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晴読雨読

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晴レノ日モ雨ノ日モ、私ハ本ヲ読ム
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#習慣にしていること

あたまの中の栞 - 皐月 -

 川の流れる音が聞こえてくる。澱みなく、スラスラと落ちていく、川上から川下へと緩やかに。私は水の流れる音が好きで、その感触を確かめたくてそっと手を伸ばしたのに、その冷たさに思わず条件反射的に手を引っ込めてしまう。何事も手を伸ばさないと、その感触はわからないと思った。  鯉のぼりがゆらゆらとたなびく姿を見たときに、彼らがそのまま川に落ちて力強く泳ぐ様を想像し、空を眺めると川の色と違わぬ蒼、時折流れる雲の姿に水が流れていく景色を思い浮かべた。この季節はとても空気が変わりやすく、

あたまの中の栞 - 卯月 -

 4月になってようやくポカポカとした陽気に包まれ、ほっと一息ついていました。新しい年度に入ったことで心機一転。ちょうど友人たちから誘われて、桜を見ながらお花見をしたり写真を撮りに行ったりして、割と充実していた気がします。世間ではすっかり自粛モードは解除され、たくさんの人たちで花見スポットは賑やかになっていました。  この季節は「読書の春」と言ってもいいくらい、何かやる気に満ち満ちていて、心なしかいつもよりも本を読めたような気がします。大切なのは量ではなく質で、自分の中できち

ありえないものたちの分解

 夜の虫の鳴き声は哀愁が漂っていて、漣が立つ。  近頃は少しずつだけど、人が密集しない場所で友人たちとご飯を食べにいくようになった。流石に東京は怖いので、大体は地元の友人たちと時間を共にする。久しぶりに会うと話が弾み、会わなかった期間が嘘ではないかと思ってしまう。  今年3月に見た映画のことが何故か頭にパッと思い浮かぶ。花束みたいな恋をした。終電を逃した男女が共に朝まで時間を過ごすことになり、お互いの好きなものを言い合うと恐ろしいほどにぴたりと一致する。  いやいや、こ

理想の世界には程遠い

<2021年9月21日執筆>  いくばくかの小さな星と、大きな月が宙に鎮座している。 *  中秋の名月って、毎年満月の日に重なるものだと思っていた。  それはとんでもない間違いで、必ずしも満月の日に当たるわけではないということを恥ずかしながら最近知った。今年は偶然にも、たまたま満月にあたるということでちょっと話題になっていた。宙空にぽっかりと浮かんだ欠けることのない完璧な月は鈍く光り輝き、その存在感を示している。  昔から月が好きだった。というより宇宙という概念自体

『星のように離れて雨のように散った』

<2021年9月15日執筆>  ちょうど金木犀の花が咲き始めて、どこからともなく高貴な香りが漂っている季節に私はこの文章を書いている。気がつけばあれほど忙しなく鳴いていた蝉の声も収まり、代わりに柔らかい草木の匂いが立っている。  この時期、中編小説を書いている真っ最中だったわけだが、不思議と片手間で本を読みたい熱が沸々と湧き起こり、新橋駅からほど近い本屋さんに立ち寄った。しばらくウロウロした後、ふと一冊の本を手にとる。──早朝の7時のことである。人の姿は、まばら。  本

ものを書くことについて

 今日はギリギリの曇り模様。ここずっと毎週のように雨だったのでなんだか外に出るのが億劫で大体家に引きこもっていた。ようやく外に出かけられそうだったのでいそいそと玄関から出てみる。どこからかミンミンと忙しない蝉の鳴き声がする。気だるい暑さの中で自転車を漕ぐと、風が気持ちよかった。  さてここ1週間ほど会社の新人さん向けにずっと研修をしていたお陰できちんと本が読めていなかったので、ここぞとばかりに本を読んだ。その中で今日読み終わったのが、松岡圭祐さんの『小説家になって億を稼ごう

いつだって心躍りたいではないか

 遠くから聞こえる雷鳴の音。気がついたらPCがプツンと切れて、それまで作業していたことがパァになり頭が真っ白になった。数秒後に再び電気が供給され始め、再び電源をつけると幸いなことに自動保存していた。危ない危ない。  とは言いつつも、そもそもの話雷が鳴ってる中で電化製品を使うことはすなわち故障のリスクを抱えていることがわかったため、今後はもう少し気をつけよう。油断大敵。 *  いつだって私はワクワクしながら生きていたい。仕事だってプライベートだって苦しいよりは楽しい方がい

愛すべきモナカアイス

 昨日の天気とは打って変わって、今日は本当に穏やかな1日だった。もうだんだん世は夏の季節へと移行して行っているらしい。ゴールデンウィーク2日目、今日はただひたすら本を読む日にしようと決めていた。とりあえず溜まっていた服をクリーニングに出して、今日までに支払わなければならない税金関連を処理し(すっかり忘れてた)、そのついでにコンビニでアイスを買った。  じわじわくる暑さに耐えきれなくなったのである。コンビニのショーウィンドウの中には様々なタイプのアイスが売られているが、なぜか

あたまの中の栞 -弥生-

 気がづけばあっという間に新しい年度が始まっていた。正直先月に自分が何をやっていたのかということをまったくもって思い出せない。引っ越しやら新たな仕事のタスクやら、やることが後から後から降って湧いてくる。自分の時間も確保できない。  …というのはきっと言い訳で、忙しさにかまけてサボっていただけです、ハイ。そうこうしているうちに、ハッと我に帰ると図書館への本の返却期間が過ぎていて、慌てて本を返しに行く羽目になった。  新しく引っ越した場所は、幸いにも図書館から10分もかからな

人との距離感の測り方

最近新たに読み始めた作家さんの一人に、柚木麻子さんという方がいる。もともとのきっかけは本屋大賞に選ばれた『本屋さんのダイアナ』という本だった。生まれも育ちも全く異なる二人の女の子が、一度はひょんなことから仲たがいをするも、最後お互いの存在の大切さに気付く、という流れである。 まず主人公の名前が大穴(ダイアナ)というところから衝撃的な入りである。そこからダイアナ自身の出生の秘密やもう一人の主人公である彩子の日々の生活における葛藤に至るまで、なんとも思春期特有の甘酸っぱい感じが