臨床実習  ~臨床家の視点~


 こんにちは大地です。今年は新型コロナウイルスで世界中が大変な状況にありますね。PT学生にとっては臨床実習の中止が大変なことの一つとして当てはまるのではないでしょうか。今年は臨床実習を経験できずに国家試験を受けるという学生も出てくるかもしれません。過去にない状況になっていますが文句ばかり言っても仕方がないので、この状況でもやれることをみつけないといけないですね。

 今回は臨床実習でしか学べない事・それ以外でも学べる事についてお話したいと思います。臨床実習を受けられない状況での勉強に活かしていただきたいと思います。

*私は病院勤務で入院患者さんを対象で働いているので多少の偏りがあることをご承知おきください。

 臨床実習で(体験&)学んでほしい ~代替可能~

 

診療以外の仕事

 理学療法士になると診療だけではなくカルテ記載やカンファレンスへの参加・書類業務も行います。どのような仕事があるかは調べれば分かりますがカルテ記載の方法(SOAPなど)やカンファレンスでの注意点(報告会にならないようになど)書類作成時の注意点(専門用語の使い方など)は実際の場面をみないとイメージしにくい物が多いでしょう。臨床実習=患者さんへの介入時のイメージが強いと思いますが『仕事』として捉えるとそれだけではありません。

他職種とのやりとり

 診療場面では理学療法士と患者さんが1対1で関わりますが、患者さんの健康・生活を考えると診療だけでは不十分で、多職種連携が不可欠です。他の職種の方がどのような視点でどのような考えで患者さんを捉えているのか、様々な職種の人がどのようにコミュニケーションをとって医療を展開しているかは実際の現場をみるのが一番です。

 しかし、もうひとつ大事なことは”各職場の社会的な役割(急性期・回復期など含め)や各職場の運営方法”によって他職種連携の質が変わることを知ることです。経験した実習地のやり方がすべてだと信じてしまうとむしろマイナスになる可能性もあります。

効果判定

 時系列で患者さんをみられることは臨床実習のメリットのひとつです。特に入院患者さんをみる場合は一日一日、時間ごとの変化を感じられるでしょう。特に『自分が関わった結果このように変わった』というのは理学療法士として働くうえで最もやりがいを感じることなので是非実感してもらいたいと思います。

 しかし、患者さんの変化を知るうえで注意してもらいたいこととして①患者さんの疾患によっては”自然治癒”の影響をうけること②学生自身の技術が安定していないため結果や治療自体の再現性が低く「変化」を正しく知れていない可能性があること、などです。臨床実習では特に②に注意が必要かもしれません。

挨拶や法令順守

 学生ではなく社会人としての振舞い。医療職はそれが出来ていない人も多い!?

 これらは実習する際は是非とも意識して考えてほしいことですが、必ずしも臨書実習でなければできない事ではありません。インターネットが普及した現代では個人で得られる情報が増えています。また、これらを踏まえていれば周囲の先生にも具体的な情報やアドバイスを受けられると思います。


臨床実習でしか学べない事~代替困難~


機能障害に触れる

 骨の変形や異常筋緊張など実際に機能障害を有する方をの体を動かす際に感じる感覚や力の入れ具合は実際の患者さんがいないと体験が難しいと思います。また、障害を有する方の介助をその方の特性に合わせて行うことも難しいでしょう。

患者さんとのコミュニケーション

 医療の知識が無い方に”検査をする”ことは案外難しいようです。学生同士で練習する場合はお互いにやりたいことを理解していますし、専門用語も通じますが実際の相手は患者さんです。”患者さんを相手にすると上手くいかない”という学生を多く見てきました。臨床現場では失語症、注意障害、認知症など、コミュニケーション自体が難しい患者さんにもしばしば遭遇します。このような方とのコミュニケーションは臨床場面以外では設けにくいと思います。


臨床で学ぶ必要がないもの


 参考書や文献を読んで分かるもの

 表現の通りです。臨床でなくても学べることは臨床実習の期間中に学ぶ必要はありません。しかし、『知らない事で後の体験をするうえで不利益が生じる』『臨床実習中に試したい内容である』などの状況は多々あります。


バイザーへの忖度

 学生の忖度を必要とする時点で大したバイザーじゃありません。


まとめ

 臨床実習は『障害を持つ患者さんに直接触れる』ことが最大のメリットです。そこを介さないものは必ずしも臨床実習で学ぶ必要はないと思います。

 臨床実習は理学療法の資格を取るためには避けて通れない分野です。臨床実習を体験する方はより効率的に、体験できない方は上記を参考に工夫して学習を進めていただきたいと思います。

 新型コロナウイルスに負けず、それぞれ頑張りましょう。