まっちゃんのお話 第1〜3話
▼まっちゃんのお話について▼
●まっちゃんのお話 第1話
まっちゃん(仮名)のお話し。
僕が今やってる事業は2019の8月から始まった事業。
まっちゃんはその第一号利用者さん。
年齢は当時60歳前後。
出会いはもう少し前。
僕の前職である山王こどもセンターで働いていた時。2017年。
ホームレス状態の人への「夜まわり」で出会いました。
まっちゃんは山王の周辺で野宿をしていました。
気さくな人でこどもたちからも人気のまっちゃんなのですが、
その日はもう寝てて、声をかけても応答がなかったため、
そっと枕元におにぎりを置いてその場を去りました。
そこから、夜まわりでたびたびお会いしました。
起きてる時もあれば、寝ている時もある。
起きている時はこどもたちが話しかけたら笑顔で会話に応じてくれます。
こどもらもまっちゃんが好きで、
僕が違うコースに回ったときにも「今日はまっちゃんおった!」と報告してくれます。
まっちゃんはいつも酔っ払っているのか、
何を言ってるかわからないことが多かったです。
そして、頭に大きなコブがあり、心配でした。
夜まわりで会うたびに通院することを勧めるも、本人は一切通院しませんでした。
けど、いつもニコニコ。
しかし、ある日からまっちゃんを見かなくなりました。
よくあることです。
そういう場合は、
亡くなったか、入院したか、別の場所にいったか、生活保護で居宅に上がったか。
まっちゃんはいつもずっと同じ場所で寝ていたから、
他の場所に行った可能性は低い。
亡くなったら他の団体から情報が回ってくるけど何も情報はない。
どこにいったかなー?と思っていたら、
生活保護を受けて、居宅に上がったと情報が入りました。
一安心です。
が、居宅に上がると会える機会がなくなるので、少し寂しい気持ちもありました。
それは勝手な感情ですが。
●まっちゃんのお話 第2話
まっちゃんはいつも緑色のキャップ帽をかぶっていました。
めっちゃ汚れてたけどいつもかぶっていました。
僕は、昨年山王こどもセンターを退職し、
2019年8月に事業立ち上げからこの仕事に就いています。
「西成版サービスハブ構築・運営事業」という大阪市西成区の委託事業。
やってることが多岐に渡り過ぎて、人に伝えづらいのですが、
「委託事業」の仕様的には、
・西成区で生活保護を受けている若年層(15〜64歳)
・就労支援や生活支援、社会的つながりづくり、居場所づくり
をする場所です。
役所から、「この人お願いします」と紹介されます。
その第一号がまっちゃんでした。
元々「まっちゃん」以外の個人情報を持ち合わせていなかったけど、
苗字とCW(ケースワーカー)からの報告で、
「え、これまっちゃんやん!?」とすぐわかりました。
まっちゃんがうちの事業所に繋がれた理由は大きく二つ。
・通院をして欲しい(頭のコブ)
・居場所の利用や社会的つながりをつくり、ひきこもり状態を防いで欲しい
本来なら「就労しないといけない」となるのですが、
まっちゃんの状態的にまだ全然現実的ではないとCWが判断した結果です。
「ホームレス状態→生活保護で居宅に上がる」ことは、
良いことに感じるかもしれませんが、現実はそうとも言い切れません。
居宅に上がった結果今までの生活環境が変わり、
ホームレス状態だった時の人間関係を失ったりして、
ひきこもり状態になったり精神状態が悪化することがよくあります。
まっちゃんもそうだったみたい。
けど、こうやって再会できたのも何かの縁だし、
ましてや一人目の利用者が知り合いだったことにも縁を感じるし、
しっかりやっていこうと思いました。
しかし、ここからまっちゃんがうちの事業所への来所及び利用するまでが大変でした。
●まっちゃんのお話 第3話
まっちゃんはすごく立派な髭が生えていました。
いっつも便所スリッパを履いて、ヨタヨタと歩いてました。
まっちゃんがうちの事業(サービスハブ)の利用者に登録されたけども、
来所してもらうまでがとにかく大変だった。
いつも酔っ払ってるから、どこまで理解してくれてるかわからないし、
野宿してる頃から何を聞いても、言っても「大丈夫」としか答えない。
来所の約束をしても、来ない。
居宅に上がってから、ずっとひきこもり状態だったのですが、
この夏から家に帰らなくなったのです。
元々野宿していた場所に四六時中いるようになりました。
家に帰らなくなった理由は大きく3つ。
①家の中に南京虫(トコジラミ)が発生している
②部屋が暑い(電気代がもったいなくてクーラーをつけたくない)
③元居た場所には友達がいる
南京虫が発生してしまうと、家に帰りたくなくなる人がたくさんいます。
僕は噛まれたことがないのですが、蚊とは比べ物にならないくらい痒いらしい。
また、自分が気をつけていても、隣人や上下階の人が発生させてしまうと入ってくるらしい。
電気代がもったいない、に関してはおそらくまっちゃんの支出額的に支払うことは十分できたのですが、
「もったいない」と言う気持ちが強過ぎて、クーラーをつけると言う選択肢が全くありませんでした。
そんなこんなでまっちゃんは、ほとんど野宿状態に近い状況になってしまいました。
とりあえず、僕ともう一人の職員で足繁くまっちゃんの居場所に通いつめて、
「通院をしよう」と言うことと「部屋に戻ったら?」と言うことを伝え続けましたが、
なかなか進展はありませんでした。
(続く)
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