まっちゃんのお話 第14〜16話
▼まっちゃんのお話 ひとつ前のお話▼
●まっちゃんのお話 第14話
介護保険を適用できることになりましたが、手続きに時間がかかります。
その間の生活支援は引き続き僕たちが行います。
もう、まっちゃんはほとんど歩けない状況でした。
だから、食材などの買い出しをこちらで代理で行うことにしました。
「何が食べたい?」と言っても、
・酒
・タバコ
のリクエストが第一に来ます。
お酒はあんまり飲んで欲しくないなー・・・
とは、思いつつもまっちゃんのお金です。
なんか、「ちょっと違う・・・」と思いながらも、リクエストされた物を購入しお届けしていました。
食べ物は何が良い?と聞いても基本的に「何でも良い」だったのですが、
唯一リクエストしてくれた「イモ」がいまだになんだったかわかりません。
ファミマに売ってるとまっちゃんは言ってましたが、そんなものは見当たりませんでした。
なんだったんだろうな。
食料品以外にも、家賃支払い光熱支払いなどの支援も行いました。
●まっちゃんのお話 第15話
介護保険(第 2号被保険者)が決まるまで待っている状態のある日のお話。
僕が朝、西成区役所に用事があって自転車で向かっている最中でした。
近所のチンチン電車の駅のすぐ横で、
警察3人に囲まれて地べたに座り込んでいる野宿者のような人がいました。
普段からそう言った場面に出会した際は、
警察が丁寧に対応しているかどうかを確認するようにしています。
(丁寧じゃないと感じたら間に入る)
囲まれている人をよく見たら、まっちゃんでした。
意味がわかりませんでした。
ろくに歩けない状態のまっちゃんが自宅から200mくらい離れているこの場所になぜいる。
そして、なぜ警察に囲まれている。
とにかくすぐにその場に入りました。
警察に話を聞くと、
「昨夜からすぐ近くのファミリーマートでずっと寝ていた」とのことで通報があったとのこと。
まっちゃんに話しかけようとしゃがみこんで顔を近付けると明らかに様子がおかしかった。
視線が全く定まらず、意識も朦朧としており、
話しかけても反応がない状態で、
肩を叩いても「あー」や「うー」などの声しか発しませんでした。
これは異常だと判断し、救急搬送をすることに決めました。
しかし、僕はこの後外せない役所での打ち合わせがありました。
今日出勤しているメンバーでこの状況を任せられる経験がある人もいませんでした。
即座に上司(事務局長)に電話をして対応をお願いしました。
しかし、運の悪いことに事務局長はたまたまその日お仕事が休みでした。
自分の事務所にいるスタッフにすぐに駆けつけてもらうことに。
救急搬送するように指示を出し、
また、事務局長も事務局からスタッフを一人現場に駆けつけるように指示を出してくれ、
僕の代わりに二人の職員が対応してくれることになりました。
代わりの職員が現場に到着するまでの間に、
少しずつまっちゃんの意識が回復してきていましたが、とても心配な状態でした。
●まっちゃんのお話 第16話
僕の代わりに駆けつけたスタッフが救急車を呼んでくれるも、
その頃にはまっちゃんの意識もかなり回復したようで、
やってきた救急隊員に本人が「大丈夫、病院へは行かない」と意思表示をした結果、
救急搬送はされませんでした。
スタッフが自宅まで車椅子で送り届けました。
それにしてもなぜあそこにいたんだろうか。
用事が終わり、夕方、まっちゃんの家を訪ねました。
朝の様子とは変わって、会話ができました。
しかし、会話を重ねていく中で、明らかにおかしい状況になっていきました。
目の前に食べ物があるにもかかわらず、「腹が減った」と言います。
そこにパンがあることを伝えても、きょとんとした反応しかしません。
そして、意味不明な発言が始まりました。
壁を見ながら、「おっさんどこ行ったんや?」と話したり、
今日は何人おるんや?どこの現場や?などと僕に話しかけてきます。
そして、
また、お腹が減ったと言うので仕方ないのでパンをちぎって口元に持っていきました。
そしたら、「口が開かへん」と言いました。
やはりおかしい。
救急搬送すべき状態だと判断できる。
しかし、本人は救急搬送、通院を拒みます。
明らかに異常な状態のまっちゃんに、心の中に不安な気持ちが広がり苦しかった記憶があります。
もう、どうしたら良いかわからない。
誰か助けて欲しいと思いました。
(続く)
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