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クリスの物語Ⅳ #62 マザーシップ
『すごーい!あれが、かつて地表世界にいたという恐竜ね』
目の前の広大な草原を優雅に歩くブラキオサウルスの群れを指差して、クレアがはしゃいでいる。エンダやベベも、興奮した様子で飛び回っている。
『ベベ!あんまり遠くへ行っちゃダメだよ!』とぼくがベベに注意すれば、『もう。エンダも勝手にいなくなったりしないで』と桜井さんもエンダを叱った。
草原には他にトリケラトプスやステゴサウルスもいるし、空にはプテラノドンのような翼竜も飛んでいる。
見渡す限り、あちこちに絶滅したはずの恐竜や動物がいた。
それだけじゃなく、ドラゴンやペガサス、ユニコーンやグリフォンなどの幻獣と呼ばれる生物も、ここには共存している。
前方には小高い山がそびえ、川も流れ、湖もある。一方、最新鋭の設備を備えた巨大な建物がそこかしこにあり、地下にはたくさんの人が生活する街がある。
そんなここは一体どこなのかというと、地球からは3万光年ほど離れた宇宙空間に浮遊する銀河連邦のマザーシップの中だ。
まさか宇宙船の中にこんな風景が広がっているなんて、想像もしていなかった。
その大きさは、地球の次元で表現するならオーストラリアくらいの面積は優にあるということだった。
そんな超巨大なマザーシップに、ぼくたちは闇の勢力との死闘の後、銀河連邦によって連れてこられた。
ぼくたちを迎えに来てくれたのは、太陽系地球担当のアラミスという女性だ。ハーディがいつもコンタクトを取っている人で、マーティスをかくまい、指示を出していたチームのひとりだ。
ザルナバンとの戦いを終え、クリスタルエレメントを回収して本拠地を後にしたぼくたちを、アダマスカルのような宇宙船で地下遺跡の広場まで迎えに来てくれた。
疲れ切っていたぼくたちは、倒れ込むようにその宇宙船に乗り込み、マルゲリウムで回復させてもらった。
アラミスの話によると、今回迎えに来た目的は、クリスタルエレメントを銀河連邦にて保管するためだそうだ。
地球はあまりにも闇の勢力に魅入られているので、アセンションの儀式を行えるときが来るまで、クリスタルエレメントを特別に銀河連邦で保管していいという許可がこの度宇宙連盟から下りたのだそうだ。
本来であればどこかの惑星で起きた問題は、その惑星内で解決する必要がある。そのため、惑星内の人間を通じて間接的な手助けはできたとしても、このような直接的な手出しはできないことになっている。
しかし、今回の戦いで地球を牛耳っていた闇の勢力ザルナバンの上層部を駆逐したことで、地球は自らの力で闇を葬り光へと進む選択をしたことが宇宙でも完全に認められたらしい。
『当然、その立役者となったあなた方がいたからこそです』と、アラミスはぼくたちの頑張りをねぎらってくれた。
でも、それも宇宙的な観点から見ると、地球が光への道を選択したことによって采配されたのだそうだ。
地球は今後、選ばれし十三人の神官によってアセンションがなされることになる。そのため、残った闇の勢力たちは地球を去ることを余儀なくされる。それにより、地球は次第に闇の勢力の手には届かない惑星になっていくという。
しかし、アセンションを前に闇の勢力の別組織が諦めきれずにまた狙ってくる可能性もあるので、油断はできない。
その懸念を宇宙連盟に訴えたところ、今回の特別措置が講じられることになったのだとアラミスは話した。
そういうことならアラミスがクリスタルエレメントを預かって持って帰ってくれればいいと思うのだけど、銀河連邦としては、地球を闇の勢力から救い出したぼくたちを是非一度もてなしたいということだった。
そんなわけで、今ぼくたちはクリスタルエレメントを手に、銀河連邦のマザーシップへとやってきていた。
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