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手の声を聴く人?

今からほぼ2年前、25年来の友人である野村浩平くん(以下、野村)から、
「ちょっと面白い人に出会ったので、もーさん(と彼は呼ぶ)に会わせたいんだよね〜。」
と、言われ、単に会うのではもったいないから、イベント化させたいと、現在は、絵描きとしての活動をしている、野村自身の個展の開催中に、私とその野村が面白いと言う女性との初対面の場が設けられた。
その女性の何が面白いのかと言えば、手相を観るのではなくて、手の声を聴くという特殊能力がある、ということで、私自身にはそういった能力は皆無なのだが、とはいえ、そういう能力を有する人がいたとしても何ら不思議ではないというスタンスなので、確かに面白そうだと思ったのだ。

その面白い女性、卯野たまご(以下、卯野)さんと、野村の個展会場だった恵比寿のギャラリーで初顔合わせをした瞬間、
「私と森田さんとは、野村さんを介してなければ、今世では会う予定はなかったんですよ〜。」
と、いきなりかまされて、あーそういうレイヤーで生きてる人なんだと、まぁだからこそ、手の声を聴くなんてことが出来ちゃう訳ね、と思った。

そして、手の声を聴くセッション開始。
卯野さんは、私の手をマジマジと見つめてしばらくした後、
「この手は、何もしてこなかった手ですね。」
(!!!な、なんだって?この50年近く生きてきた中での取り組みは、遊びだったと?)
そんな私の心の声までもが聴こえたのか、
「例えばですけど、お釈迦さんの掌の上でずっと寝てて、一回も生まれてきてないんです。」
(???)
「わかります、わかります。」
とは、野村。
(わかるんかいっ!ワシにはサッパリわからん…)
「完全に無我なんで、だから究極的に我欲が強いんですけど、でも無我にどれだけ入れても無我は無我なんで、だから今までのことは全て無罪放免なんです、って、別に罪を犯したって訳ではないんですけど。」
(無我故に強い我欲…禅問答のようでいて、非常に論理的でもある…。この言語化能力は相当ヤバい。で、罪、犯しましたです、ワシ…)
「わかります、わかります。」
と、また野村。
「森田さんにとったら地球なんて全然楽しくないんですよ。用があるなら降りてもいいけど?て言うてますけど。今日、野村さんが呼びに行ったってことですよ。でも、用のある人、用意してないやん、って言うてはります。」
「え?僕が用意するんですか?」
と、そこは無自覚で無責任な野村…。
(勝手に話が進んでる…)
「で、ここ(親指の付け根辺り)に、しこたま花の種を持ってるんです。花の種を現世的に言えば、愛ってことなんですけど、人間体としての森田さんは、分け与え方がわからないので、そこは野村さんがぶつかっていって、溢れさせる必要がありますね。」
「え?僕がですか?」
と、また無自覚な野村。
(ワシが、花の種=愛をしこたま持ってる…???)
「でもまぁ、今日、野村さんが呼びに行ったんで、降りてきはりますよ。今日が誕生日ですね。」
「いや、今日受精したんで、産まれるのは十月十日後ですね。」
と、初めて言葉を発せた私。
「降りてきても、胸に『菩薩』って書いてありますから、酷い目には遭いませんよ。」
(ぼ、菩薩???そんなんおこがましいって…)
「皆さん、お布施置いていってくださいね。」
(お支払いはPayPayでも可、じゃねーわ。何それ)

とにかく、これからは、行く先々で出会う人や空間なんかに花を咲かせるそうで、人前に出た方がいいとのこと。
全っ然実感が湧かない…。
けど、30代半ば辺りからだったか、大剛はもっと人前に出た方がいいと、よく言われることがあったんだけど、嫌だったんだよねぇ。
でも、もうそろそろ、必要とされることがあるのなら、別に嫌ではなくなった、かなぁ。

そして、この日から十月十日後、私の自伝的エッセイが誕生したのだ。
ただ、書き終えたものの、あまりにもな内容なだけに、どう扱っていいものかと思案しているうちに時間だけが経ち、それから約一年後となる、昨年末に出版となった(その詳細は、次回にでも書いてみます)のだが、時を同じくして、卯野さんも、自伝的エッセイを出版されることとなり、へーなんて思ってたら!
野村曰く、卯野さんも私も、兵庫県生まれの乙女座との共通項がある、とのことで、更には、お互いの母方の祖父が杜氏だったことも発覚!

そんな偶然の重なり合いの中生み出された、手の声を聴いて抽象概念を言語化する能力に長けた卯野さんの本、是非、手に取り、文字に耳を傾けてみて頂きたく思います。
手の声を聴くという能力を持たざるを得なくなった、稀有で悲しい(=やさしいと読む*マイルール)歩みをこそ、豊かさと呼ぶのかもしれません。

*以下、手の声を聴くセッションの模様

卯野たまごさんの自伝的エッセイ。

*装幀画は、前出の野村浩平(https://www.instagram.com/nomurakouheino)氏によります

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