クラブ・マゼンタの話
■はじめに
どうも、だいふくです。
VRクラブワールド「クラブ・マゼンタ」を作ってオーナーになりました。
この記事では、どうしてマゼンタを作ったのか、そしてマゼンタはどんなワールドなのか、その辺の話をします。
■クラブ・マゼンタについて
・ワールドイメージ
サイバーパンク、街とクラブ、音と光とサムシング、シンクロ
・コンセプト
①五感のうちの2感覚(視覚・聴覚)だけではない、更なるシンクロ体験を
②ある程度ワールド側が自動的にいい感じにやってしてくれるクラブワールドを
・裏コンセプト
①最小限のマンパワーで最大限の威力を出せる箱
②DJサイドの、「音以外の要素」を全て加点式にする箱
■マゼンタに実装したもの
・topazchat for SDK3
・本日の主役LIVE機能(DJ Live Panel):DJブースでパフォーマンスしているDJのことは、街中のビルの電光掲示板で生中継されています。
・オーディオシンクウォール(AudioSyncWall):TopazChatを通して配信された音声をリアルタイムで解析して、壁が光ります。
・グルーヴハプティクスシステム(GrooveHapticsSystem):TopazChatを通して配信された音声の低域に連動して、お手元のコントローラが振動します。VRモード中のみ有効
■マゼンタの歩み
・2020年9月 SDK2版マゼンタ生誕(以後、旧マゼンタと呼称します)
・同月 MONDAY RELIEF(MR Loungeが出来る前)出演時にラウンジインスタンスとしてお披露目→挫折
・2020年後期〜2021年初頭 凍結期間
・2021年2月 SDK3版マゼンタとしてリブートを正式に決める
・2021年3月 グランドオープン
■何で作ったの?(旧マゼンタ)
綺麗でサイバーパンクなクラブワールドを作ってみたかったからです。
つまり、旧マゼンタはしっかりコンセプトを決めた訳ではなく、なんとなく自分のためだけに作ったワールドでした。
そのため、「広すぎるクラブエリアのワールド」「どぎついポスプロとライト軍団」「不便なスイッチ群」「普通に重い」などなど、様々な問題点がお披露目時に顔をのぞかせ、「来てくれる人が居てこそ」なクラブワールドの作者として大きな挫折を味わう事になりました。
しかし、この時でも「世界観は魅力的である」「シティエリアでDJブースを映すモニターの発想は良い」と褒めて頂ける点が多少なりに残っていたのは、マゼンタを必ずリブートさせてやるというモチベーションを持ち続けるにあたり、とても助かりました。
なお、旧マゼンタはアセットストアで買ったワールドをほぼそのままニコイチした状態でしたので、クラブエリアは現在のマゼンタとは大きく異なる見た目になっています。
逆にシティエリアの外観にはほとんど変更がありません。DJブースを映すモニター群やエントランスのデカ文字も旧マゼンタの時点で実装されていました。
■マゼンタ、リブート候補へ
マゼンタの制作を凍結してからは、VRDJとしての活動に比重を置いていたため、ほとんどワールド制作は行っておりませんでした。
そんな中、 SDK3ワールドについて試行錯誤を繰り返していた人々の中から、udonにまつわるある情報が耳に入ります。
「udonでもaudiosourceに対してgetSpectrumDataができるぞ」
SDK3ではオーディオのスペクトル情報をリアルタイム取得してアレコレできるということ、それはつまり、各ユーザーのローカル側でオーディオリアクティブな何かを動かせるという事です。
この機能を活用したギミックには、
・クラブワールドにおいて課題となっていた「音と視覚の時間差」をほぼゼロにできる
・グローバル同期させる必要がないので、負荷を各ローカル側に投げっぱなしにできる
というメリットが存在します。
これはクラブワールドに使える!と思うと同時に、「これをクラブワールドに使おうと考えている人は多いはずだ」とも考えていました。
しかし音に合わせて大胆な変化がワールドに加わる事には、そのワールドの世界観との相性によっては逆に違和感を出してしまうリスクがあります。
その点において、サイバーパンクというワールドイメージを持ち、すでにクソデカENTRANCEくんwith矢印が存在していたマゼンタは、相性が良いと考えました。
ここで唐突にリブートへの機運が高まるのですが、旧マゼンタの失敗を繰り返してはいけません。
ちゃんとコンセプトを考えて、納得出来て初めてマゼンタを作り直す必要がありました。
■コンセプトを考える
コンセプトを考えるにあたって、わたしが重視したことの一つに「そのコンセプトに則ってワールドをリリースした後、自身が無理せず維持できるか」がありました。
音楽系ワールドの多くには、フロアの視覚的ギミックを人力で操作する(MIDI機器などでの入力も含む)実装があり、そのための人員がパーティ中に操作を担当している、というケースがあります。
これは専属のスタッフが行なっていることもあれば、オーガナイザーやワールドオーナーが担当することもあります。
つまり、ワールドを作るだけでなく、イベント開催のたびにも、ある程度のマンパワーが必要になります。
良い箱・良いパーティとしての評価を築いているワールドの多くはそんな感じだったのですが、さてこれを自分がワールドオーナーになった場合に出来るかというと、多分私には出来ないしやったとしても続かないだろうと考えました。
というのも、私は社会人2年目で鬱休職寸前まで追い込まれてからは極端な面倒くさがり屋になってしまっており、面倒くさい事への耐久力が極端に弱いのです。
なので、始めたばかりの頃はやる気や熱意が面倒くささを上回っていても、それを続けるフェイズでやる気や熱意がある程度安定した頃に面倒くささを抑え切れなくなったらそこでおしまいになってしまいます。そうなると自分だけでなく、周りの人にも迷惑をかける事になってしまいます。
VRC音楽イベントカレンダーが続いているのは、ほぼ完全に運営を自動化出来たので面倒くささを感じなくなったためであるのは自分が一番よくわかっているわけで、クラブワールドを作る場合にも、継続運営に必要なマンパワーを削減できる仕組みを用意する事が必要でした。
あとせっかくだから来てくれた皆さんに挨拶したいし皆さんと乾杯したいしDJにいいぞいいぞーって突撃してハートの顔文字出して酒飲んではしゃぎたいじゃないですか自分のクラブで回して欲しい理想なメンバーにオファーかけたんだしs(以下略)
って考えた時、理想的だなと思ったのはBar羽休めさんとCLUB RUINSさんだったわけです。
少なくともこの2つのクラブはワールドオーナーがほぼフリーに動けるので、来客への挨拶やアテンドをしたり、オーディエンスとしてDJのプレイを楽しんだりすることが出来ていました。
私は自分のクラブでもはしゃいでいたかったので、羽休めさんやRUINSさんのように「パーティが始まってもワールドオーナーが基本的にフリーでいられる」という要素は必須だと考えました。
しかし人間というのは欲張りなもので、だからと言ってDJのプレイに合わせた動的な視覚ギミックも欲しいと思っちゃうわけです。
過去に作ったワールドであるeverlasting islandやYoiko Parkのように、ブースに視覚ギミックのスイッチを置いてDJに操作させるという形にするのもありでしたが、
私はあろうことか、そのスイッチを作ることを面倒くさがってしまいました。
インタラクト可能な範囲とか色々決めなきゃいけないしアニメーション設定とかも色々面倒だったんです……許して……
というわけで、マンパワーの高いクラブワールドが多くなってきたタイミングにおいて、DJもオーナーも基本的に何もしなくていいように、「ワールドが勝手に働いてくれる」仕組みを構築するようにしようと完全に怠惰を貪る方向へ舵を切ったのがマゼンタでした。
同時に、裏コンセプトである
①最小限のマンパワーで最大限の威力を出せる箱
②DJサイドの、「音以外の要素」を全て加点式にする箱
の2つも強く意識するようになりました。
■実装
さて、この強欲かつ面倒くさがりな餅の要望に対して、オーディオリアクティブなギミックは見事に合致していました。
オーディオに同期して勝手に動くので、ワールドオーナーもDJも特に操作する必要がなく、
・オーディエンスはギミックで刺激があり気持ちがいい
・DJはプレイにだけ集中していれば良く、勝手にギミックが動いてくれるから気持ちがいい
・ワールドオーナーは何もしなくていいので気持ちがいい
と、全員がwin-win-winな関係を築くことが出来ます。
かくして実装されたのがマゼンタの光る壁・オーディオシンクウォールと音響振動装置・グルーヴハプティクスシステムです。
壁については、どデカいスペアナは視覚情報として強いと考えたためあのような実装になりました。
よくDJ配信の際にスペクトラム連動系のVJソフト(VSXuなど)やOBS用のスペアナプラグインが使われることからも分かる通り、アナライザは音と視覚を結び付ける手段としてポピュラーです。
なので試しにどデカいのをクラブエリアの両横の壁に付けたところ、とても良かったのでそのまま本採用しました。
振動については、昔Rezとかプレイしてたし学生時代に作ったゲームでもBGMのテンポに同期した振動機能を取り入れたりとかしていたので、ここでも採用しました。
余談になりますが私は、アプローチする感覚を一つ増やすということは、得られる体験のクオリティ向上に大きく寄与できるものだと考えています。
古くはPS1のデュアルショックやNintendo64の振動パックから始まり、最近ではNintendo Switchに続いてPS5もHD振動(っぽいもの)を取り入れており、視覚聴覚に続いて振動による触覚へのアプローチはゲームにおいて長く用いられてきた手法でもありますので、採用するメリットは大きいと考えました(そしてその考えはグランドオープンパーティや『土曜日のマゼンタ』での反響で確信に変わるのでした)。
■つづく
面倒くさくなる前に続きを書けるようがんばります
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