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十二、5月GW頃

2021年5月GW頃

 このところ急にこんな文体になってしまったのもセリーヌのせいなんだけれども… セリーヌって言ったてタイタニックの歌手だかファッション・ブランドなんだか、そんなキレイなもんじゃない… ルイ=フェルディナン… Louis-Ferdinand Céline… LーF・セリーヌ… 悪魔の呪文… 10年ぶりにセリーヌに手を付けてしまったのが運の尽き… というか訳者高坂和彦氏の翻訳文体… これが憑依ってしまって… 自分の闇の部分が… クソッタレな… まあ可愛いものなんだけど… ちょっとした悪口が出やすくなる… 悪意はない… ただキレイ事ばかりの… 勇気だの感動だの… 上っ面の政治家やら医療業界やら… 世界的な… コロナ法制なんかにクソミソにマミれてしまって… オリンピックなんかクソ喰らえ… 文句でも言ってないと… グチを出さなきゃ… 身体の外に… 庶民なんかやってられない… で、書きやすい文体… 膿の出やすいやり方に気づいちゃったわけだ… セリーヌのおかげで…。

 『なしくずしの死』なんか読み始めてしまったら、それは発達障害のオンパレード… いや〈発達の特性〉って言っとかなきゃ… 父母の抑圧をたっぷり受けて… そのまた先祖の… 市民革命の国フランスの… ヨーロッパの歴史の酷い部分を丸ごと受け留めちまって… ちょうど100年ぐらい前の…。『なしくずしの死』の原題は”Mort à crédit”… 〈クレジット払いの死〉… 生まれながらの負債で… 買ったはずもない負債を背負わされて… 払わされるけど払いきれない… 不払いのまま終わる…不払いの生…。〈反ユダヤ主義〉ってのがクセモノなんだが… これには簡単に手を付けられない… 保留しておこう… 人種差別にはもちろん反対しておかなきゃ… でも現実は… どの国だって極右… 歪み切った保守に成り下がってる… 〈自分たち〉を守るためとか言って…。彼は予見してた… 100年後の世の中を… 自らそのドロ沼に突っ込んでった… 代償は十分に払ったはず… 舌禍の… 確かに言い過ぎた… でもみんな言ってたじゃねえか… その時代の罵詈雑言を… 戦争が金儲けの手段で… 牛耳ってる奴がどこかにいて… それにまんまと振り回されてイガミ合ってる民衆… どっちもどっち… 民衆の立場に立てば… 無知で無力でクソッタレな自分を描くことになる… 周囲を描くことによって… 自らをクソにマミれた歴史の一員として… 歴史なんて知るもんか… どっちみち歴史に巻き込まれちまう…。でも逃げなかった… むしろ率先して… 言い切ってしまった… 差別の言葉を…。

 誰だって差別心を持っていて… それを利用して自分とその周りを守ろうとして… みんなそうじゃねえか… 誰かを悪者にして… 共通の敵をでっち上げて… か弱さで他者を卑下して… 自分のか弱さを受け留められなくて…。でも調子のいい連中は… 機を見るのには敏感で… さっさと掌を返して… 自分が味方したはずの者たちにあっさり裏切られる… 民衆の味方のはずだったのに… 口裏を合わせない者を生贄にする… 正義ってのは口裏合わせ… いまだに同じことやってる… ワクチンだろうがオリンピックだろうが… イジメだって同じ… コロナ禍ってのは現代の戦争… みんな生き残ろうとしてるつもりで… イジメ合ってる… 敵を見つけようとしたってそうはいかない… 我々だってみんな資本主義の共犯者で… 敵は… 悪者は自分自身の中にいる… 今さら気づいたってもう遅い… 口撃するならそれは歴史を引き受けてしまった自分… クソにマミれた自分をクソミソに言うしかない… こんな世界に生まれてきてしまった自分を… 無知で無力で卑怯な自分を呪うぐらいなら… まずは自分をダメな人間だと… 文句も悪口も自分勝手なことも言う偏った人間で… か弱くて… その辺から始めた方がいい… 〈発達に特性〉ぐらいで十分に結構…。

 曇り空の下、海までJOG… デトックス… 平日の昼間、住宅地には子育て中の若い母親たちが闊歩してる… 幸せな時間… ベビーカーを押す若い女性とすれ違った… 幸せな頃のはず… 仕事なんかしなくてよくて… 乳児の時間を共に過ごして… でもそのママさんは暗い顔してた… そんな気がした… 育児疲れもあるだろうな… 笑顔を見せるとしたら… 母親たちの雑談には愛想笑いでも見せるのかもしれない… でもつまんない雑談につまんない顔をしてやるのも〈発達特性者〉の役割なのかもしれない… どうでもいいことも大事かもしれないけど… それに対してホントのことを言ってしまうことだって… ホントっていうのは自分にとっての… どっちが正しいかではなく… どっちもあるということのための…  達成感っていうのは《言ってやったぜ!》ってことなのか… ただそこから逃げて、同類とグチを聞かせ合うことなのか… 同類を見つけて少しだけ安心するため?… ちょっとした達成感…。

 住宅地の舗道を走ってる… デトックスは海辺だけで… 道端の雑草がいつだって目に入ってくる… アスファルトの隙間から逞しく… あいつらの役割… 外来種の植物ってのにも役目があり、その役目が終わると自ずと消えていくらしい… セリーヌの〈ユダヤ〉… 戦争の裏側の資本家としての存在のことを言ってたのかもしれないが… 外来種を恐れてる… あの頃のフランスにとっての… 外来種を根絶やしにすればそれで解決なのか?… ナチスが本当にやりやがった… 多摩川はタマゾンで… 生き物たちは新たな生態系を作り上げる… あいつらだってみんな生きてる… そりゃ在来固有種は減るだろうが… 万世一系の… 動物園で保護して… ペットに服を着せて散歩させられてる動物差別主義者が通り過ぎる… 切り分けられた家畜肉を喰らっといて… 家族だとか言って… 過保護が愛で…。

 雑草… 雑談… 蟲たち… どっかに線を引いて… 有益/無益、有効/無効というスラッシュ… 損得で判断して…。悪いのは全て人間… その判断が時代によってどちらかに傾くと、その中間の取り上げ方によって断罪される… それが科学的かどうかなんてそんなことは自由自在… 中間を取るということがいかに難しいか… 時代時代の中間性のテーマはどちらかに振れ揺らぎ動く… いつだって… それもまた後世のテーマとなり得る… 歴史に決定させてしまうのも危険だ… いま現在に過去を揺れ動かすのも大変… そんなこと何のメリットもない… やりたがるのはただの変わり者… 断定されてきた中間的テーマを再び揺り戻して、話の俎上に乗せるのも… 我々発達特性者の役目… 雑草の… 役目がなくなったら消えてゆく…。

 絶えゆく者として… どうせいつか死ぬんだ… 死が本質だとして… どうやって生きていくのか… つまりどのように迷惑をかけてきて… これからもかけていくのか… 他者にも地球にも… その迷惑の歴史… 地球はもう介抱しきれない… 正論なんてどこにもない… どちらにしたって何にせよ… 振りかざした時点で迷惑…。潜在的仏教者としては中道を行くしかない… 親鸞ファンとしては悪人正機で… セリーヌなんてまさに悪人で… クソッタレのドロ沼に咲く花で… 世界はドロ沼… The World Is A Ghetto… そこにマミれていることがまず基準で…。自分がキレイな場所にいたいとか、キレイであることがフツーとか振りかざしてくるヤツがいるから困るんだよ… まったく…。

 発達障害者は二次障害として鬱病となりやすい… 例えばマルチタスクをシンプルタスク化して、ちょっとした〈達成感〉を見つけていくことが大事だそうで… 自分に期待せず、他人に期待せず、自分は自分なりに努力して… できないことよりできることで勝負して〈達成感〉を得てゆく… 確かにセリーヌはその達成感を振りかざし過ぎちゃったのかもしれない… アーティストってのは得てして… それは歴史の教訓で… 発達障害者の… その頃にはそんな言われ方もなかったんだろうし…。でもアーティストってのはみんな発達障害者みたいのもので… 文学も音楽も美術も… 科学も学術全般もそうなんだろうけど… 我々音楽好きの… 過去の文化芸術を重んじる歴史主義者は… いわば発達障害主義者でもあって… 別に発達に特性のある人がみんな天才とか言ってるわけじゃない… 

 そんなこと言ったらセージカなんて彼らの症状は何次障害なんだ?… ソーリダイジンなんて理想甚大で… カンボーチョーカンなんて浣腸傍観で… ご立派な想定はほっといたらクソマミれ… 対処は現場任せ… 誰がその面倒を見るんだ?… 民衆が?… 税金で?… 症状が歴史の幾層にも積み重なって、もう原因が何かなんて突き止められない… 医者もお手上げ… むしろ入院させといた方が金になる… 議院に入院… 金のあるヤツらなんか金が薬…。そんな世の中がフツーだって言われて… 過剰適応させられて… 発症する… むしろ鬱だの発達障害だの自分で認識してる方が健全だよ… 〈達成感〉を振りかざさないぐらいが…。

 仏文学者はフランス近現代史の〈症状〉を日本語の〈症状〉で翻訳し… 文体を破壊する書き言葉と会話文は何重もの〈症状〉で… 正しい文章の書き方なんて抑圧そのもの… 言葉で捉えきれない曖昧さに線を引いて、外側を排除する… 内側を抑えつける… 正しさってやつで… 言葉はフリージャズのサックスのように叫びへと回帰する… もうそもそもの原因など分からない… 叫ぶしかない… セリーヌなんか読んでると、何でヨーロッパがフリージャズを受け入れたのか分かるような気がする…。アメリカのジャズの歴史からハミ出てしまって… 後からしたらハミ出てなんかないんだけど… そん時はジャズの線引きから外にされちまって… ヨーロッパが喜んで迎え入れた… アメリカの〈症状〉を… つまり… アメリカに原因があると… 他人のビョーキだと… そしたら同じ穴だった… 植民地主義の… 帝国主義の… 資本主義の… だから分かっちゃうわけで… 我々日本も同じことで… ちょっとだけ客観性があっただけ… 他人のことはよく見える…。〈症状〉の表現があまりにも見事なもんで… 美しいもんで… ロックンロールもそのひとつ… 世界中で共有できるスタンダードにまでなった… ちょっと〈達成感〉強すぎだったかもしれない… で見事に資本主義に処方されちまった… まんまと… グローバル疫病の症例として… 手なずけられた… ワクチンが効いたんだ… 大量生産の… 複製音楽ワクチンが…。50年ぐらい前の音楽評論が危惧してたのはこういうことだったのかも… 僕らはちょっと商業音楽を楽しみ過ぎた… 楽しまされちゃった… 集団免疫が効いちまって…。

 ともかく、ここんところ… ジョージ・アダムス=ドン・プーレン・クインテット… GA=DP… ADHDじゃないぞ… こればっかり聞いてて… これがなんだか心地よくて… この春の連休あたりの… 緊急事態宣言が解除されたんだかそのままなんだかマンボーなんだか、その辺の決まりがよく分からなくなっちまった時期の… つまり〈決まり〉が崩れてそこから逃れていくジャズの、でも〈なしくずし〉的にドロ沼化していくところまではいかない… 人によってはフリージャズとは呼べないかもしれない… フリージャズっていいうのもカテゴライズは難しい… そんな狭義の枠組みから逃れていくのもフリージャズで… ドン・プーレンのメチャクチャ奏法の見事なピアノ芸… これは芸術というより… 名人芸… ジョージ・アダムスのブリブリサックスも… メチャクチャなようでいて最後にはきちりとまとまる… 可愛く… どこかポップで… ファンクやブラック・ミュージックのポップさを保っていて… 可愛いフリージャズになってる… 最初聞いた時はそのメチャクチャぶりにビックリしたものだったけど… たまたま貰ってきた“Earth Beams”のテイチク盤のジャケ違いのCD… それから10枚ぐらい集めて… しばらく忘れてた…。

 最終期ミンガスのグループから独立して… アメリカではレコード出せなくて… イタリアやオランダのレーベルから… ヨーロッパが受け留めた… 1980年前後… フリージャズの全盛期は終わってた… 後になってBlueNoteが引き抜くんだけど… 時遅し!… 二人とも50そこそこで死んじまった… ドロ沼に飲みこまれず軽快に跳ね回って… 濁流を自ら渦となって乗り切る〈荘子〉のタオイスト… ハッピーな綱渡り… 笑顔の軽業師… 混沌は重苦しさではなく… むしろ楽しむための条件…。 我々が音楽を聴くのは… 音楽はつまるところ耳に詰めた耳栓… 耳栓では口腔と耳孔の、内側の空間に自分の音楽が響いてしまう… 自分の音など聞きたくない… 音楽は外に開いた耳栓で… 他人の会話や他人の指図など聞きたくない… 自分の音も他人の音も… 聞いてるけど聞かないふりをする… 音楽を大きくして… 風や自然の音で耳栓してくれてもいい… だから自然の音のような… 渦のような… ランダムな音楽を聴きたくなる… こんな時には特に… この時代の〈症状〉を乗り切るには… 楽音と楽音の間… 架空のワールド・ミュージック… 〈世界〉の音楽は… 金持ちの音楽ってわけじゃない… 第三世界の音楽を西洋に売るための音楽でも… 商業主義の商品音楽でもない… エキゾチシズム?… 外部なんか現実のどこにもありはしない… 世界を俯瞰したような音楽なんてあり得ない…。

まあマルガブさん… 僕らはそう呼んでるんだけど… 彼に言わせれば〈世界〉というものだけが存在しない… 他人に… 世界に完璧を期待するより… 〈世界〉が自己承認欲求なんて持っているのか?… 自分を承認して欲しいなどと… 自分が〈世界〉だなどと… その前に身近な人の承認欲求を満たすように心がけるのがいいらしい… 発達特性者の心がけ… ミュージシャンは目の前の聴衆を喜ばせる…。自分たちだけがダメで、他はみんな完璧で… 自然だけが完璧で… 地球が… “Earth Beams”のLPジャケット… それにおんぶにだっこ… 自分だけがズルで… 他はみんなマジメで… みんなフツーで… そんな期待は無効で… 歴史が証明してて… だからダメなのは自分だけじゃなくて… みんなダメなことを自覚して… お互いに承認欲求を満たし合って… 承認し合って… 補い合って… そんなことはまだ当分… 何百年もかかるんだろう… それまでは少数派として生きていく… みんなフツーでいてくれる方が気楽かもしれない… 雑草として生きていけるから… 民衆をフツーにさせておくこと… それも紙一重で… 僕らは… いつか役目が終わる時までは役目があるんだろうと… 健常のフリをしてるフツーの人たちの欠点を補う役目が… 言ってみれば〈健常者〉がいなくなるまで… セリーヌの言う〈反ユダヤ〉ってのはそういうことだったのか?… 確かにそれは言い過ぎ… 言葉が悪い…。

<参考文献>
『現代詩手帖』1978年11月号 特集=セリーヌ 否認の言語の罪?(思想社)
『ユリイカ』1994年10月号 増頁特集*セリーヌの世界 生誕100年記念(青土社)
『なしくずしの死 上・下』 L-F・セリーヌ 高坂和彦訳(河出文庫)2002年
『雪片曲線論』中沢新一(中公文庫)1988年
『なぜ世界は存在しないのか』マルクス・ガブリエル 清水一浩訳(講談社選書メチエ)2018年
“Earth Beams” George Adams and Don Pullen Quintet (Timeless) 1980
“Breakthrough” George Adams and Don Pullen Quintet (Bluenote) 1986

大源太ゲン

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