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あたまの中の栞 -睦月-

 ふだん日常的に映画を見たり、本を読んだりしていると、終わった直後はしばらくその内容がふよふよと頭の中を漂っているのだが、料理と同じでしばらく経つ頃には感動経験は残っているのに内容の細かい部分を忘れてしまう。

 そんなわけだから、ひと月終わるごとに、その前の月に読んだ映画や小説を棚卸ししようと思い、noteにもまとめることにした。


1. さくら:西加奈子

 昔からずっとずっと再読したいと思っていた作品。前回読んだ時は、正直主人公の兄のエピソードと、美しい妹の美貴のエピソードしか印象に残っていなかった。今回改めて読んでみて、飼い犬の「さくら」という犬が家族の中でも「幸せ」を表すメタファーのような立ち位置になっていたのだなと感じた。

大人になるというのは、1人で眠ることじゃなくて、眠れない夜を過ごすことなんだ。(小学館文庫 p.149)

2. 嘆きの美女:柚木麻子

 割と一度この作家さんいいなと思ったら、その他の作品も色々読み漁ってしまう性分で、柚木麻子さんの『本屋さんのダイアナ』という作品を読んで以来、他の作品も読み漁るようになった。そして今回『嘆きの美女』という作品を読んだのだが、主人公は強烈な感じだけど、最後はすんなり終わってしまった感じがする。

 もうひとつ同じ作家さんの『バター』という本がとても気になっているのだが、まだ読めていないので今度図書館で借りてみよう。

世の中の基準に自分をすり寄せて生きてきただけで、本当に好きなことをやったり、言いたいことを言ってきたのかなって。(朝日文庫 p.138)

3. 工場:小山田浩子

 今回noteでは取り上げなかった作品。図書館で見た時になんとなく表紙が気になって借りたのだけど、好き嫌いが分かれるような気がする。私自身はちょっと苦手な作品。本作は新潮新人賞を受賞した作品だそうで、『工場』、『ディスカス忌』、『いこぼれのむし』の三篇から成る。

 世界観が独特で、冒頭の『工場』という作品では正社員、契約社員、派遣社員という異なる立場の人たちを扱っている。とにかく改行が少なくて個人的には文章も固くて少し読みにくかったかな。印象としては、昔読んだフランツ・カフカの『変身』に雰囲気が似ているかもしれない。

人間関係というのは生態系のようなもので、一つの生き物がその役割、あり方を定めたら、それが良いにせよ悪いにせよ、それはそれとして受け入れてやっていくしかないのだ。(新潮文庫 p.282)

4. 狂犬の眼:柚月裕子

 柚月裕子さんの本を最初に読んだのは、『孤狼の血』という作品。「暴対法」が制定される前の時代における、暴力団の間における抗争と暴力団と癒着して仕事を行う大上章吾のエピソードを中心に描かれている作品。

 最初タイトルだけ見た時に、ちょっと怖そうな話なのだろうか、と思ったがそうでもなくて、気づけば物語の展開や構成力に深く引き込まれて、2日くらいで読み終わってしまった。

 今回読んだ『狂犬の眼』は、『孤狼の血』シリーズの2作目に当たる作品。うっかり3作目を先に読んでしまったのだが、それでも十分楽しめる作品だった。ちなみに柚月裕子さんの作品は、『盤上の向日葵』という作品もおすすめ。気がつけば、毎日将棋ゲームをやるようになっていた。

世の中、道の真ん中を行儀よう歩いていける奴らだけやない。真っ直ぐ歩いとるつもりでも、いつの間にか溝に足ィとられる者もおる。(角川文庫 p.134)

5. モモ:ミヒャエル・エンデ

 『さくら』に続いて、もう一度読み直したいと思った作品2つ目。昔読んだのが本当に物心つく前くらいだったので正直内容は全くといっていいほど覚えていなかった。今回改めて読んでみて、しみじみと名作だと感じた。いつの間にかお金と時間に振り回されてしまった今の資本主義時代に、是非とも読んでおくべきだと思った。

 話としては、人々から貯蓄と称して時間を奪おうとする「時間どろぼう」に対して、「モモ」という女の子が立ち向かっていく話。一見ファンタジーと見せかけて、読み終わると今の生き方でいいのか、ハッとさせられる作品。

 本作については、書きたいことが多すぎて自分の中でまだnoteあげる記事としてまとまってなく、近々完成させたいと思っている。そして次は『はてしない物語』を再読したい。エンデの世界観が、好きだ。コーヒー片手にじっくり世界観に浸りたくなる。

食べるものはたくさんもらったわ、大きすぎるほどね。でも、満足した気持ちには、一つもなれないの。(岩波 p.264)

6. 消滅世界:村田沙耶香

 ここ最近で、その物語における背景といい世界観といい、かなりの衝撃を受けた作品といっても過言ではない。ただ展開自体がかなりマニアックな感じなので、中には受け付けない人がいると思う。決してハッピーな終わりかたではないのです。

 フィクションと言いつつも、近い将来に作品の設定と同じように、恋人の関係と家族間での関係が全く別のものとして認識される未来が来るかもしれないと、ちょっと末恐ろしくなった作品。物語の展開の仕方でいうと、小川糸さんの『密やかな結晶』に雰囲気が近いかも。

私たちはいつだって途中なのだ。どの世界に自分が洗脳されていようと、その洗脳で誰かを裁く権利などない。(河出文庫 p.155)

***

 実用本とかビジネス本とかたまに読むことはあるけれど、やっぱり私自身は物語の世界にどっぷりつかることが好きなので、どうしても実用本とかだと読むペースが遅くなってしまう。

 来月はもう少し小説以外の作品を中心に読みたいと思いつつ、結局気がづけば小説の中の物語に引き込まれているんだろうな。おすすめの本があれば、是非教えて欲しいです。

■  今回ご紹介した作品一覧

(順不同)

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だいふくだるま
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