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サクマドロップス

 家に、昔たまに見た気がする缶入りの「サクマドロップス」がおいてあった。鬼滅の刃とコラボしているらしく、缶に善逸が印刷されている。
 それにしてもこの缶入りの風体は久々に見る。なつかしい、というか、正直いうと自分でももはや世代ということはなく、自分が子供の時に親世代が「なつかしいねぇ」と言っていたのがこの缶入りのドロップスだ。
 それでも、大人になってからはあんまり食べた記憶も見た記憶もそんなにない。
 ちょっと食べてみようかな。
 缶のふたを、きゅっと開ける。ややコツがいる。そうだった。こんな感じだった。
 一粒出して、口に入れてみる。
 驚いた。
 めちゃめちゃおいしいじゃないか。
 あれ?ドロップスって、こんなにおいしかっただろうか?
 記憶にある限り、他の飴類に比べて、ドロップスはもっと甘さの強い印象だった。しかし、今口にあるこのドロップは明らかに洗練された味になっていて、口の中にあっても全く嫌味がない。それでいて味はしっかりと強く、強い満足感がある。食べ終わって口の中からなくなっても、ほとんど口の中がべたつくこともなく、キャンディにしては抜群の後味の良さである。
 見た目の色も、昔の方がどぎつかった気がする。カラフルではあるが、今はどちらかというとパステル寄りというかやさしみのある色だ。やはり、何色何号的な着色料などが今は違うのだろうか。
 だいたいにおいて、世の中で定番とされる食品であっても、常にマイナーチェンジは繰り返している。昔のものと今のものを同時に食べ比べるというわけにはいかないから実際には気づかないが、だいたい数年間の間に一度くらいはどの製品も見直しているのではないだろうか。
 いやいや、ほんとうに、しばらくみないうちにドロップスがこれほど進化しているとは思いもよらなかった。

 改めて、ドロップスの缶を手に持って眺めてみる。
 缶の重量感が妙に手にフィットする。
 誇らしげに印刷される「サクマドロップス」の文字。
 サクマドロップス。
 あれ?そういえば、昔サクマ式ドロップスっていってなかっただろうか。「式」ってなんだ。缶にはたしかに「サクマドロップス」って書いてある。名前が変わったのだろうか。
 と思い、調べてみた。今は便利である。ブラウザに「サクマ式ドロップス」と打ち込めば一瞬で答えを教えてくれるのだ。
 そして驚いた。サクマ式ドロップスとサクマドロップスは別の会社で作っていて、しかもサクマ式の方は先年廃業してしまったというのだ。
 知らなかった。全く知らなかった。サクマドロップスは2社あったのだ。
 どうも、もともと同じ会社だったのが兄弟で分裂的なことになったらしい。元町のバッグのキタムラみたいなもんなんだろうか。。

 まあでも、消費者目線ではそのあたりはどうでもよくて、今でもこんなにもおいしいドロップスを作り続けてくれるのはありがたい限りである。
 自分が知らないだけで、やっぱりなんでもよりよくするために頑張っている人たちがいるものだし、そしてこれまで全く思いもよらなかったそこに至るまでの歴史があるんだなぁ。。
 ドロップスを口に入れながら、あらためてそんな当たり前のことをぽくぽくと考える夜であった。

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