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自分なりの反ジェントリフィケーションにつながる動き

釜ヶ崎におけるジェントリフィケーションに関して、自分なりの考えを下記の投稿でご説明いたしました。↓

釜ヶ崎におけるジェントリフィケーションに関して、僕自身としては、下記の考えです。

僕自身は、一定程度、加担している可能性を自覚しています。が、釜ヶ崎がジェントリフィケーションによって、もともとの住民が住みづらくなることには反対の考えを持っています。

その上で、今自分がどのような動きをしているかを説明したいと思います。

釜ヶ崎の社会資源、包摂力

釜ヶ崎(大阪市西成区あいりん地区)は、さまざまな社会資源を有す地域です。僕が知っている限りで、こんな地域は他にないのではないでは?と思っています。
▼少し古い地図になるのですが、釜ヶ崎の支援団体等がプロットされた地図

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しかし、大きな資本が入ることで、今ある「力」が失われる可能性もあります。実際に外国系資本だとかがたくさん入ってきています。

民間の土地を民間が買うことに対して、とやかく言える立場ではないのですが、せっかく今まで培ってきた社会資源や包摂性がなくなるのはもったいないし、釜ヶ崎が有す力は今後も必要だと思っています。

基本的には、困窮状態に陥った際などは、各地域で受け止めることが望ましいと思っています。
しかし、今まで釜ヶ崎で活動を続けている中で、さまざまな事情でその地域に居られなくなった人や、その地域が持つ社会資源では対応しづらい場合もあると感じており、
結果的に釜ヶ崎のような地域が存在することは必要だと思っています。

そういった観点で、釜ヶ崎におけるジェントリフィケーションに関しては、危機感を持っています。

釜ヶ崎が小さい梅田とか小さい難波みたいになる必要はないなと思っています。

では、この釜ヶ崎は今の状態が最適な状態で、この状態を維持保存すべきか?となると、個人的にはそうは思っていません。

釜ヶ崎の魅力、第二の故郷

自分にとって、
釜ヶ崎の魅力=多様な人が共に暮らせる場所→生きづらさや生活をしていく上で課題がある人にとって、他の地域と比較して生活しやすい場所と、思っています。(他にもたくさんありますが)
現在釜ヶ崎で生活している人の中にも、困窮状態の人や過去にホームレス状態だった人、他の地域で生活がしづらくなった人がたくさんいます。

今まで、この街で生活をしているたくさんの人と関わりました。
この街について語り合う機会もたくさんありました。
この街のことが嫌いな人も一定数います。
「お金さえあれば、出ていきたい」と言う声を聞くことも少なくありませんが、「やっぱりこの街が好きだ」「最後に帰ってくるのはここ」などの肯定的な意見の方が多い印象です。
釜ヶ崎には全国から人がやってきます(特に西日本が多い)。
失業し、困窮し、日雇労働を求めてやってくる人たちがたくさんいました。
その中には、訳あって故郷に帰れない人も少なくありません。
そんな人たちにとっての第二の故郷になっている側面もあります。
なので、この街で今生活をしている人が住みづらくなるようにはなって欲しくないな、と思っています。

ネットカフェ難民、敬遠される釜ヶ崎

前述の通り、「寄せ場(寄り場)」であるこの街は、過去より日雇労働を求めて多くの人がやってきました。不安定な雇用形態である日雇労働。
不景気の際には真っ先に雇用がなくなってしまいます。
失業し、ホームレス状態となる人がたくさんいます。
そのような地域の課題に対して、さまざまな支援団体が活動を行なってきました。その結果、この街に社会資源がたくさん生まれました。

しかし、時代の流れとともに変化が生じています。

インターネット、スマホの普及でわざわざ釜ヶ崎に来なくても日払いの仕事を見つけられるようになりました。
「インターネットカフェ難民」と呼ばれる、インターネットカフェなどで生活をしている不安定就労で困窮している状態の人が生まれました。
寄せ場(寄り場)で日雇労働をしている人とは違い、孤立状態となっている場合が多いです。
孤立状態になることで、今の自分の状態に気付きづらくなったり、自分に必要な情報にたどり着きづらい問題があります。
負担を強いられる期間が長引くことで、心身ともに大きなダメージを負い、元の生活に戻るまでに多大な時間を要してしまうことがあります。

そのような状態に陥っている人が、釜ヶ崎の社会資源を使うことで置かれている窮地から脱出できたり、望む生活に近づけられる可能性はあります。

しかし、ここ最近の傾向として、インターネットカフェ難民状態の若年層世代はあまりこの街にやってきません。
と、言うよりは避けている傾向にあります。

大阪市北区で活動するホームレス支援団体で僕が以前働いていた時に、若年層の相談者は多数いました。中には釜ヶ崎の簡易宿所(通称「ドヤ」)で宿泊している方からの相談もありました。
そういった若年層世代の相談者になぜ西成ではなく北区に来たのか?という質問をした結果、
「西成が怖いから」という声を多数聞きました。

西成に対して有しているイメージから、釜ヶ崎に来ることを忌避している人が決して少なくないことを知りました。

また、若年層世代は情報の収集をインターネットで行なっており、
釜ヶ崎の支援団体や福祉関係の情報はネット上ではまだまだ整理、整備されていないことも理由として挙げられます。

ですので、釜ヶ崎は現在の若年層世代に対して、
・利用しづらい
・情報が届いていない
状態となっています。
(もちろん、全員が全員当てはまるわけではありませんが)

この現状に対して、
僕としては、せっかく社会資源があるのに、非常にもったいないと感じているとともに、「怖い」というイメージに対しては事実とは異なる部分も大きいと感じており、自分なりに取り組めることを取り組んでいます。

反ジェントリフィケーションにつながっている活動

困窮していたり、ホームレス状態の人に釜ヶ崎を知ってもらい、必要であればいつでも来てもらえるようになることと、この街にいざやってきて、自身が望む生活に少しでも近づけるような、地域の社会資源を有すことが大切だと思い、下記の取り組みをしています。

①アウトリーチ活動

(1)インターネットやSNSを使った情報発信
(2)マスメディアへの積極的露出
(3)相談会開催やそれに伴う夜まわり活動

最近の傾向として、困窮状態に陥った当事者の人はインターネットでの情報収集が多い傾向にあります。しかし、釜ヶ崎は全体的にネットでの情報発信がまだまだ未整備であると課題感を持っていました。
そこで、インターネットでの情報発信を整備するため、2020年度より困窮状態に陥った役立つ情報を団体の垣根を越えて発信するWEBサイト「ヨリドコオンライン」を立ち上げました。開設したばかりでまだまだ情報量が少ないのですが、今後どんどん発信していく予定です!
また、若年層世代に馴染みのあるコミュニケーションツールであるLINEでの相談受付も開始いたしました。
さらに、Youtubeチャンネル「ヨリドコチャンネル」を開設し、動画を使った情報発信も今後積極的に行っていく予定です。

②受け入れ体制の強化
さまざまな状況にある方を受け止められる体制づくりを行う必要が会える
具体的には新型コロナ住まいとくらし緊急サポートプロジェクトOSAKAに見られるような地域内の団体での横の連携づくりの強化を積極的に行っています。連携体制を構築すること、新たな繋ぎ先を見つけることで、さまざまなニーズに対応できるようになります。

また、釜ヶ崎にはさまざまな支援団体が密集しています。各団体にはさまざまな職員が働いている中で、若手職員たちは現場が中心になる傾向にあり、自分の団体外とのつながりを作る機会があまりありません。そこで地域の若手人材の交流と学びの機会づくりとして「西成若手会」を結成し、これからの「釜ヶ崎の支援」を担う人たちのネットワークを構築しました。

③受け入れた人のサポート体制の整備
例えば、ホームレス状態の人が来所し、居宅探しと生活保護申請の支援を行うことで住まいと生活に必要なお金が手に入る状態となります。
そこまで整えば、その後自力で仕事を見つけたり生活を整える人もいます。
しかし、例えば健康状態が悪かったり、多額の借金を抱えていたり、自分にあった仕事を見つける術を知らなかったり、一人暮らしの生活を維持できない人もいます。そのような状況の人を継続的に支援する活動が大切であり、行っています。

(1)サービスハブ事業
▼詳しくはこちらを▼

2019年より新たに始まった事業で、この事業の管理職をしています。
「こんな活動がずっと必要だと思っていた」と思っている事業です。
今までホームレス状態の人への支援を通じて居宅での生活が始まった人が何人もいました。しかし、その後生活がうまく維持できず、音信不通状態になったり居宅内で孤独死をしていたり、失踪してしまったり。という出来事を何度も何度も経験しました。
このサービスハブ事業は行政の委託事業ですが、生活保護を受給している人の生活支援や就労支援をじっくりと向き合ってすることができる事業です。
まだできて間もない事業で安定していない部分もありますが、今後も大切にしていきたい活動です。

(2)居住支援事業
2020年より新たに始まった事業で、この事業の担当をしています。
「こんな活動がずっと必要だと思っていた」と思っている事業です。

(詳細情報がまだどこにもまとめられていないので、クラウドファンディングをしたときのページが多分一番詳しいです)
NPO法人釜ヶ崎支援機構で借り上げたワンルームマンションに入居してもらうことで、初期費用や保証人なく生活ができます。
家具家電も最低限ですが全て揃っています。
また、就労自立を希望する人には最長4ヶ月間、最低家賃0円で入居できます。その間の食事や就職活動に必要な交通費等の支給も行っています。
さらに、就労支援や生活支援、受診同行などの伴走支援を実施しています。


④まちづくりへ会議への参画
現在西成区は、「西成特区構想」という構想があります。

全国的に見てもあいりん地域をはじめ生活保護率が非常に高く、また他の区と比べ特に高齢化が進み、子育て層である若い世代が少ないなどの西成区に存在する多様な課題を解決するために、教育・子育て支援・環境改善・治安・住宅など、各種の支援や優遇措置など、24区一律の施策ではなく、西成区に特に有効な施策を検討し実施・推進していきます。(西成区HPより)

行政によるまちづくりについて話し合いの場が設けられています。

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現在僕は上記図の、
・あいりん地域まちづくり会議(本会議)
・労働施設検討会議
・エリアマネジメント協議会(就労・福祉・健康専門部会)
・エリアマネジメント協議会(こども・子育て専門部会)
に委員として会議に参加しています。

この西成特区構想が「ジェントリフィケーションの推進」に加担しているという指摘をよくされるのですが、行政に現場の声を届ける貴重な機会であると思っており、積極的に参加しています。
会議に参加し直接声を伝えることも、一つの責任だと思っています。
いろんなことを発言していますが、
「若年層の就労困難者、生活困窮者が利用しやすい施設、サービスを作って欲しい」というような発言を一貫してしています。

また、上記①〜③を実施するための
・人材確保
・資金、物資集め
も並行して行っています。

以上より、僕個人としては、
「釜ヶ崎がジェントリフィケーションによって、もともとの住民が住みづらくなること」に反対した上で、

この街の社会資源は貴重な存在であると認識しており、

・しかし、このままではそれが維持できない
・最近の傾向や状況とのズレがある
・まだまだ、できることはある
と、思っており、

そのための活動、
・この街の社会資源を必要とする困窮(ホームレス)状態の人へのアウトリーチ
・受け入れ体制の強化
・受け入れ後の支援体制の強化
・西成特区構想まちづくり会議に参加
をすることで、結果的にジェントリフィケーションへの抑止力になると思っています。

▼普段やっていることはこちらもご確認お願いします▼




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小林大悟@釜ヶ崎
釜ヶ崎で稼ぎ、釜ヶ崎でほぼお金を使い切るライフスタイル。余ったお金は基本的に釜ヶ崎の支援団体に寄付してます。なので、応援していただくと、結果的に地域内の飲食店か支援団体にだいたい届くことになります( ^ω^ )