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クリスの物語Ⅱ #91 目覚め

 体にどんどん力がみなぎってくるのを感じた。

 目を開けると、暗闇の中でぼくは横になっていた。
 ここはどこだろう?

 起き上がろうとすると、覆っていたカバーが開いて周囲が明るくなった。
 どうやら、マルゲリウムの中に入っていたようだ。

 体を起こした。
 そこは白で統一された部屋で、マルゲリウムの他にラプーモとポルタールも完備されていた。大きなベッドと、それに4人掛けのクテイラもある。
 まるでどこかのホテルのスイートルームみたいだ。

 ぼくは、起き上がってマルゲリウムから降りた。マルゲリウムのおかげで、すっかり元気を取り戻していた。
 でも、ここがどこなのかがわからなかった。

 窓の外がやけに騒がしい。

 窓辺に近づくと、右手の扉が自動的に開いた。
 そこから、海底人と思しき、すらっと背の高い女性が入ってきた。

『ご気分はいかがですか?』
 一礼すると、女性はぼくに微笑みかけた。

『あ、はい。気分はいいです』
 誰だかわからず戸惑いながらも、頭を下げてぼくは返事をした。

『あの、ここはどこですか?』
 今置かれている状況が、まったくわからなかった。

『こちらはポセイドーンです』
 そう答えて、女性はまた微笑んだ。

『皆様がお待ちです。こちらへどうぞ』
 部屋を出て、女性が先導した。

 幅が広く長い廊下を、女性の後について進んだ。
 廊下の中央まで進むと、左手の部屋を女性が指し示した。それから扉の脇によけて、頭を下げたまま扉に触れた。
 その仕草は、なんだか旅館の女将みたいだった。

 扉が開くと、椅子やソファに腰かけていたみんながいっせいにぼくを見た。

『クリス!』
 真っ先にベベが飛んできた。みんなも嬉しそうにぼくのところへやってきた。

「大丈夫?」
 沙奈ちゃんが心配そうにぼくを見た。瞳からは、今にも涙が溢れ出そうだ。

『マルゲリウムであれだけ寝たから大丈夫でしょ』
 すまし顔のクレアがいった。
 クレアも元気そうだった。顔や体の傷跡もすっかりなくなっている。

 エランドラやラマル、マーティスにアルメイオンもいた。
 みんなの顔を見回して、笑顔でぼくはうなずいた。

『アクアはどうなったの?』
 はっと、思い出してみんなに聞いた。
 すると、みんなうしろを振り返った。視線の先には、ガイオンがいる。玉座に腰かけたガイオンの手には、アクアが握られている。

 なんでガイオンが・・・?
 奪われてしまったのだろうか。

 ガイオンが立ち上がってこっちへ向かってきた。

『クリス。ご苦労だった』
 正面に立って、ガイオンがいった。
 目の前に立ったガイオンは、大きさが優にぼくの倍はあった。

『君の勇敢さには恐れ入ったよ』
 片膝をついて、ガイオンがぼくにアクアを寄越した。
 それを受け取ったぼくは、どういうことなのか状況がつかめずにクレアを見た。
 クレアは肩をすくめた。



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Daichi.M
お読みいただき、ありがとうございます! 拙い文章ですが、お楽しみいただけたら幸いです。 これからもどうぞよろしくお願いします!