見出し画像

あたたかな陽の光のように~高齢化した町を照らしたい

 日長台ファミリークリニックは、2022年10月に開設された、宏潤会5番目のサテライトクリニックです。愛知県の知多半島の真ん中あたりに位置し、少し先へいくと中部国際空港(セントレア)があり、もう少し先へ行くと名古屋エリアの人たちの手軽な“海”リゾートです。古くから発酵食品が有名で、お酢のミツカンや日本酒の盛田などは全国的にも有名。江戸時代は海上交通が発達し、知多のお酢がなければ江戸前寿司の発展もなかったとか。そんな知多の地で、地域医療に奮闘する松山孝昭医師に話を聞きました。(2024年9月25日配信)

運転免許を返納する高齢者が多い地域

イズミン 日長台ファミリークリニックの特徴について教えていただけますか。

マツヤマ ここは運転免許を返納した高齢者がとても多い住宅地の一角です。だから、どんなことでも、とりあえず相談できるようなか「かりつけ医」として頼りにしてもらえる診療所を目指しています。
 標榜が内科、外科、整形外科、泌尿器科なんですが、糖尿病や高血圧、脂質異常症(高脂血症)といった生活習慣病はもちろん、かかりつけ医として紹介していただくさまざまな疾患の患者さんの外来管理を行っています。
 近隣には外科系の医院が少ないこともあって、ケガをした患者さんや皮下腫瘍、いわゆるおできができたという患者さんや、静脈瘤などの患者さんに対しての小外科手術も行っています。

イズミン 静脈瘤の手術もこちらでやるんですか?

マツヤマ 静脈瘤の根治術である血管内焼灼術の適応がある場合は、機材や麻酔が必要なので、大同病院に行っていただいて、私が出向いて手術を行っています。
 他に整形外科としては、腰や膝、肩関節まわりの痛みがある患者さんも多く受診していただいており、ときに関節への注射なども行っています。
 また、泌尿器関連では頻尿や血尿で検診に引っかかった方のエコー検査などもやります。悪性腫瘍が疑われる患者さんや、精密検査が必要と思われた患者さんは、大同病院や西知多総合病院などへ紹介させていただいています。

ハットリ 本当に多彩ですね。

マツヤマ だから毎日いろいろな患者さんとお会いできるのが楽しみでもあり、自分でもさらに勉強しなきゃいかんと思うこともあって大変な面もありますが、とてもやりがいがあります。

イズミン 大同病院の外科に長くおられて、胸部だけじゃなくお腹とかさまざまな部位の疾患、治療に関わってこられたという強みもありそうですね。

マツヤマ 僕が大学時代には教授から「お腹にどんな臓器があるか、胸に何があるか、目をつぶっていても手探りでもわかって、何でもできるようにしっかり勉強しろ」と言われましたが、まさに30年以上外科医をやってきて、胸やお腹に関しては、自信を持って状況を判断できると自負しています。

ハットリ 日長台ファミリークリニックでは在宅医療にも力を入れているんですよね。

マツヤマ はい。訪問診療では地域の訪問看護ステーションさんと協力してやっています。基本的に月に2回程度、患者さんのご自宅へ診察に出向き、体調管理そして処方箋を書いたりします。
 対象になる患者さんは、脳疾患や脊髄疾患、整形疾患等で動けなくなったいわゆる廃用症候群といわれる寝たきりの方や、どうしても家族の関係で通院が困難な高齢者の方々です。また、大同病院をはじめ、地域の病院から紹介していただいたがん末期の患者さんも数多く診ています。緩和ケア病棟に入院される前の時期や、自宅で最期を迎える方も支援します。自宅でのお看取りを希望された患者さんに対しては、在宅での酸素療法や麻薬の皮下注射などでの苦痛のない最期を迎えていただけるよう努力をしております。

ハットリ なるほど、外来や訪問診療を含めて、先生が大切にしていることはどんなことですか。

マツヤマ そうですね。最初にお話したように、地域柄、老老介護のご夫婦や独居高齢の患者さん、またお子様がおられても昼間は1人になられるというご老人が多い地域です。予約が入っていても来院されないときはスタッフが電話をすると「忘れていたよ」と言う患者さんもいらっしゃいます。直接お声がけするなど、常に地域の患者さんのことを思って診療を行っています。日ごろの診療場面ではかかりつけ医としてしっかり訴えを聞いて、素早い対応が必要な疾患か、通院で経過観察できるかなどを慎重に判断して、信頼していただける医師をめざしています。

地域コミュニティの一員として

イズミン 運転免許証を返納された高齢者の方が多いということですが、この辺りでは皆さんどうやって移動されているんですか。

マツヤマ この団地の中の患者さんは歩いて来ていただけるんですけど、やはり歩ける距離でも、足腰が弱った方では娘・息子さんに送ってもらうために、娘・息子さんの都合優先になります。「次いつ来ますか?」と尋ねると「息子に聞かないと…」といった会話が結構あります。「隣近所のお友達に送ってもらったよ」といった患者さんも多いですね。

イズミン そうやってご家族の都合が悪ければ、地域の方も互助といいますか、隣近所の人が助け合うことができる地域なんですね。

マツヤマ そうですね。老人夫婦で車が無いということで、近所の比較的年齢の若い方に頼んで来てもらったりして、地域のみんなで助け合って通院していただいているのを実感します。

イズミン 日長台ファミリークリニックとしても、地域の町内の方たちとのコミュニケーションに力を入れていますね。

マツヤマ はい、地域のお祭りにちょっと協賛をさせてもらったりしながら、スタッフ共々、常に患者さんのことを考えて、それぞれの立場で自分の仕事を全うして日々の診療を行っています。

ハットリ 地域の方たち向けの健康講座を開催するんですよね。

マツヤマ はい、地域の皆さんにやはり健康寿命を長く過ごしていただくために、いろんな講義を考えております。医師からお話をしたり、宏潤会のリハビリスタッフがエクササイズをしたりすることを考えています。

※2024年10月5日には、初の健康講座を開催。100名以上の地域の方が集い、松山院長からは、近年の内視鏡手術の話、知っておくと役に立つキズやケガの処置の仕方などについてレクチャーした。また理学療法士による脳卒中予防のエクササイズも行った。


ゲスト紹介

松山孝昭(まつやま・たかあき)
日長台ファミリークリニック院長。
胸部外科医を志し、大学にて先天性心疾患の子どもの手術や、心臓弁膜症や冠動脈バイパス、肺がんなどの手術を修練後、大同病院に赴任。呼吸器・血管外科を中心に、胃がんや大腸がん、胆石、ヘルニア、肛門、そして乳がんなどの手術を手掛け、大同の外科を長年支えてきた。2022年10月の日長台ファミリークリニック開設と同時に院長就任。趣味はドライブや車いじり、「週末は車の手術だ!」とよく言われた。自宅の庭ではバラも育てる。


関連リンク