大好きで大嫌い
「馬鹿じゃないの」
「なんですぐ忘れるの」
「なんで出来ないの」
機嫌が悪い時よく投げられる言葉。
母は楽しくて面白い人。
話してる内容がバカすぎて笑い合える。笑顔がステキで守りたくなる。息子のことが大好きで、今日息子と何があったか話してくれる。楽しそうに。笑うと目が細くなって「あっはっはっは」と典型的な笑い方。
そんな母からの言葉にはたまに傷つけられる。母自身が持っているストレスを投げつけられるように。冷たくて痛い。
何度も言い返そうと思った。
何度も自分の気持ちを伝えようと思った。
それは嫌だ
そんな事言わないで
って。
でも肝心なときに自分の口は動かない。
声が出ない。
涙しか出ない。
「なんでいつも泣いてばっかなの」
呆れられる。
言葉では上手く伝えられないから、中学の頃までは手紙にしていた。字なら伝えやすかった。
それでも
しっかりと伝わっていない気がする。
今でも笑い話のネタにされる。
仕事から帰ってきた母の機嫌が悪いと家の中の空気が一気に冷える。
何かあったのかな
何かいけないことしたかな
考えると吐きそうになる。
大っ嫌いだけど大好きな母だから
また笑い合いたくて
また一緒にご飯が食べたくて
また一緒にドラマが見たくて
嫌われたくなくて
今日も何も言い返せなかった。