々で維持することになるからです。
さて、形態はいろいろありますが、多くの団地は昭和30年代40年代につくられました。リノベーションの依頼が来る団地も、昭和40年代のものが多いです。
この一般的には老朽化したとされる団地ですが、見方によってはいい時代が来ていると感じています。団地特有の贅沢な敷地の植栽は、数十年を経て大きく成長し、緑に囲まれた住空間になっている団地もあります。窓からの眺め、光の入り方、風の流れ、都市において周辺の環境と共に暮らすことのできる贅沢な空間と言えます。現在つくられているマンションも戸建住宅も、建築そのものの性能は上がっているかもしれませんが、基礎環境については圧倒的に団地に軍配が上がります。
今年、『すべての夜を思いだす』という映画が公開されました。多摩ニュータウンを舞台に描かれた映画ですが、画の中の緑の多さに圧倒されます。
団地開発当時の小説や映画を見ていくと、憧れの対象であると同時に、批判の対象になっている作品も多数あります。破壊の象徴であり、画一的な住空間。しかし、今になって多摩ニュータウンを歩いてみると、現在の様々な住宅街よりも明らかに豊かで贅沢であるという面も感じられます。今も計画され続ける住宅地は、50年後100年後にはよい風景になっていると思われるでしょうか。長い年月を経た団地には多くのヒントが残されています。
写真:中村絵
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