基礎のきそ:金融リテレシークイズ(9)投資の基礎を学ぼう(回答編)
こんにちは。日米の証券アナリスト資格をもつだいだいです。今回は計算問題を避けながら、投資の基礎である「リスクとリターン」について学んでいだけるような問題を用意してみました。回答は以下の通りです。
問11 生命保険会社や年金基金などが資金を「運用」する際に重視していることはなんだと思いますか?
A. 投資元本を絶対に減らさないこと
B. 投資対象資産と負債(将来の出費)までの年数を合わせること
C. 株式、債券、不動産、その他資産など、異なる資産を各々何%ずつ持つかの組み合わせ
D. 他の生保や年金の運用成績に勝つこと
答えは、BとCです。
まずBから解説しましょう。生保や年金においては、多くの加入者の資金を合同して運用しています。加入者がその資金を引き出して使うまでの期間(負債のデュレーションといいます)は、平均して数十年と非常に長い期間になります。生保が償還期限の長い超長期国債(20年、30年)の主な投資家であることも、ここから来ています。投資期間が長くなれば、途中の価格変動リスクをあまり気にせずにより期待リターンの高い投資対象を選ぶことができるので、負債のデュレーションを把握し、それに合った長さの投資対象を選ぶのが重要なのです。
Cを、資産配分(アセット・アロケーション)といいます。金融リテレシークイズの(7)問4を参照してください。投資において一番大事なのは異なる資産間の配分を適正に決めること。資産配分が投資期間の長さや流動性確保の必要性などによって左右されることはクイズの(8)で学びましたね。
参考までにGPIFと日生の資産配分をご紹介します。
日生のウェブサイトにはAML (Asset Liability Management)の言葉がありますが、これが上記の回答Bに当たります。
問12 個人の資産運用にとって重要なのはなんだと思いますか?複数選んで、重要と思う順に並べてください。
ヒント:前回の「その(8)」で学んだことを思い出してください。
A. いつでも現金化できる資産を一定金額持つこと
B. できるだけ高いリターン(利回り、値上益)を目指すこと
C. (投資期間の途中でも)投資元本を絶対に減らさないこと
D. 将来の出費までの年数に合った投資対象を選ぶこと
E. 性格の違う資産を組み合わせること
F. 成長性の高い株式や投資対象国に配分すること
G. 景気や金利の変化に応じてタイミングよく売買すること
答えは以下の3つです。重要な順番に並べています。
A. いつでも現金化できる資産を一定金額持つこと
D. 将来の出費までの年数に合った投資対象を選ぶこと
E. 性格の違う資産を組み合わせること
選ばなかった選択肢を見てみましょう。
B. リターンを最大化しようとすれば、自分の運用期間に合わないリスクをとってしまうことになりかねないので、Xです。
C.投資期間の途中でも元本を絶対に減らさないことを目指すと、リスク資産には一切投資できません。余剰資金が非常に多く、投資で増やす必要がないのであれば、それもありですが、リスクを適度にとらない場合は、支出を大幅に減らすなどの代替策が必要になります。
F.ポートフォリオのリターン(収益率)を一番大きく左右するのは資産配分(アセット・アロケーション)です。現時点での成長見通しに沿って投資対象国や銘柄を絞れば、むしろ分散投資が阻害されて長期的には有害です。
G. 前回のクイズ(8)で計算問題を実際やってみるとわかると思いますが、株式や債券といった資産は「一定期間投資を続ける」ことで投資成果が得られます。頻繁に売買しては、長期的なリターンが損なわれます。
問13 サラリーマンが投資を始める時にいちばん参考にすべきなのは?
A. 書店でよく売れている投資指南本、マネー雑誌
B. 銀行や証券会社の営業員のお薦め商品一覧
C. 信頼できる友人や知人のアドバイス
D. ツイッターなどSNSの情報(個人投資家のツイート)
E. 日経新聞などの経済紙
D. 勤務先が主催する「確定拠出年金セミナー」
答えは、Dです。
勤務先に確定拠出年金がある場合は、まず勉強会に出て、資産配分の仕方などについて勉強してから投資対象を決めましょう。ここで得られる知識は、確定拠出年金以外にも応用できるので、資料は手元に残し、何度も復習することです。下手なYouTubeなどを見るより、しっかりした基礎知識を繰り返し身につけるのがおすすめです。
選ばなかった選択肢について。A、B、C、Dは玉石混交で、質の悪いもの、自分に合っていないこともあるため、過信しないことが大事です。書店で売っているお金の本の中でも良質なものもありますが、「勉強していい銘柄を選ぶ」「タイミングよく売買」という趣旨のものは避けるのが無難です。繰り返しになりますが、頻繁な売買はむしろ有害です。
問14 「リターン(投資収益率)」と「リスク(リターンのばらつき)について、正しいものを選んでください。
(複数回答もOKです)
ヒント:必要条件イコール十分条件ではありません。中学の数学の問題を思い出したかな?
A. 期待(予想)リスクが大きい資産ほど期待できるリターンも大きい
B. 複数の株式に等金額投資をすれば、株式という資産への投資のリスクはある程度低減できる
C. 同じリターンが期待できる資産の組み合わせなら、期待リスクが小さい方が誰にも適切なポートフォリオである
D. 株式より商品投資の方がリスクが大きいので、20年投資ができるなら余裕資金をすべて商品に振り向けるべきだ
E. 同じ期待リスクで期待リターンのより高い資産・商品が存在すれば、価格で調整されて期待リターンは同程度になる
正解はCとEです。
以下、間違いやすい選択肢を混ぜてみました。
Aは間違い。リスクが大きければリターンが大きいとは言えません。しかし期待リターンが大きいものは、それに比してリスク(リターンのブレ)も大きいのが通常です。
Bは間違い。複数の株式に分散投資をすれば、固有の銘柄に関するリスク(
非システマティック・リスク)は低減できますが、株式という資産のリスク(システマティック・リスク)は低減できません。
D.も間違いです。リスクが大きいからといってリターンが大きいわけではありません。さらに商品は株式と違って長期の成長性(本質的なもの)がないので、過去の成績が良くても長期的な投資に向いているとはいえません。
問15 ある資産A、B、Cの過去のリターンを分析したところ、以下のような相関があることがわかりました。あなたは期待リターンの高いAを中心にポートフォリオを作るつもりですが、BとCのどちらを選んで組み合わせますか?
(BかCのいずれかしか選べない場合とします。相関係数はプラスで相関が強い、マイナスで逆相関とします。)
資産Bの資産Aとの相関係数は+0.7
資産Cの資産Aとの相関係数は-0.1
答えは、資産Cです。
期待リターンの高いAという資産は、期待リスクも相当高いと思わねばなりません。ポートフォリオを構築する際に気を付けるのは、全体でリスク(リターンのブレ)を減らして平準化することです。BとCのいずれかしか選べないとしたら、Aと程度の逆相関であるCを選び、Aのリターンがマイナスに転じた時に、そのマイナスを少しでも低減することが適切な判断でしょう。なお、実際には、機関投資家は3-4種類以上の資産を組み合わせたポートフォリオを作ります。
いかがでしたか?今回初めて知る言葉も出てきたと思います。引き続き次回も、投資の基礎について学んでいきましょう。(続く)