「Mリーグの理念」から見た「ラオウポーズ」の是非
前回の記事、案の定「炎上」しているみたいで。まあ、今までのこの業界にいる「炎上先輩」からすれば、まだ序の口なんでしょうが(笑)。
「挑発行為」ではなくて「パフォーマンス」?
Twitterで見る限り、ほぼ想像通りの反応が返ってきました。しかし、反対論の多くを見ると、やれ「古い考え方だ」とか「文句を言うな」とか……。他のスポーツでも、記者や元アスリートが問題点を提示することは普通のことなのに、Mリーグについてだけ「黙れ」と仰る方々のメンタリティが不思議です。…って、それこそ意識して少し煽り気味に書いたので、反発する方がいるのもよくわかるんですが。
それにしても、文中で指摘したにも関わらず、「パフォーマンス全体の否定」と受け取って、反論をしてくる方も多かったですね。うーん。ここまで伝わらないものとは……。
筆者としては、終局後にガッツポーズをしたとか、ピースサインをしたとかで突っかかっていったのではなく、ただただ、「あのポーズは意味が不明で、対局者や視聴者が挑発行為として受け取れるから、Mリーグとして是認するのはおかしい」と言っているだけです。かっこいいかどうかは確かに主観になるかもしれないので、百歩引いて置いておくとしても(本当はそれを一番言いたいけど<笑>)、「あのポーズは対局者への非礼にはあたらない」という発想が自分には理解できません。だいたい、「終局後の雰囲気が重たいからパフォーマンスをやるべきだ!」って理由自体おかしいと思いませんか? それは選手じゃなくて、番組を中継する側に任せるべき問題でしょうに。
それでも「非礼にはあたらない」と仰る皆様方におかれましては、どうぞ今からでも雀荘へ出向いて、トップを取った際に例のポーズをヌボーッと決めてきてください。もちろん、その後でお店の人に笑われようが、怒られようが、お客さんに殴られようが、そこは自己責任ですが(笑)。
Mリーグの理念をもう一度読んでみよう
切り口を変えてみましょう。もしこのMリーグが「エンタメ仕立ての対局を演出して麻雀を普及させる」という趣旨でなら、自分もこんな書き方はしていないと思います。しかし、Mリーグのサイトには、こんな「理念」が掲示されています。
Mリーグの理念
・高度な頭脳スポーツとしての麻雀への認知の確立
・麻雀に対する負のイメージの払拭
・麻雀による世代間交流の促進と社会発展への貢献
・麻雀を通じた国際交流親善への寄与
https://m-league.jp/about-detail/
“高度な頭脳スポーツとしての麻雀への認知の確立”や“麻雀に対する負のイメージの払拭”という理念に、あのポーズが適しているのでしょうか。
さらに、Mリーグ発足の際、藤田チェアマンはインタビューでこんな話をしています。
――もっとも、古くから麻雀は愛好家が非常に多い一方で、あまり好印象を抱いていない人も少なくなかったのが実情ですね。
藤田 賭博、徹夜、タバコといったように、あまりどころか、非常にイメージが悪いですね。雀荘の内装は写真を撮っても絵にならない。こうした麻雀のイメージを塗り替えようと思ったら、かなり大掛かりなことが求められてきます。
https://seikeidenron.jp/articles/9170
麻雀は世間からのイメージは最悪です。真っ黒です。その負のイメージから抜け出すため、「麻雀競技の五輪種目化」というスローガンまで打ち出して、藤田チェアマンが発足したのがMリーグでした。それゆえに、麻雀のイメージをクリーンにするためには、麻雀に関するあらゆる事象において、Mリーグでは間違えたメッセージを発信してはならないと筆者は考えます。
Mリーグは「エンタメ」追求のリーグ戦ではない
そもそも、どうしても「エンタメ」にこだわるのであれば、それこそMリーガーの代わりに麻雀の強い芸能人を30人ほど集めて、企業スポンサーを募ってリーグ戦を開催すればいいんです。話題にもなるし、多くのファンを獲得することもできるでしょうから。しかし、藤田チェアマンは同じインタビューでこうも言っています。
だから、僕はプロ雀士を堂々と公言できる職業、そして子どもたちに憧れられる職業にしたい。Mリーグに参戦する選手も今までの麻雀のイメージを変えたいと思っているし、今まで仲があまり良くなかった各団体がMリーグに総じて協力的な姿勢を示しているのは、彼らとしても「もう後がない」と思っているからでしょう。
つまり、このMリーグは麻雀プロが主役でなければいけなかった。麻雀の普及とは別に、「麻雀プロ」をひのき舞台に上げることが、藤田チェアマンのMリーグを立ち上げた理由なのです。そして、Mリーグをプロスポーツとして成立させるためには、一流のアスリートと同様、多くのファンや子供たちの模範となるような「品格」がMリーガーにも求められている――。
競技麻雀と「牌品高」
ちなみに、古くから麻雀には「牌品高(パイピンカオ)」という用語があります。“麻雀の品は高く”……美しい言葉じゃないですか。競技麻雀においては、それこそ「賭博、徹夜、タバコ」という負のイメージがあるが故に、「品格」が重んじられています。「Mリーグ」というメジャーシーンに飛び出したからこそ、その部分を大切にしていかなければなりません。
「面白ければいいじゃないか」「目立てばいいじゃないか」――面白いのも、目立つのも大いに結構。しかし競技麻雀は「他の対局者をリスペクトしてゲームに臨む」ことが大前提です。それは、競技麻雀の延長の場であるMリーグにおいても同じだと思うのですが、それがそんなに「古くて」「頭の固い」ことなのでしょうか。
Mリーグは、エンタテインメントの前に、負のイメージを持つ麻雀をクリーンなものとして認知させる使命を担っており、そのステージに立つMリーガーはすべて麻雀の品格を重んじる競技麻雀の選手である――そんな原則を思い浮かべながら、改めてMリーグの対局中継を観戦してみてください。今のMリーグに抱いているイメージとはまた違った感想が湧き上がってくるかもしれませんよ。
(了)
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