夢さすらう 6話 ガルナの塔 地下にて


「いてて・・・」真一は背中をさすりながら、ゆっくり
と起き上がった。
塔の1階の床に、突如穴が開き、躱す間もなく
地下へ真っ逆さまに落ちて行ったのだった。
木箱が2~3個重ねられているところに落ちたため、
背中を軽く打ち付けたのと、木箱の角で擦りむいた
程度で済んだ。
勢いよく落ちたため、一番上にあった箱はバラバラだ。

そこは、3~4メートル四方の狭い部屋だった。
辺りは明かりも何もない暗闇だが、辺りを照らす
魔法「デントー」のおかげで、分かったのだった。
積まれた箱以外は何もない。
「1階に戻って、早く合流しないとな・・・」

真一は部屋の外へ出かけ、自分が手ぶらであることに
気付いた。「剣がない」
部屋に戻ると、床に剣が転がっていたので、
それを拾い、部屋を出た。

1階とは違い、まっすぐ直線の廊下になっていた。
部屋が左右に3つずつの計6部屋あり、
突き当りは暗くてよく見えない。上がる階段がないか
後ろを振り返ってみる。背後は壁以外何もなかった。

真一はとりあえず、突き当りまで歩を進めた。
ペタペタと素足の自分の音だけがわずかに聞こえる。
突き当りは、下への階段以外は何もなかった。
「さらに下へ降りても意味ないしな。この部屋のどこかに
上への階段があるのかな・・・」
真一は階段のそばにある部屋に入ってみた。
デントーのおかげで、入った部屋が明るく照らし
出される。
部屋には何もなかった。
すぐに部屋を出て、向かいの部屋に入ってみる。
そこにも何もなし。
隣の部屋。枯草が置いてあり、草をどけても何も
なかった。何より、その草が悪臭を放っており、
真一はダッシュで部屋を出た。
これで4部屋見た。
残るは、最初に落ちた部屋の向かいの部屋だけだ。

期待して、部屋に入ったが、上への階段はなかった。
あるといえば、部屋の中央に蓋の開いた宝箱が
あるだけ。
「なんで上への階段がないんだ。まさか、
行き止まり?」
不安になりつつ、何気に空いた宝箱が気になり、
覗いてみる。

やはり空っぽだった。中には何もない。
ただ、底に乱雑な日本語で文字が書かれている。
真一は読み上げた。
「会心斬り・・・下、斜め下前、右、オー・・・」

それは突然起こった!
真一の体が、意に反して勝手に動いたのだ。
握っていた剣を振りかぶり、宝箱めがけて
思い切り振り下ろした!・・・ヒュン!!!
 
ガキン!

鈍い金属音と共に、宝箱がまっぷたつに割れた
のだった。腕に振動が伝わり痺れる。
体中が痛みに襲われた。
「いたたた!!!な、なんだこれ!!!」

剣を杖代わりにして、かろうじて立ち上がり、
もう一度、さきほどの言葉を口にしてみる。
「下、斜め下前、右、オー」

また、勝手に体が動いた。
剣を振りかぶり、目の前に思い切り振り下ろす。
この一連の動作が尋常な速さではない。
今度は、目の前には何もなかったため、
剣は空を切った。
直後に体に自由がきくようになり、本人の
意志通りに動くようになった。
ミシミシと全身がまた痛くなる。
「いてて!!これは、技・・・か?」

呼吸を整える。全身が筋肉痛になったような
感覚だった。
「会心斬り」。下、斜め下前、右、オーと言うと、
この技が発動する・・・らしい。自分で
コントロールできないのが難点だが、目の前の
標的に剣を振り下ろす技だ。
宝箱を真っ二つにしたところを見ると、力や
スピードも格段にアップする・・・らしい。

「格闘ゲームみたいだな・・・」真一はつぶやいた。
格闘ゲームで、コントローラーに今の動作をすると、
必殺技が出ることが多い。
何はともあれ、必殺技が出来たのは心強い真一だった。

「階段を降りるしかないよな。そこに隠し階段が
あって、地上まで出られるかもしれない」

真一は廊下の突き当りにある階段を下りていった。
白が2、黒が1ある地下2階へ・・・














いいなと思ったら応援しよう!