腐海の中をひたすら彷徨って
どちらかというと呟きにも近くなってしまうが、最近『風の谷のナウシカ』の漫画版を読んだ。その昔映画版は見たことがあったけれど、漫画版で読むことは初めてだった。かなりの分量で、漫画とはいえどものすごい時間を要した。読み終わった瞬間、肩からゆるゆると力が抜けた。
果てしない世界観だと思った。この世の中にはファンタジーと呼べる作品が有象無象で存在しているけど、『風の谷のナウシカ』の紡ぎ出す世界はただただひたすら深いと思った。うまく言葉にすることができない。たぶん1回だけ読んだだけでは全体の世界観を捉えることは難しいような気がする。いつか、もう一度読むことになるだろう。
もともと映画自体は、漫画で言うところの全7巻あるうちの2巻分の物語に対して多少脚色をつけたにとどまっている。漫画版は宮崎駿監督が悩みながら苦節12年かけて描き終えたものらしい。登場人物たちの内面とか、文明、宗教、いろんな要素が詰まっていた。
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みな自分だけは誤ちをしないと信じながら
業が業を生み悲しみが悲しみを作る輪から脱け出せない
世界の対立構造も漫画だとかなり複雑で、ひとえに正義と悪の二極構造になっていない。例えば戦争が起こるにしても、どちらか一方が悪いということではなくてさまざまな利害関係が絡んでいるし、もしかすると今日の敵は明日の友、なんてことも起こりうる。
人を死に追いやる腐海という存在があって、これは次第に人間の住処を奪っていく。でも本当は腐海自体が、人間世界を浄化するために生まれてきた。とても皮肉な結果。
見えている世界がすべて正しいなんて、どうして言えるんだろう。とにかく最後まで読んだ興奮が今日は拭なさそうだ。
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