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クリスの物語Ⅳ #49 助っ人
『なんでクレアがここにいるの?』
振り返ると、沙奈ちゃんが尋ねた。驚きながらも、なんだかちょっと嬉しそうだ。
『そりゃあ、わたしたちがいなかったらやっぱり不安でしょう?』
クレアは腕を組んで、得意そうに答えた。
クレアのうしろには、エランドラとラマルもいる。二人とも人の姿にシェイプシフトしている。
『そうじゃなくて、なんでここを知ってるの?だって、このことはクレアたちにも秘密にしてあったんですよね?』
沙奈ちゃんがマーティスに確認すると、マーティスは『そのはずです』といってうなずいた。
『ああ、それはね。ロズウェル先生からいわれたんだ。行って、クリスたちの力になってあげるようにって。銀河連邦の人間だって名乗る女の人が、突然ロズウェル先生のところにやってきて、わたしたちにそう伝えるようにいわれたって先生いってた。場所も教えてくれたって』
ぼくたちは、一斉にマーティスを見た。マーティスは、心当たりがないというように首をかしげた。
『ところで、何が起きてるの?先生も、大変なことに巻き込まれているらしいというだけで、詳しい内容までは知らなかったんだ』
クレアは興味津々といった様子で、ぼくたちの顔を見回した。マーティスはやむを得ないというようにうなずくと、現状を手短に説明した。
クリスタルエレメントがすり替えられ、しかも地底世界にその手引きをしたスパイがいるという話を聞いて、クレアは目を丸くした。
それから、犯人は誰だろうかと推理を始めた。
『まさかソレーテなわけないし、ネイゲルでもなさそうだし、テイゲンあたりだったりするのかな?それか、全然関係ない管轄の人間っていうこともあり得るよね?』
腕を組んでブツブツつぶやくクレアを尻目に、ぼくたちはハーディにエランドラやラマルのことを紹介した。
クレアの推理が気が済んだところで、クレアにもハーディを紹介した。
いずれにしても、クレアやラマル、それにエランドラまで来てくれてだいぶ心強い。ぼくたちの顔に、自然と笑みがこぼれた。
『でもエランドラ、その姿で大丈夫なの?』
地表世界では、人の姿にシェイプシフトするのはきついと以前いっていた。
『ええ。この中は大丈夫よ。地下ということもあるし、それに強力なバリアーが張られているようだから、わたしたちの体への3次元的影響が少ないの』
エランドラは笑顔で答えた。
張られているバリアーには、ホロロムルスが通じないというマイナスの要素はあるけど、エランドラたちのような存在にとってはかえってプラスな効果があるようだ。
『ところで、この人どうしますか?』
倒れて気を失っているボスを指差して、桜井さんが聞いた。
『そうだね。いっそのこと、記憶をすべて消してしまおうか』
ボスのそばへ歩み寄って、ハーディがいった。
「トート・メモーレフェクティオ」
指先をボスの頭に向けてカンターメルを唱えると、ハーディはボスの脇に転がっている黒い杖を拾った。そして両手でそれをへし折り、魔法で燃やしてしまった。
それから、横になって身動きできずにいる少年たちのところへ移動した。
少年たちは、何をされるのかと怯えた様子で、皆青ざめている。
『インペローモがかけられているからそれを解いておかないと、また誰かが人操(じんそう)のカンターメルを使ったら反応しちゃうよ』
少年たちを縛り上げた魔法をハーディが解こうとすると、クレアがいった。
『そうだったね。その解き方は知っているかな?』
ハーディが振り返ると、クレアは『ううん、知らない』と首を振った。
『ロズウェル先生なら知ってると思うけど』
『そうか。まあ仕方ない。そうしたら、ひとまず眠ってもらおう』
そういって、ハーディは一人ひとり眠らせた。
それから縛り上げていた魔法を解いて、ここ数日間分の記憶とボスに関する記憶を全員から消し去った。
『これで目が覚めたら、ボスも彼らもお互いに見知らぬ人同士になっているさ』
ハーディは振り返ると、クレアに向かってウィンクした。クレアは怪訝な顔をして首をひねった。
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