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釜ヶ崎とジェントリフィケーションと自分なりの考えについて

大前提として、僕は現場の人間で、学術的な「ジェントリフィケーション」とかは全然わかってないので、その点ご理解お願いします。

釜ヶ崎の中でもここ最近は「ジェントリフィケーション」という言葉をよく聞くので、知り合いの大学の先生から、勧められた、

上記2冊を勉強のために読みました。

また、自分が実行委員長を務めた、第36回全国地域・寄せ場交流会でも、「ジェントリフィケーション」についての分科会を開催させていただいたこともあります。

知らない人のために端的に説明したいところなのですが、かなり難しい問題で、僕自身も理解しきれているか不確かな部分もあるので、ぜひ興味があるみなさんは上記書籍を読んでみてください。
ちなみに、「ジェントリフィケーション」をネット検索した結果、一番上位に出てきたサイトはこちらになります↓

もちろんのことですが、釜ヶ崎の内部でもさまざまな意見があり、西成特区構想のまちづくりに関わったりしているせいか、一部からは僕も「ジェントリフィケーションに加担している人」として認識されているみたいです。

僕自身は、一定程度、加担している可能性を自覚しています。が、釜ヶ崎がジェントリフィケーションによって、もともとの住民が住みづらくなることには反対の考えを持っています。

釜ヶ崎で起こりうるジェントリフィケーションってなんなのかな?と思って考えました。

①家賃が高騰し今住んでいる人が住めなくなる

こうなると、僕の生活にとっても手痛いです。
実際に以前と比べると釜ヶ崎の周辺の地価は上昇しているらしいです。(コロナの影響は受けているとは思いますが)

では、この地価の上昇がどれだけ、この地で今住んでいる人の金銭面に影響を与えているのかについて説明させていただきます。

現在釜ヶ崎の中には一般の住居はかなり少ないと認識しています。
いわゆる「福祉アパート」が圧倒的に多い住居なのではないでしょうか。
元々は簡易宿所(ドヤ)だったものを、住居に変えたもので、2,3畳の広さで風呂トイレキッチンが共同のアパートです。
家賃は3〜4.5万円のところが多い印象です。
この数年で福祉アパートが値上がりしたという話は聞いたことがありません。
ただ、元々簡易宿所だった建物を民間の会社が買い取って、外国人観光客、日本国内の観光旅行、出張でやってくる人などをターゲットにしたオシャレで比較的安価なホテルやゲストハウスに鞍替えしているのはここ最近よく見かけます。(コロナの影響をとても受けていますが)
とは言っても、それによって、「福祉アパートが不足」というような話も聞いたことはありません。

今後、家賃が高騰してくる可能性もあるかもしれませんが、
釜ヶ崎のある大阪市西成区は、大阪市24区の中で最も高齢者の割合が高く、

65歳以上の割合は、39.4%となっています。(こどもの割合は24区で一番少ない)

また、人口減少率が24区で3番目に高くなっています。
(大阪市の推計人口年報・令和元年より)

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このことより、素人目にはなりますが、これからもどんどん人口が減少していくことが予想され、どんどん住居が余ってくる可能性が高いと考えられます。

ですので、「家賃が高騰し今住んでいる人が住めなくなる」事態には至っていませんし、近い将来もそのような状況にはなりにくいのではないかと思っています。

②野宿者の追い出し

ジェントリフィケーションによって、地価が上がるだけでなく、街が綺麗になることで、今まで許容されていた存在(=公園や路上で生活しているホームレス状態の人など)が排除される危険性があります。

例えば、余儀なく野宿生活をしているホームレス状態の人の居所を、行政代執行で撤去などをすることがあります。西成区内では直近には2016年に行われました。

それ以降、西成区では僕が知っている限りでは行政代執行は行われていません。

過去には、理不尽な排除がたくさん行われてきました。
行政代執行だけではなく、野宿できないように自動で水を撒く装置が設置されたりしたこともあります。
また、見えないところで、気付きにくい形で行われている排除もあります。

大阪市内の至るところで、高速道路や高架の下など、雨露を防げる場所にはかなりの確率で何かしらの「工夫」がされています。

(1)野宿者の減少について

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(図:ビッグイシュー基金HPより

ホームレス状態の人の数は年々減少している傾向にあります。
厚生労働省が発表した最新の調査結果では、3,824人となっています。
(しかし、この数値には、いわゆる「ネットカフェ難民」などの統計に現れない「見えないホームレス」の数は含まれていません。また、調査から溢れる人もいます。そういった数を含めると、実際はもっと数字は増えます。)

釜ヶ崎に関しても、2000年頃をピークに減少傾向にあります。
2000年頃には1平方キロメートルに満たないエリアに千数百人のホームレス状態の方がいました。
現在は、シェルターやケアセンターを含めると、350〜400人くらいのホームレス状態の方がいます。
シェルターやケアセンターを除くと60〜100人の方が釜ヶ崎で路上生活をしています。

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↑あいりんシェルター

(2)生活保護申請
都道府県に、市町村によって状況は違いますが、大阪市においては以前に比べて格段にホームレス状態からの生活保護申請のハードルが下がりました。
この1年でも西成区内でホームレス状態の方の生活保護申請に数十人に関わりましたが、基本的に保護が通らなかったことはありませんでした。

我々支援団体としては、基本的には路上で生活している人に対して居宅に上がり生活保護を申請することをご案内します。希望された方には部屋を一緒に探し、生活保護の申請同行などをしています。
しかし、生活保護の受給を拒否する方も一定数いらっしゃいます。

それぞれにそれぞれの理由がありますが、
・過去に生活保護を受給し嫌な思いをした
・生活保護を受給せずに就労による収入で生活をしたい
・扶養照会をされたくない
などが原因となっていることが多いと感じています。
この辺りはまた別の機会に詳しく書けたら書きたいと思っています。

また、路上生活を余儀なくされている人の中には、意思疎通がなかなか取れない人も一部おり、生活保護の申請を案内してもうまくつながりません。

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[引用元:全日本民医連]

2014年に名古屋で行われた、路上生活者の精神保健調査(上記図、リンク参照)の結果で、対象者の34%に知的障がいが、42%に統合失調症やアルコール依存症など精神疾患があることがわかりました。

(3)「野宿」の選択
釜ヶ崎においては、複数の団体によって日々夜まわり活動などを通じて、路上生活をしている人に生活保護を申請し居宅に上がることをお伝えしていますが路上での生活を「選択」する人も一定数いらっしゃることも事実です。
この辺りは非常に難しいところで。
居宅での生活を望んでいるけども、なんらかの阻害要因がある可能性もあります。
「野宿生活を選択する」と言っていても、実際はそれとは違う「本当の気持ち」がもしかしたらあるのかもしれません。

関係性を深める中で新しい声を聞くことができるかもしれません。

「野宿生活の選択」がそもそも本当の気持ちなのかもしれません。

関係性を作り続けながら、新しい声を聞かせてもらった時にすぐに動けるようにすることしかできません。

上記(1)〜(3)を踏まえての「野宿者の追い出し」について
・ホームレス状態の人の数は減っている
・野宿状態からの生活保護申請が過去に比べると容易になった
・理由はそれぞれ違うが訳あって「野宿生活を選択」する人が一定いる
ことより、ホームレス状態の人の数が減ることで「野宿者の追い出し」は過去に比べると可能性は大幅に下がると考えられますが、今後も路上で生活する野宿生活者はいなくなることは現時点では考えにくく、その人たちが追い出しにあう可能性は否めない。と考えています。

釜ヶ崎でのジェントリフィケーションに関して

上記①、②より、
釜ヶ崎でのジェンとリフィケーションに関して、この街で活動して見えてくる限りでは、「危機的状況」という状態ではないと感じています。
しかし、昨今の地価高騰や西成特区構想の動きなど、変化が起きていることも事実であり、結果的に重大なジェントリフィケーションに発展してしまうリスクも抱えていると感じています。
そんな状況の中で、我々になにができるか?ということを日々考えながら活動を行なっています。
その点に関して、実際具体的になにをしているか?なにをすべきか?という点について、次の投稿でご説明させていただきたいと思います。


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小林大悟@釜ヶ崎
釜ヶ崎で稼ぎ、釜ヶ崎でほぼお金を使い切るライフスタイル。余ったお金は基本的に釜ヶ崎の支援団体に寄付してます。なので、応援していただくと、結果的に地域内の飲食店か支援団体にだいたい届くことになります( ^ω^ )