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横浜中華街の名店:秀味園

 横浜に長いこと住んでいるので、子供の頃から中華街は数限りなく訪れている。というより、今の職場などは中華街のすぐ隣だ。以前、まる1年くらいかけてお昼のランチを端から全店制覇したこともある。

 その中でも、ぼくがおそらく最も多く訪れていると思われるのが台湾料理の名店「秀味園」じゃないかと思う。
 秀味園は、知る人ぞ知る的な有名店である。台湾の料理といってもいろいろ種類があり、他にも「青葉」のような伝統的な台湾料理のお店もあるが、この秀味園はいわゆる家庭・屋台料理的なメニューのお店だ。

 秀味園の看板メニューというか、おそらく訪れた人のほとんどが食べていると思われるのが魯肉飯(ルーローハン)である。

 どうだろうか。大ぶりの角煮。味噌ひき肉。高菜。味付けたまご。どんぶり飯の上に無造作に転がっている。これほど迫力と説得力のある図柄もなかなかないのではないだろうか。
 この魯肉飯が、まぁ文句なくおいしい。素材や煮込み加減も素晴らしいのだが、なんといっても味付けが本当にこれしかないというピンポイントな絶妙さである。
「くせになる味」という表現がピッタリなんじゃないだろうか。この魯肉飯、その時ももちろん美味しいのだが、一度食べてしまうと、「あ、また秀味園行きたいな」と定期的に脳が思い出してしまうほどのインパクトのあるやみつき味なのである。ちなみにぼくはこの味付けたまごを最初にばらばらにほぐしてから食べるのが好きです。

 そしてこの魯肉飯、これだけのボリュームで、なんと660円なのだ。昔は500円だった。いわゆる牛丼屋さんのちょっといいメニューくらいの値段である。安い&うまい&ボリューム。まさにドリーム!

 初めて台湾に行った時に、ついに本場の魯肉飯が屋台で食べれる・・!と思ったら、上の写真の角煮とたまごがないバージョンのものが出てきて拍子抜けしたのを覚えている。どうも、魯肉飯というものは割と広めなカテゴリ名称のことであるらしく、秀味園でイメージする魯肉飯はやっぱりここで食べるのが一番いいようだ。

 さて秀味園はもちろん魯肉飯以外にも豊富なメニューがある。
 いわゆる中華料理メニューは一通り出てくるが、やっぱりこの店ならではのおすすめはあって、まずビーフンが汁も焼きも抜群においしい。
 またもつ炒めが最高にうまい。台湾ビールが非常に合うそうである(自分は飲まないけど、周りがそう言ってました)。また、屋台メニューの大根もちもおいしいです。

 昼に魯肉飯をさっとかっこんでいくのも粋だし、夜に台湾ビールでビーフンやもつ炒めをつつく・・なんていうのもなんだか海外旅行気分が味わえておつなものである。


 この店に行くようになったきっかけは20代の頃で、当時ぼくはこの近くの元町というところに一人暮らしをしていた。
 仕事が終わって帰ってくるとごはんやさんも結構しまっていて、中華街までご飯を食べにくることも多かった。
 中華街も結構夜は早く閉まってしまう店が多く、その中で当時夜中までやっていたのが秀味園だったのである。

 だから結構な頻度で行った。今は広い店だが当時はテーブルが2つくらいしかない激狭なカウンターっぽい店で、夜遅くにこんちわーといって入ると大体誰もお客さんはいず、テーブル席に座りながらメニューも何もみずに魯肉飯を頼んでいた。
 座って食べながら、当時のママさんとよく世間話をした。別に深い話でもなんでもなく、本当にたわいもない話である。そしてあっという間に食べ終わり、ごちそうさまでしたーと500円玉を置いて店の外に出る。
 誰もいない中華街の平日の夜。周りの店は閉まっていて、ここだけぽつんと光を放っている。いるはずの人がいない通りを吹くかぜ。
 当時乗っていたオレンジのプジョーの自転車に跨り、夜の中華街を抜け、前田橋から元町を抜けて、元町の奥にある木造のボロアパートに帰る。アパートの扉には中華街で買った「福」の字の紙がかかっている。

 なんか、今文字にすると映画みたいだなぁ。。
 何にも事件に巻き込まれるようなことはなかったけど。。

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