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クリスの物語Ⅱ #39 空飛ぶベベ
『はい、これで完成です』
ベベも採寸し終えると、ペテラは立ち上がった。
すると、ペテラと同じような姿をした人がひとり、奥から出てきた。
両手には、折りたたんだ布を載せている。
それらの布をペテラに渡すと、ぼくたちに一礼をしてその人はまた奥に引っ込んでしまった。
『はい、こちらです』
ペテラは受け取った布を、ぼくたちに寄越した。
『え?これは?』
キラキラと光沢のある布を両手に載せて、ぼくと沙奈ちゃんは顔を見合わせた。
これから作るピューラの生地をチェックしろ、ということだろうか。
『お二人に仕立てたお召し物です』
にっこりと笑ってペテラはいった。
『え、もう?』
まさか、と思い手渡された布を広げてみた。
広げてみると、それはたしかに長袖の上着と長ズボンだった。
キラキラと光るピューラというその服は、光の加減によって金色にも銀色にも見えた。
襟や袖の部分に少し編みこみがあるだけで、すごくシンプルなデザインだ。
沙奈ちゃんが広げたピューラは、袖の長いワンピースになっていた。
色合いはぼくのものよりももっと白に近くて、キラキラと七色に光っている。
ちょうど、エランドラが着ているのと同じようなデザインだった。
『それと、こちらがあなたのお召し物ですよ』
ペテラはしゃがみ込むと『着せてあげましょう』といって、ベベに仕立てたピューラを着せ始めた。
ベベのピューラには、背中に6枚の翼がついていた。
『この翼は、クレアさんのものを真似て作りました』
ベベにピューラを着せ終えると、立ち上がってペテラはいった。
『あれ?なんだか体が軽い』
ピューラを着せられたベベは、そういって走り回った。
すると、突然ふわりとベベの体が宙に浮かんだ。
『わ!飛んだ!』
ベベの叫ぶ声が頭に響いた。
少し飛んで着地すると、ベベはまた走って飛び上がった。
今度は、さっきよりも長く飛行した。背中の羽もパタパタと動いている。
『だんだんコツがわかってきた!』
楽しいといいながら、ベベは何度も飛行した。
それを、ぼくも沙奈ちゃんもしばらくぽかんと眺めていた。
『それでは、お二人も着替えてはいかがでしょう?』
ぼくたちの方に笑顔を向けて、ペテラがいった。
『あ、はい』
『それでは、こちらへどうぞ』
ペテラは手で奥の方を示して、スーっと床を滑るように進み出した。
ぼくと沙奈ちゃんは、黙って後に従った。
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