ぶっつけ本番
ぼくがリーダーを務めているバンド「SLAP」は、管楽器と三味線で構成されているなかなかに変わったバンドである。映像はこちらなどで見ることができるが、通常ドラム、ピアノ、三味線、チューバ、トロンボーン、トランペット、アルトサックス、テナーサックスとバリトンサックスのぼくの9人で編成している。
そのSLAPもコロナになって以来めっきり演奏機会がなくなってしまった。元々ほとんどはアマチュアミュージシャンだし、アマチュアの演奏なんて不要不急の最たるものだったからである。ということでここ数年は特に目立った活動をせずに過ごしていた。
そして数年ぶりに、そのSLAPに出演の話がやってきた。
ところが、久しぶりすぎたのと、たまたま日取りが悪くて、当日はトランペット、アルトサックス、チューバとぼくの4人しか集まらないことが判明した。これは大分様子が異なってくる。さすがに出演無理なんじゃないだろうか。
しかし、その本番の様子をよくよく聞くと、次々に出演者が出てくるオープンマイクイベントで、ほとんどの人はギター&歌みたいな編成だという。しかも会場にはドラムもないのだ。
そうかそうか、だったら、まあさっきの編成でもいいかということで本番に臨んだ。一応、ドラムないとはいえ、なんらか刻む楽器がほしいので、普段は別の楽器をやっているメンバーの奥さんにカウベルとタンバリンを叩いてもらうことにした。
ほんの1曲くらいしか演奏する時間がないということもわかり、じゃあ特に練習もなしでぶっつけ本番でいいかということになり、特になんの準備もせず、当日メンバーは楽器だけ持って本番のちょっと前の時間に会場の控え室に集まった。
着くといきなり、出演時間が思っていたより長いので、1曲だけでなくなんかしら曲を増やせないかという話になり、大慌てでその場でできるものを考える。
他にもいろいろと確認などしていると、意外とすぐに時間は過ぎ、あっという間に出番の時間になってしまった。
と言っても、ぼくらはいきなりこの控え室に来たので、よく考えたらこれから出るステージがどんな場所なのか全く見たことがないのだ。
ブルースブラザーズじゃないんだから、ないじゃないか、そんなの、扉が開いたら見たこともないステージの上で演奏始めるなんて。夢の話みたいだ。
とか思っていたら否応なしに出番になり、訳もわからずぐいぐいと生まれて初めて見るステージに向かう。ステージは色鮮やかで、これもまたダンボの夢の世界のような気がしてきてしまう。これは現実なんだろうか。いや現実だ。行くぞ。息を吸え!
そして演奏を始めたところ、思った以上にお客さん(と言っても大半出演者だが)の反応がよく、これも思った以上に大盛況で終わった。終演後も大変反応がよく、方々で声をかけていただいた。いやいや、なんとでもなるものである。全然会ったこともないお客さんが盛り上がってくれたというこの辺りまで含めて、本当にブルースブラザーズのようだった。
ということで、適当な編成で練習もせず、当日いきなり集まって、それまで一度も見たことがないステージにいきなり上がって、ぶっつけ本番の演奏をしたら意外とそこそこうけたという話でした。
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