友達に教えたいリスクとお金の話(3-7)
さて、第3章は「まとめ」に入ります。各章の終わりには「復習クイズ」がありますので、ぜひやってみてください。
まとめ:リスクの「量」でリターンはほぼ決まる
これまでのポイントをまとめてみましょう。
1) 投資家の売買行動が期待リターンを調整する
■ 投資家が「これは確実に他より儲かる」と思って買いに行けば、買値がつり上がってその金融商品の期待リターンは下がる
■ 逆に「不確実性(リスク)が大きい」とより多くの人が売れば、これから買う人にとっての買値が下がってその金融商品の期待リターンは上がる
2) リターンはリスクのご褒美
■ リターンの不確実性が高い状態を「(期待)リスクが高い」という
■ リスクとはリターンの「ぶれ」「ばらつき」(数学的には標準偏差、SD)
■ リスクが高い投資対象は低いものより「嫌われる」から上記1)により、魅力的になるまで投資家がそっぽを向き、結果として期待リターンが高くなる
■ 例えば、株式全般は債券全般より期待リスクが高く、より期待リターンが高い
■ つまり「期待リスクと期待リターンには正の相関関係がある」「リターンはリスクのご褒美」と言える。
■ この関係は、事後的に見れば常に成り立つわけではない。リスクが高い以上、単年度(1年毎)や数年間のリターンはマイナスになる場合がある
■ 株式・債券といった伝統的な資産においては、10年以上の長期間で見れば「リターンはリスクのご褒美」という関係がおおむね成り立つ
3) 「確実にほかより儲かるもの」はないといえる。なくなるように投資家の行動が市場を調整している。(これを専門的な言葉で「裁定が働く」ともいう)。「確実」と「より儲かる」は二律背反だと覚えること。
4) 「リターンはリスクのご褒美」なので、より儲けようとすればとるリスクの量を増やすことが必須となる
5) 長期のリターンはとるリスクの量、つまり「どの資産にどれくらい投資するか」(資産配分)でほとんどが決まる
最後の5)については、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がX(旧ツイッター)で「長期的な運用においては短期的な市場の動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合を決めて長期間維持していく方が、効率的で良い結果をもたらすとされています」と繰り返し広報しています。
年金や生命保険会社などの機関投資家は「どの資産にどれくらいの割合で投資するか」という資産配分を決めると、数年単位の期間、それを動かさずに維持します。
これは「資産配分(アセット・アロケーション)」が資金運用において取るリスクの総量を決めることであり、リスクの量で期待リターンのおおよその方向性が決まると言っていいからです。
どうでしょう?
あなたはいままで「相場の予測に応じて、有利と思われる資産を機動的に買い付ける」短期的な売買が「プロの運用」だと思っていませんでしたか?「株式が上がると思う時に株式の投資割合を増やし、下がると思う時に減らすのがプロ」と思っていませんでしたか?
「リターンはリスクのご褒美」である以上、一定量のリスクをとってそれを根気よく維持しないと、ご褒美はもらえないのです。
この章ではあなたのいままでの常識と大きく違うことを学んだかもしれません。納得がいかない場合は、「コラム1」「コラム2」を含めて読み返してみてください。
それでもわからない、という場合、諦めるのは早すぎます。第4章ではさらに、一般の方が思う「資産運用」と本当の意味の「資産運用」の違いを解きほぐしていきます。
復習クイズ
Q1.投資によって得られる収益のことを「リターン」といいますが、その意味は?
A. 利息・配当などの利息収入
B. 投資開始時からの値上がり益(損の場合も含む)
C. 上記AとBを合わせたもの
Q2. 投資における「リスク」とは何でしょう?
A. リターンが時期によってばらつく度合い(リターンのブレ)
B. 損をする確率
C. 最悪の場合の損失額
Q3.「確実にほかより儲かる投資対象」とは?
A. 元本と利率が保証されている金融商品
B. 業績が上がる見込みが最近発表された企業の株式
C. ない(儲かる期待が高いほど儲かる確実性は少なくなるため)
(第4章に続く)