まっちゃんのお話 第20〜21話
▼まっちゃんのお話 ひとつ前のお話▼
●まっちゃんのお話 第20話
まっちゃんが入院して間も無い頃、
嚥下の可能性があるとのことで、
胃ろうの手術をすべきだと病院が判断しました。
(この判断がどうなのかはわかりませんが)
手術には親族の同意が必要でした。
担当CW(ケースワーカー)が唯一の親族であるご兄弟に連絡をしました。
最初は連絡が来ることも拒んでいたそうです。
もう、まっちゃんとは一切関わりあいたくなかったようです。
しかし、CWからの説得により、
手術に応じてくれそうな流れになりました。
このCWさんは本当に良いCWさん。
結果的に手術をすることはありませんでした。
そして、ご兄弟は結局これ以降連絡に応答してくれず、音信不通状態となりました。
●まっちゃんのお話 第21話
まっちゃんの見舞いに僕や他のスタッフで通い続けました。
ずっと寝たきりでした。
意識があったのは最初だけでそれ以降はずっと眠ったままのまっちゃん。
日々、命の終わりに向かっているように見えました。
「いつどうなってもおかしくない状況」。
数日間尿が出ていない状態で、強心剤を使っても心拍数が上がらない状態になりました。
そんな中僕は出張で2日間大阪を離れなければなりませんでした。
まっちゃんの知り合いたちに状況を伝えました。
その結果、山王こどもセンターの職員が見舞いに行ってくれました。
職員が「だいごくんが明日くるで!!」と眠っているまっちゃんに伝えてくれたそうです。
僕は出張を終え、夜行バスに乗り込みました。
気が気ではない。
ただでさえ苦手な夜行バスがいつも以上に苦痛に感じました。
大阪に戻ってきて、来客の応対をしてすぐに病院に行きました。
まっちゃんは生きていました。
無機質な心拍数を測る機械が生きていることの証明に感じて、
この時ばかりは温もりある音に感じました。
他の患者の機械でアラームがなったりすると、ビクッとします。
しばらくまっちゃんの横に座りました。
ずっと眠ったままなので、何も変わらないのですが、
もう限界なんだろうなと感じたことを覚えています。
そろそろ病院を出ることにしました。
帰る際に、「まっちゃん、お疲れさま。待っててくれてありがとう。頑張ってもええし、疲れたらもう休んでもいいよ」と心の中で伝えました。
病院を出ました。
その日、夕方、まっちゃんの見舞いに行った職員から連絡が入りました。
「まっちゃんが亡くなった」と。
僕が見舞いに行って1時間も経たない後に亡くなったそうです。
基本的に人の死に何の色も付けないようにしているのですが、
「あぁ、待っててくれたんやな」と勝手に思いました。
2019年11月30日に命を終えました。
(続く)
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