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クリスの物語Ⅳ #70 初めての友達
『そう。それなら、きっとあなたは選ばれし者なのね』
話を聞き終えると、圧倒されるようにアルタシアはいった。
『だったら、わたしも養生校へ行ったところであなたのようにはなれないわね』
『まあ、そうね』
イビージャは、安心した。もしアルタシアが学校へ来たら、誰よりも魔法が優れているともてはやされていた自分の立場が危ぶまれる。そう思ったからだ。
自分の方が優れているのは間違いない。なぜなら、自分は選ばれし者だから。でも、アルタシアの魔法の腕前は確かだった。
『でも、あなたの魔法もなかなかのものよ。だから、何も別に学校へ来て学ぶ必要なんてないと思うわ。わたしが保証する』
『本当?』
『うん。知りたいことがあればわたしが教えてあげるし』
『やった!ありがとう』
アルタシアは、素直に喜んだ。家族以外の人に褒められたことも嬉しかったし、同年代の女友達ができたことも嬉しかった。
それから、二人は仲良しになった。
イビージャは、アルタシアに魔法の基礎だけじゃなく、学校で習ったあらゆることを教えた。
実際、イビージャは学校ではずば抜けて優秀だった。だから、基礎的なことを教えるほどの能力は、すでに身についていた。
そして、アルタシアの知らないことを教えることに、イビージャは何ともいえない優越感を覚えた。
アルタシアも勉強熱心だったので、疑問に思うことは何でも質問した。それに答えられないことは何としても避けたいイビージャも、必死になって勉強した。
そのため、必然的にイビージャの能力も飛躍的に上がっていった。
さらに、イビージャの知らない魔法をアルタシアが披露すれば、イビージャはその技を盗んで密かに修練した。
それによって、養生校では生徒や教師からもイビージャはより一層もてはやされるようになった。
そのように切磋琢磨して、二人は養生校の教師になれる程の実力をあっという間に身に着けた。
それからしばらくして、二人は守護ドラゴンと契約を交わす機会を得た。アルタシアの父親がどこかから入手してきた守護獣の卵のうち、二つの卵がある日アルタシアとイビージャの手によってそれぞれ孵ったのだ。
アルタシアはサンダードラゴン、イビージャはアイスドラゴンだった。
その後ドラゴン飛翔ができるようになると、二人はドラゴンの石調達の仕事を始めるようになった。
地底都市の各地を二人で一緒に巡っては、あらゆるドラゴンの石を手に入れるのだ。
その間、イビージャは仕事で依頼された石以外にも、密かに伝説の黒いドラゴンの石を探して回った。
しかし、やはりそれはなかなか見つかるものでもなかった。
最初はイビージャも黒いドラゴンの石を見つけることに本気だったが、いつしかそれもどうでもよくなっていった。
それより、アルタシアと二人でこうして仕事をすることをとても楽しく感じていた。
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