アイドルヲタクの矜持(生誕祭の思い出 1章)
アイドルヲタク。
10年以上前なら、蔑まれたこのワードも今では坂道グループの躍進や、ももクロやその他多くのアイドルの輝きによって、市民権を得られたように感じる。若い人の趣味のひとつとして「推し活」は勢力を伸ばしているんじゃないのかな、なんて。
ひょんなことから私自身もデビューして間もない乃木坂46のヲタクとなった。
とあるメンバーのヲタクとして自分なりにやり切った(?)こともあり、推していたメンバーが卒業をしてからもヲタ友とご飯にいったり、何かしらのやり取りが続いている。ありがたい限り。
ヲタクの友達は多岐に渡る。
年齢、性別は様々で若い世代のヲタ友の人生の岐路などにも立ち会うこともあり、人生の彩りが確実にトーンアップしました。
乃木坂46のヲタクをしていたころ、「生誕祭」というシステムに出会った。今ではアイドルに精通していない人でも、
「あぁアイドルの誕生日を祝うアレでしょw」
くらいには理解されているのかな、と。
しかしヲタクにとっては年に一度の大イベントである。
そんな生誕祭、というものの思い出をひとつ…。
生誕イベント(生誕祭)を行うにあたり、まず生誕委員会がメンバーごとに立ち上がる。
そこでは他のメンバー推しの友人などからもメッセージカードと呼ばれる祝いの言葉をしたためたカードを集める係、祝花をデザイン、発注する係、握手会やイベントとして生誕が開催される場合、そのレーンの装飾などを行う係、プレゼントを用意する係、ケーキを用意する係…とグループのレギュレーション次第ではあるが、多岐に渡って多くの人間が動くこととなる。
またお金もかかる。集金などを行う経理も選出される。
多くの人間がかかわることから、まとめ役が選出される。
それが「生誕委員長」。
この役職にはもっぱら「トップヲタ」と呼ばれる、ヲタクとして他者からも認められた人物が担うことが多かった。
(もちろんそうでない場合も多くある)
私も過去一度、生誕委員長に推挙された。
みんなから次はあなたです!と言われた時、正直に言えば嬉しい気持ちが70%。
ヲタクとして自分が同担(おなじメンバーを好きな人)から、ある一定期間において強いヲタクとして認められたのか!と嬉しくなったりもした。
ただ私はこの申し出を断りました。
その当時の皆さんからの推挙の言葉で満足してしまったこともあるけど、実際に仕事をしながらその重責を担うことは出来そうにないと思った事が大きかった。
そこで私は仲が良くて、皆が認める人が良いと評判のヲタクの友人Aさんにその任をお願いした。当初きっとAさんは嬉しかったと信じたい。
Aさんは我々の推し(●●と仮称)が、乃木坂46として開催した初めてのイベントで、先頭(鍵開け)した人物で、物腰も柔らかく、敵も少ない。年齢もそこまで若くもなく、ものすごいおじさんでもない。
みんなもAさんなら!とその場の全会一致で次の生誕委員は動き始めた。誕生日までは半年ある。色々な準備を話し合う。
楽しみ。推しは喜んでくれるかな?企画考えなきゃなー、なんて100%楽しみのみで頭の中が構成されていった。
アイドルヲタクのヒエラルキーの頂点は実生活にはない高揚感があるのかもしれない。
その景色は何かを満たしていく。
ということは反面では誰かの自尊心を傷つけている。
知らない間に。嫉妬。
ヲタクのプライドや執着心は私の普段の生活では見たことの無い類のもので、純粋さゆえの不気味さがあり取り扱い注意な感情だとは時折感じていた。
すると恐れていたことが。
いや恐れてなかった、想像すらしてなかったことが。
私が生誕委員長を固辞したことで、前年までそのメンバーの生誕委員長をやっていた方(Bさん)が
「あなたがやらないなら、やっぱり俺がやる」
と言い始めてしまった。
「あなたなら委員長を譲ってもいいと思っていたけど、彼(Aさん)ならNG」
と。
正直なにそれ?とは思ったし、周りは「ほっときましょ」「しょーもな」と言っていた。
ただBさんは私にヲタクとは何たるかみたいなことを教えてくれた人で、私は正直そこまで嫌いじゃなかった。
でも周りの評価は
「勝手な人」
というものは多かったのかもしれない。
でもまぁクセはあるかもしれないけど、そんなんお互い様だしなぁ、と。
しかし私の想いとは違って、若いヲタクや女性のヲタクからはどうも好かれていない。
その度合は思ってた以上だったんだな、と同時に理解した。
でもなんとなくそういうのを放っておけない性分で、まぁまぁまぁ…と間に入るような形になってしまった。
ここまではよくある話。意見が割れて生誕が2つになりそう。
よくあるんかい!ってなるけど、ホントによく聞く。
結局推しには自分がこんなことしたよ!って披露したくなっちゃうんだろうなぁ。まぁわからなくは無いんだけど。
でも生誕祭は本来推しのお祝いをするもので、そこにヲタクのプライドは不要。
だからなんとか一つでやれません?と言うのが私のスタンスで、Bさんには幾度となく打診したが彼の心は硬直していて、話を聞いてくれる隙は見せなかった。普通の話はしてくれたんだけど。
困ったな…
(続きます)