クリモノ4タイトル入

クリスの物語Ⅳ #45 偶然の一致

『仮にもしそうだとした場合、本拠地を置くとしたらクリスだったらどこだと思う?』

 ぼくたちがしみじみと物思いにふけっていると、ふとハーディが聞いた。
 ぼくは我に返って、聞き返した。
『その時代の、街のどこに置くかっていうことだよね?』
 ハーディはうなずいた。

 あの時代の街で本拠地となる建物といえば、やっぱりあのシンデレラ城を思わせるようなお城だろう。
 お城がある場所は、現在の街でいったらどの辺りだろうか?
 地図を見ながら、ぼくは考えた。

 お城は、たしかイビージャと出会った市場のもっと奥の方だった。
 市場がこの辺だとすると、そこからまっすぐ上の方だから、ええと・・・この広場のちょうど終わりくらいかな?
 ホロロムルスに3Dで表示された地図を目で追いかけていて、はっとした。
 ちょうどお城がありそうなところに、あの教会が建っていたのだ。昨日、ぼくとベベが田川先生らしき女性を追いかけていって、おじさんに捕まりそうになった教会だ。

『ここは・・・』
 ハーディが驚くようにいった。どうやら、みんなぼくの視点にピントを合わせているようだ。
 みんなが一様に驚く中、沙奈ちゃんだけはすまし顔で「やっぱり思った通りだ」とぼそっとつぶやいた。

『ということは、この教会にももしかしたら地下遺跡への入り口があるのかもしれませんね』
 地図に表示された教会を見つめたまま、マーティスがいった。
「でもそうなるとやっぱり、クリス君はあのとき田川先生におびき出されたっていうことになるのかな?」
 桜井さんが首をかしげた。
「たぶんそうだよ。絶対クリスに気づいていて、クリスだったら追いかけてくると思ってたんだよ。田川先生のやりそうなこと」
 口を尖らせて、憎らしそうに沙奈ちゃんがいった。
「でも、それじゃあやっぱりぼくたちの存在は闇の勢力にもうとっくにばれているってことになるよね?」
 ぼくの問いに「そうだと思うけど?」と、沙奈ちゃんはいった。

『そうなると、闇の勢力はクリスタルエレメントをすり替えたことを、銀河連邦がすでに気づいてるって思っているんじゃないですか?』
 マーティスは、腕を組んだまま首をひねった。
『もし本当にクリスさんがおびき出されたということであれば、その可能性はありますね』
『そうなったら、早い段階で消滅の儀式をしようとするんじゃないですか?』

 マーティスは、口元を押さえて黙り込んだ。
 それから『確かに、その可能性はあります』と、ぽつりといった。
『しかし、そのタガワという女性も、我々の存在に気づいたからといってわざわざ本拠地のある場所へおびき出すようなことをするでしょうか?下手したら、このように我々に本拠地の場所が気づかれることになりかねません』
 腑に落ちない、という様子でマーティスはいった。

『それじゃあ、本拠地は違う場所にあるということですか?』
 桜井さんが尋ねると、マーティスは首を振った。
『いえ、それはわかりません。クリスさんの仮説を信じるとするなら、そこが本拠地である可能性も高いとは思います』
『クリスの話が信じられないっていうことですか?』
 ぼくをかばうように沙奈ちゃんが抗議すると、マーティスは何度も首を振った。

『そういうわけではありません。いいですか?今話していることは、あくまですべてが仮説でしかありません。
 ダニエーレの属していた犯罪グループのボスが闇の勢力だということもそうですし、地下遺跡が、クリスさんが過去世で過ごした街であるということも仮説です。
 そしてその場合、本拠地はどこに置くだろうかということもその仮説を前提としていますし、クリスさんがタガワという闇の勢力の人間におびき出されたということについても。すべてが仮説でしかないのです』
 少し興奮した様子で、マーティスは話した。
 それから冷静さを取り戻すと、マーティスは『すみません』と謝った。

『いえ、私も私たちの存在がすでに闇の勢力にばれていると信じたくはないのです。そして、ホロロムルスがつながらないために、本拠地の状況を把握できないことの焦りから、つい否定する気持ちが強くなってしまいました』

 うなだれるマーティスを『仕方ないさ』といって、ハーディが慰めた。

『マーティスが信じたくない気持ちもわかるよ。やっぱり、こっちが優勢に進められていると思いたいからね。地球の運命が懸かっているわけだし。
 でもそんなときだからこそ、冷静になって直感とシンクロニシティに従って行動すべきだろう?』
 ハーディの言葉に、マーティスは反省するように深くうなずいた。



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Daichi.M
お読みいただき、ありがとうございます! 拙い文章ですが、お楽しみいただけたら幸いです。 これからもどうぞよろしくお願いします!