漂着ゴミ問題を楽しく正しく伝える「O2lab(海漂実験室)」
澎湖(ポンフー)の中心地である馬公市街地から車で30分ほどの「湖西」エリア。
その東端にある「龍門(ロンメン)」村には、漂着ゴミでアート作品を製作しているアトリエ「O2lab(海漂実験室)」があります。
澎湖は、海と砂浜が美しいリゾートアイランドとして知られていますが、その陰には拾っても拾っても無くならない漂着ゴミの問題があります。
美しい島なのにもったいない…。
そう思ってビーチクリーン活動を始めたのが、O2labの唐唐(タンタン)さんです。
O2labに一歩入ると、そこには元々はゴミだったとは信じられないくらい可愛らしくてユニークなアート作品がぎっしり。
これらのアート作品は、購入することもできますがDIY体験で作ることも可能です。
DIYといえば、あらかじめ材料が用意されているのが普通ですが、O2labでならガチの漂着ゴミアート作りも体験できます。
ガチ体験の場合、まずは強風が吹き荒ぶ砂浜へ! そこには目を覆いたくなるようなゴミがあります…。
全部拾っていたらキリがない上に分別が大変なので、ビーチクリーンをする時は「ペットボトルだけ」や「浮き玉だけ」などのように対象を決めるのが一般的ですが、拾い始めると面白いものがあったりするのでついつい他のものも拾ってしまいます。
ですが、こうした活動の良いところは、余計なものを拾っても結果的に海がきれいになるということ。
後で「これ要らないや!」と思ったとしても「ゴミを拾って海をキレイにした」ことには変わらないというわけ。
ビーチクリーンの後は、半分に切られた細長い浮き球に絵を描いたりとお手伝いをしました。
唐唐さんが長年活動してきたのは、北東からの季節風が大量の漂着ゴミを運んでくる龍門のビーチでしたが、今は彼女の努力の甲斐もあって定期的にビーチクリーン活動が行われるようになりました。
そのおかげで、今では龍門ビーチは比較的ゴミの少ない場所になっています。
また、ビーチと道路の間に適切な高さのネットを立てることで風の力だけでゴミが集まるように工夫されており、アナログながらもビーチクリーンの先進事例であると言えます。
O2labの作品は、今では澎湖の様々な場所に展示されるようになり、公共施設だけでなく高級ホテルでも見かけるようになりました。
高級ホテルに漂着ゴミが飾られているなんて、すごいと思いませんか?
漂着ゴミは外から流れてくるものなので、澎湖の人々だけではどうにもなりません。
ですが、漂着ゴミの被害を受けている地域だからこそ、誰もが触れられる形でその問題を周知していくことが、解決のための第一歩なのだと教えられます。
それは、唯一の原爆被爆国である日本が、原爆を無くすために声を上げるのと通ずるものがあるのかもしれません。
実際、ぼくたちは唐唐さんの影響を受けて、澎湖に来てからはできるだけゴミを出さない生活を意識するようになりました。
O2labは、唐唐さんが澎湖に滞在中で、ビーチクリーンに行っていない間は見学が可能です。もしO2labのドアが空いていたらぜひ見学してみてください。
不在時はビーチクリーン中と立て札が出されるのですが、なんだか宮沢賢治の「下ノ畑ニ居リマス」を思い出させます。
ちなみにぼくが今まで拾ったなかで1番印象に残っているのは、オーストラリアの離島のトレッキングをしている時にヤシの実を見つけて飲んでみたら中身が腐ってて悶絶したという出来事です。