まっちゃんのお話 最終話
まっちゃんが亡くなりました。
担当CW(ケースワーカー)が、唯一の親族であるご兄弟に連絡を取りましたが、
結局最後まで連絡が取れませんでした。
まっちゃんは無縁仏となりました。
釜ヶ崎には同じく引き取り手のいない「無縁仏」となる人がたくさんいます。
なので、仲間たちで弔います。(「慰霊祭」や「見送りの会」など)
上司からのアドバイスでCWに「葬儀をしてください」と伝えました。
その結果、通夜と葬式でお坊さんがお経をあげにきてくれることになりました。
また、部屋も1室用意してくれました。
通夜には、僕を含むサービスハブの職員数人と、
警察に囲まれていた時に対応してくれた事務局のスタッフと事務局長が来ました。
事務局長はまっちゃんに会ったことないのに、来てくれたことがとても印象的でした。
「釜ヶ崎って良いな」って思った記憶があります。
まっちゃんが好きだったワンカップの焼酎などを買ってきて、
みんなで飲みながらいろんなことを話した記憶があります。
関わってる人が亡くなることなんて、
今まで何度もあったし、特に悲しくありません。
涙が流れることもありません。
だって、その死が本人にとって悲しいことなのかどうかは僕にはわかりませんから。
自分は死んだことがないから、その事実が悲しいと決めつけることをしたくありません。
ただ、もう、一緒に新しい思い出を作ることができないのが寂しいです。
通夜では、ちょうどその日夜まわりだった山王こどもセンターの職員が、
夜まわりが終わってその足で参列してくれました。
夜まわりで余ったおにぎりを棺の横に置いてくれました。
その瞬間、涙が溢れ出しました。
堰が切れたように涙が止まらなくなりました。
いろんな感情がぐるぐるとまわります。
悔しさ、悲しさ、怒り、無力さ。
翌日、別れの日となりました。
最後にお坊さんにお経をあげてもらいました。
お供えしてあった物を棺に入れます。
瓶から袋に移し替えたお酒、タバコ、
そして、最後に、
昨日山王こどもセンターからもらったおにぎりを枕元にそっと置きました。
昨日流しきったと思った涙がまた溢れてしまいました。
「一緒やん」
まっちゃんと出会った時を思い出しました。
まっちゃんがまだ野宿をしていた頃、
夜まわりで、寝ているまっちゃんの枕元にそっとおにぎりを置いた夜。
この結末。
今までいろんな悔しい思いをしてきた。
もうそんな思いをしたくないと思って日々やってて。
去年8月に新たに生まれた「サービスハブ事業」に大きな期待を持っていた。
できなかったことができる。
実際に今までなかなか踏み込めなかった領域に入り込めるようになった。
けど、最初の利用者だった、まっちゃんがこうなった。
悔しい。
何に対してなのか、誰に対してなのか、わからないけど、怒りのような物がこみ上げる。
本当はこの「まっちゃんのお話」を去年書こうと思いました。
独りよがり甚だしいのですが、生きた証を残したくて。
でも、どう頑張っても書けなくて。
1年経って、やっと書こうと思い、書いた次第です。
未来のことはわからないから、
いつか忘れるのかもしれないけど、まだ僕は忘れてません。
(終わり)