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クリスの物語Ⅳ #71 劣等感
ある日、そんな二人のもとへセテオス中央部の人間が訪ねてきた。中央部で仕事をしないか、というヘッドハンティングだった。
願ってもいないことだった。いつかはセテオスに移り住んで中央部の仕事がしたいと、二人でよく話をしていたのだ。二人は、中央部からの申し出を二つ返事で引き受けた。
中央部では、二人は別々の部署に所属することとなった。それぞれの適性を判断され、アルタシアは情報統制局へ、イビージャは監視局へと配属が決まった。
アルタシアの情報統制局での仕事は、主に図書館に収められている宇宙のデータの整合性を確認するというものだった。
膨大なデータがある中、ズレが生じた場合にはそれを調整していき、ネットワークにアクセスがあれば、誰が何を調べているかについてまで調査した。
膨大なデータを前に気が遠くなるような仕事だったが、銀河連邦や銀河系の他文明の存在とも交流できるし、広大な宇宙の奥深さや神秘さについても触れることができて、アルタシアはとても魅力的な仕事だと感じていた。
それに、直属の上司ソレーテは、とても優しく優秀だった。細かなことまで詳しく教えてくれるし、やるべきことを細かく指示してくれた。
失敗しても怒ることなく、優しくフォローしてくれた。そんな恵まれた環境で、アルタシアは充実した日々を過ごしていた。
一方、イビージャは監視局で退屈な日々を過ごしていた。
中央部で飼育、調教されたドラゴンに乗って、来る日も来る日もセテオスを訪問する人々をチェックしては、あいさつして回った。
闇の勢力が侵入することもあるから、中央部の監視が行き渡っていることを知らしめるための牽制だと、上司のネイゲルから説明があった。
でも正直あまり効果があるとは思えなかったし、何より退屈だった。こんなことなら、アルタシアとドラゴンの石調達の仕事をしていた方がずっと良かった。
ある日、そのことをアルタシアに打ち明けると、アルタシアは今の仕事を続けたいといった。とても充実している、と。
それに、これまで知らなかったけど宇宙では闇の勢力がかなり暗躍していて、いずれ地球も闇の勢力に消滅させられるかもしれない危機的状況にある。
だから二人で一緒に地球を闇の勢力から救い出そう、とアルタシアは熱く語った。
そのためにも、お互い今の仕事で知識と経験を積んでおこう。でも、もし今の部署が耐えられないなら、部署の異動をわたしからもかけ合ってみるとアルタシアはいった。
イビージャは、その申し出を断った。
なんだか仕事をする動機や心構えからして、アルタシアと自分とはまるで違っていた。部署異動をしても、そんな高尚な考えを持って仕事に取り組める自信がなかった。
イビージャは、卑屈になっていた。自分は、自分なりに何とか仕事を楽しもう。それで続けられなくなったら、ホーソモスに戻って養生校で教師でもしよう。
それからは、イビージャは監視局の仕事をしながら男漁りをするようになった。別に仕事をさぼるわけでもないから、誰かに文句をいわれる筋合いもない。
気に入った男がいれば、観光案内と称して仕事の合間にデートをした。
アルタシアほどじゃないにしても美貌には自信があったし、実際にイビージャはモテた。いつしか、複数の男と関係を持つようになった。
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