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クリスの物語Ⅳ #38 秘密の通路
ダニエーレたちのアジトは、アパートの地下にあった。
そのアパートは、やはり昨日ホロロムルスの信号が途切れた路地に建ち並ぶ内の一軒だった。
運転手はハーディの指示に従って、一方通行の路地に路上駐車している車の列に4WDを割り込ませた。そしてぼくたちは、アパートに入っていくダニエーレの後を、車中からホロロムルスで追った。
4階建ての古いアパートは、真ん中の階段を挟んで左右に2つずつ部屋が並んでいた。その1階の左端の部屋に、ダニエーレは入っていった。
玄関を入ると3畳ほどのキッチンがあり、左手にはバスとトイレがある。
キッチンのシンクには食器が乱雑に積まれ、脇に置かれた小さな冷蔵庫とその上に乗った電子レンジは、どちらも古く汚れがこびりついていた。タイル張りの床も真っ黒で、所狭しとごみ袋が積まれている。
ダニエーレがさらに奥へ進むと、カバーがボロボロに破けてスポンジがむき出しになったソファに、ひとりの少年が座っていた。
少年はソファにふんぞり返って、テレビを見ながらタバコをふかしている。
マルコ・リッチ。16歳。財布を盗んだ少年だ。
パーマのかかった黒髪をツーブロックに刈り上げ、彫りの深い顔立ちをしたマルコは、年齢よりも大人っぽく見えた。
「おう。遅かったな。じゃあ、行くか」
ダニエーレに気づくと、マルコは吸い殻でいっぱいになった灰皿にタバコをねじ込んだ。
テーブルの上は、他にごみや空き缶で埋め尽くされていた。
マルコは立ち上がって、奥の部屋に入っていった。その後にダニエーレが続き、ホロロムルスの視点がさらにその後を追った。
奥の部屋は、6畳ほどの寝室だった。壁際には古びた大きめのベッドが置かれ、ベッドの上には脱ぎ散らかした服が積まれていた。床にも、服や靴が散乱している。
その寝室の左手にある大きなクローゼットを、マルコが開けた。
クローゼットには、シャツやジャケットが掛けられていた。
その床に、床下収納の扉のような正方形にかたどられた蓋が置いてあった。
マルコがその蓋をどけると、そこには地下へと下りる梯子が下がっていた。
手慣れた様子でマルコが梯子を下り、続いてダニエーレが蓋を閉めてから梯子を下りた。
中は真っ暗で、地面に下り立つと二人はすぐさまケータイのライトを点けた。
二人が先へ進むと、その後を追いかけるホロロムルスの視点が突然真っ暗になった。
二人のケータイのライトが切られたのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
『接続が途絶えたようです』と、ホロロムルスを操作していたマーティスがいった。不思議そうに首をひねっている。
『地下だから通じない、なんてことは・・・』と沙奈ちゃんがいいかけると、当然そんなことはないというようにマーティスは首を振った。
『通じないものは仕方ない。行ってみるしかないね』
ハーディはそういって、ぼくに向かってうなずいた。
予定では、ダニエーレがアジトに行って沙奈ちゃんから奪った物があることと、他に仲間がいないかなど状況を確認してから、ぼくたちが乗り込んで奪い返す作戦だった。
そして魔法を駆使してボスやマルコを追い払い、ダニエーレはぼくたちに拉致されて行方不明になってしまったことにする。
ハーディが考えた筋書きは、ざっとそんな感じだ。
どちらにしても、最初から乗り込むことにはなっていた。ただ、現場の状況がわからないというだけだ。
ぼくは、ハーディにうなずき返した。覚悟はできている。
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