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クリスの物語Ⅳ #44 導かれし運命
ランチを食べ終えたときには、午後2時を過ぎていた。
『さて、本題に入ろうか』
ダイニングテーブルからソファへ移り、デザートのシャーベットを食べながらハーディがいった。
ハーディは甘いものが好きなのか、食後には必ずデザートが出される。
『車でも話したように、どこまで地下遺跡は続いているのかわからないけど、ホロロムルスの電波が広範囲にブロックされていることから考えても、闇の勢力は現在、地下遺跡に本拠地を構えていると考えて間違いないと思う。それに、ダニエーレが入っていた組織のボスは、間違いなく闇の勢力の人間だったしね』
ハーディの話に、なるほどと納得するようにマーティスはうなずいた。
『そうなると地下遺跡を捜索したいところですが、なにぶんホロロムルスの電磁波が遮断されてしまっていますから、どうなっているのか探ることもできませんね。そもそも、ホロロムルスには地下遺跡のデータもありませんし』
そういうと、マーティスは全員のホロロムルスにローマの地図を表示させた。
『ここが、先ほどのアパートですね』
地下遺跡に通じるアパートに、マーティスは赤く点滅する現在地のマークをセットした。
『お二人のお話ですと、そこから地下へ入って北の方角にトンネルを20mほど進むと通りに出て・・・その通りを西へまっすぐ4、50mほど進んだところをまた北へ直進ですね』
そういいながら、マーティスは赤く点滅する現在地を移動させていった。
『となると、ダニエーレさんの属していた組織のアジトは大体この辺りになるでしょうか』
地図上では、真四角のひときわ大きな建物の上で現在地が点滅している。その建物には、大型のショップが入っているようだ。
マーティスは、宙をにらみながら頬杖をついて考え込んでいた。きっと、ホロロムルス上の地図を見つめているのだろう。
現在の地上の街と見比べることで、もしかしたら闇の勢力が地下の拠点をどの辺りに置いているか何か関連性が見出せるかもしれないと考えたようだ。
しかし、どう見ても関係はなさそうだった。昔と今とでは、街の造りがまったく違うのだから当然のことだ。
「そういえば、地下遺跡で見てきた街並みが、ファロスの時代の都の街並みとそっくりだったんだ」
ぼくは、さっき地下遺跡で目にした光景とファロスの時代の記憶の街並みとがあまりに似通っていたことを思い出して、沙奈ちゃんに話した。
「でも真っ暗だったし、あの時代はどこも似たような街並みだっただろうから、ただ似ているっていうだけのことだと思うけど」
そんな話をしていると、『いや、待って』とハーディがいった。
『もしかしたら、本当にそうかもしれないよ』
ハーディは、真剣な眼差しでぼくを見つめた。
『だから、君たちがこの地へ呼ばれたのかもしれない』
『いや、でもその街では馬で行ける距離に大きなピラミッドがあったんだ。だから、イタリアなんかじゃないはずだよ』
そう否定すると、ハーディは首を振った。
『知らないかもしれないけど、古代ローマ時代、イタリアにもピラミッドはいくつもあったんだよ。ほとんどが壊されて、現在はひとつしか残っていないけどね』
ぼくは沙奈ちゃんと顔を見合わせた。
『ローマ帝国はエジプトを統治していた時代もあるけど、エジプト文明から感銘を受けて多様な文化を真似ていたんだよ。ピラミッドもそのひとつさ』
組んでいた足を外すと、ハーディは身を乗り出した。
『だから、あの地下遺跡が前世でクリスが過ごした街だっていう可能性は十分あるよ』
そういわれると、そんなような気がしてきた。
あのファロスの時代の記憶から始まって、ぼくはこうして呼ばれて戻ってきたのだろうか。地下遺跡の街を見て、懐かしい感情が芽生えたのもそのためだろうか。
あのときに救えなかった沙奈ちゃんが今隣にいて、あの時代にぼくを翻弄した闇の勢力を今こうして駆逐しようとしている。たしかに偶然とは思えない。
「運命だったんだね。全部が、きっと」
感慨深そうに、沙奈ちゃんがいった。
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