クリモノ4タイトル入

クリスの物語Ⅳ #59 黒幕

『やっぱり、あなただったのね。黒幕は』
 ソレーテと向かい合うと、田川先生はいった。
『もしや、お前がアルタシア・・・?』
『あら、よく知っているわね。わたしの情報は抹消されているはずだけど?』

 ソレーテは、ふっと笑った。

『やはりそうか。かつてアルタシアという名を聞いたときに、気になってはいたのだ。知っている気がするが、思い出せない。それに、情報も一切出てこない。となれば、意図して情報を抹消された人間ではないかとね。銀河連邦の任務を受けて、諜報活動をしていたということか。つまり、以前は中央部の人間だったということだな?』

 田川先生は、笑ってうなずいた。

『ええ、そうよ。それも、わたしはあなたの直属の部下だったわ』
 田川先生がそう答えると、ソレーテは眉をぴくりと動かした。

 一体、この二人は何を話しているのだろうか?
 ソレーテが黒幕ってどういう意味だろう?田川先生がアルタシア?
 アルタシアは、たしか存在しないとソレーテがいっていたはずだ。

 二人が話し合っている隙に、沙奈ちゃんがエランドラとラマルに治癒魔法を施した。ホルスは、いつの間にか姿を消している。

『でもなぜサタンを操って、同士であるはずの皇帝たちを葬ってしまったの?』
 田川先生が質問すると、ソレーテは意外そうな顔をした。
『ザルナバンに潜入していたというのに、わからないか?我々闇の勢力の中でも、ザルナバンはあまりに愚かで欲深い。
 地球をこれまで統治させてはきたが、自分たちの私欲を満たすことに囚われすぎて本来の目的がおざなりになってしまった。おかげで今回、クリスタルエレメント入手においても、後手後手に回ってしまった。私が手を回さなければ、地球は今頃アセンションされてしまっていただろう。
 だからこの度、ザルナバンは地球と共に消滅してもらうことになったのだ』

 ソレーテの話を聞いて、クレアがぼくに『どういうこと?』と聞いてきた。
『我々闇の勢力って、ソレーテいったよね?もしかして、ソレーテって闇の勢力なの?』
『うん。なんだかそうみたいだね』
 クレアがにわかに理解できないのも、無理はない。ぼくにも信じられなかった。それに、状況がよくわからない。
 つまり、田川先生が実はアルタシアで、銀河連邦の命令でスパイとしてザルナバンに潜入していただけで、実際にはアルタシアは銀河連邦の人間、さらにいうと、元々はセテオス中央部の人間だったということだろうか?

『なるほどね。だからあなたは、ザルナバンが一度ウェントゥスを入手したというのに、まだウェントゥスを入手できていないパラレルワールドへ選ばれし者たちを移行させるよう銀河連邦に依頼したのね』
 納得がいったように、田川先生はうなずいた。

『そうだ。恐らくザルナバンは、居心地の良い地球にずっと居座るつもりでいたのだろう。だから、最初からクリスタルエレメントをすべて入手しようとはせず、ひとつだけでも入手すればいいという浅はかな考えを持っていた。
 全部入手してしまえば上の命令に従って地球を消滅させざるを得ないが、ひとつだけに留めておけば、残りの4つを手に入れるまでしばらくまだ地球に居座り続けることができるからな。愚かなことだ』

 呆れるように、ソレーテは首を振った。

『だから、中央部に潜入していたネイゲルが、クリスタルエレメントをすり替えざるを得ない状況を作るために、一度すべてのクリスタルエレメントを選ばれし者たちに入手させる必要があった。
 それで、ザルナバンがウェントゥスを入手できていないパラレルワールドへ、選ばれし者たちを移行させるように仕向けたのだ』

『なるほど。あなたがそんな依頼をすれば、あなたが闇の勢力であるという疑いの目も銀河連邦から逸らすことができるし、一石二鳥だったというわけね。そしてここでザルナバンを抹殺して、ネイゲルがすり替えたクリスタルエレメントをあなたがすべて持ち帰るつもりだったのね』
『まあ、そうだ。まさかお前がザルナバンに潜伏する銀河連邦の手先だったというのは、誤算だったが』
 剣を杖のように突き立て、ソレーテは口の端を吊り上げて笑った。



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Daichi.M
お読みいただき、ありがとうございます! 拙い文章ですが、お楽しみいただけたら幸いです。 これからもどうぞよろしくお願いします!