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ペンを握れない僕が絵を描く方法と、そこに至った経緯
こんにちは!2025年、新しい年を迎えました。杉本大地です。
きまぐれで書いているこのnoteですが、今回は以前からずっと発信したかった「僕が絵を描く方法」と「そこに至る経緯」についてお話しします。
では早速みていただきたいのが、去年の年末に投稿したこちら。
今年の2月頃から友達と週1くらいのペースでやってる、
— Daichi Sugimoto🏵️3D Artist (@daichiandbon) December 23, 2024
ChatGPTがくれるお題をもとにしたお絵かき会で描いた絵たち。
毎回反省があるので、ちょびっとずつ成長できた気がする👍3Dもやろうかな pic.twitter.com/7mPhrupHhV
2024年2月からほぼ毎週末、友達とDiscord で電話しながら
Chat GPT がくれるお題をもとに1時間(+α)お絵かきをする会をやっていました。毎週と言いつつ、たまに休んだりもあったので計30枚。
こうやって並べてみると(自分で言うのも難ですが)壮観だな~と思います。
で、今までもXでちょいちょい言ってはいるのですが、
これらの絵、すべてマウスで描いています。
マウスで描く理由はとても単純で、僕がSMAという筋力が弱くなる病気で
ペンを握って何かをかくことが難しいからです。
(SMAについて詳しくはこちら↓)
今回の記事では、僕がどうしてマウスで絵を描くことに至ったのか、時系列に沿ってお話したうえで、今実際にどういう環境でお絵かきをしているのか、お伝えできればと思います。
この記事を読んで「へ~そうやって描いてるんだ」「やり方って1つじゃないんだな~」と思っていただければ嬉しいです!
(最後、環境説明の部分のみ記事を有料化しています。無料部分のみでも十分お伝えしたいことは書き切っていますが、ぼくの現状の描き方が具体的に気になる方は、こちらご購入いただけるとありがたいです…!おまけ動画つき!)
ペンを握れなくなった経緯
最初からちょっぴり裏切るようですが、僕は以前は問題なくペンを握れていて、絵も描いていました。
ただ描いていたと言ってもお絵かき遊びの程度で、小学生の時は無地の自由帳に、中学生の時は小さい生徒手帳のメモページに、好きなアニメや仮面ライダーなどの落書きをしていたぐらいです。
先ほどのSMAの記事にも書きましたが、子供の頃から何か表現することがすきで、障害がある身体の中でできる最大限のそれが「お絵描き」だったんだと思います。
そんな中で状況が変わってきたのが、高校生ぐらいの時でした。
SMAの進行によってだんだん指先の筋力が落ちてきて、ペンを握って何かを書くという行為が少しずつ難しくなってきました。
学生なので、そんな状況で困るのは絵が描けないことよりも、
授業のノートテイクや日々の勉強なわけですが、短期記憶は良い方なので、テストなどはそれらで補っていたと思います。(もちろんテスト時間を延ばしてもらうなど適切な配慮はしていただいてました。)
そういった状況、体の変化にともなって、ペンを握って絵を描くという時間が自分の中で少しずつ減っていきました。
いま思えば、絵を描くということは多分ずっと好きだったけど、実際自分ができない状況で好きでいつづけることは難しく、無意識に自分のやりたいことの中から除外していった気がします。
丁度その時にハマり出したのが、パソコンを使った表現でした。
自分が中高生の時はちょうどYouTube が盛り上がり始めていた時期で、親から譲り受けたデジカメで撮ったもので動画編集のマネごとをし始めたり、図形の組み合わせで絵を描けるソフトでキャラクターを描いたり、ほとばしる創作欲はそこで発散していました。
その流れで出会ったのが、今の仕事でもある3DCGです。
3DCGで学んだこと
高校1年生の時に母親が「テストで全教科80点以上取ったらMacBook Air を買ってあげる」と言われたのが始まりでした。
それまで家のWindowsパソコンでムービーメーカーなどを使って作っていた動画ですが、そんな僕を見かねてか、母親がそんな提案をしてくれました。
とにかくMacBook Airが欲しかったので、自分なりにテスト勉強を頑張ったとは思うのですが、たしか何教科はその点数に満たなかった覚えがあります。(基準も80点以上だったかは曖昧です。)
でも、おそらく母親なりに「この子には可能性を広げるデジタルデバイスが必要だ」と思ったんだと思います。ある初夏の夜、表参道のアップルストアに妹と僕と母の3人で行って、結局、当時最新のMacBook Airを買ってくれました。
MacBook Air を手に入れてから、放課後はもうずっとそれに向き合って何かを作ってた記憶があります。
はじめのうちは動画編集や図形の組み合わせでイラストを描いていたりしましたが、高校3年生の夏に3DCGに手を付けました。
最初は、編集する動画をより豪華にするためにおまけ程度にはじめた3DCGですが、その可能性に僕はどんどん魅了されていきました。
僕と3DCGとの歩みは、4年前(!)に書いたこのノート↓↓で詳しく書いているのでよければご覧ください。
以下、この記事でお伝えしたいのは、3DCGを使うことで得られる空間認識能力などのスキルのお話です。
2D のイラストと3DCGの大きな違いは、その名前に現れてる通り
次元の数の違いです。
2D のイラストは縦と横、2つの次元でできる「平面」上に何かを描くことで成立します。
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紙の上に絵を描くように、パソコンを使った2Dイラストも、ただそれがデジタル上でできるというだけのことです。
一方で3DCGは、縦と横に加えて、奥行きという新しい次元が加わります。
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これは現実の世界と同じ3次元の空間で、2Dイラストを描くのとはまたちょっと違うスキルが要求されます。
基本的に近くの物は大きく、遠くのものは小さく、遠近感がついた見た目になるので、2Dのモニターを見ただけで
それがなんとなく予測できる空間認識能力が大切になってきます。
そしてこの空間認識能力が2D のイラストを描く上でも重要になるのです。
絵のタッチにもよりますが、この空間認識能力に基づいた立体感の表現は、描くものの存在感を高めるという意味で、イラストのスキルとして求められるものの1つです。
「絵が上手くなるには3DCGを始めるべき」とは言いませんが、結果論として、僕は3DCGを通ったことで、この空間認識能力がある程度鍛えられました。
(多分一般的には鉛筆デッサンなどでトレーニングするものだと思います)
また、これとは別の、2Dイラストと3DCGの違いとして
3DCGは、あとから微調整することを前提としている(傾向がある)
というものがあると思います。
2Dイラストの手法もいろいろありますが、最も単純なのが線で書くという手法です。
当たり前のことですが、一度線を描いたら、消しゴムで消さない限り、その線はその形で残り続けます。
そしてその線が描きたいものの形を捉える「正解」の線じゃなければ、その線をいくら増やしていったところで、絵は思ったとおりに描けません。
もちろん薄く何度も描いて「正解」の線をさぐったり、消しゴムで消して「正解」するまで繰り返し描き直すことはできますが、とくに絵を始めたばかりの初心者はそこまで意識が向かず、「正解」じゃない線で絵を描き進めてしまいます。(そもそも空間認識能力がたりないと「正解」の線もわからないと思います。)
一方で3DCGは、多くの場面であとから微調整することを前提としています。
例えば立方体を空間上に出したとき、「もうちょっと縦長にしたいな」と思えば、
対応する数値を調整したり、スケールツールで縦に引っ張れば、その形にできます。
一度の動きで希望通りのものを作り出せないのである意味手間ではありますが、逆に初心者にとっては「正解」を探りながらものをつくっていけるので、大きなメリットになります。
このように3DCGは、微調整を繰り返しながら完成まで漕ぎ着けることを、その作り方本来の性格として持ち合わせています。
これは2Dイラストと大きく異なる特徴で、とくにいままでたくさん絵を描いて来なかった人にとっては、3DCGのほうがとっつきやすいと感じる理由の1つになっていると僕は思います。
(あくまで単純化した傾向の話であり、2Dイラストでも微調整はたくさん必要になることは留意してください。)
話が長くなりましたが、ぼくはそんな3DCGを続けたことで、2Dイラストでも必要な審美眼や画作りのセンスが鍛えられ、結果、絵としての「正解」を自分の中につくりだすことができたんだと思います。
マウスで線を描く
3DCGを学び始めてから3~4年ぐらいで、主に SNS やクラウドソーシングサイトを通して、お仕事をいただけるようになりました。
その後、大学卒業後にフリーランスとして開業し、3DCGの制作を主とした個人アーティストとして活動を始めました。
お仕事の内容は基本的に3DCGを使ったものであり、クライアントから直接コンセプトのデザインなどを求められた時も、はじめのうちは、0からいきなり3DCGで作り始めていました。
ただそれだとよくも悪くも3DCGっぽい作風になってしまい、自分の中での表現の限界を感じていました。
3DCGに取り掛かる前段階のアイデア出しのフェーズでは、コスパよくデザインを検証できる2Dスケッチが必要と考えました。その時に、改めて「ちゃんと2Dで絵が描けるようになりたい」と思い始めたわけです。
もうすでにその時点でペンを握って何かを書くということは
身体的にほぼ不可能になっていたので、必然的にマウスで描くという選択に至ります。
「マウス手描き」をはじめた当初は、3DCGで培った空間認識能力や審美眼があるとはいえ(いや、逆にあるからこそ理想との乖離が大きかった…)やっぱり最初のうちは思い通りの絵が描けず、半分挫折に近い状態が続きました。
それでも「描きたい!」という気持ちが強く、いろいろと工夫することで、描き方が少しずつ上達していくのを感じました。
「マウス手描き」をはじめて6~7年経つ現在は
基本的に全てのパソコン操作を左手で行っています。
(だいぶ恥ずかしいですが、以前とあるお仕事で自分のPC 環境を撮ってもらったので、ご覧ください)
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SMAに伴う姿勢の問題で、利き手である右手より、左手の方が大きく動かすことができるので、
左手でマウスをホールドし、細かく動かせるように右手は左手に添えておく、という形が自分の中でのベストポジションになっています。
ちなみに、マウスが操作できるのに、ペンでかけない理由を説明するのであれば、
マウスが2次元の操作+クリックのみで動かせるのに対して、
ペンは紙の上で無段階に上下する3次元の操作を求められるからです。
筋力の少ない僕にとっては、この3次元の操作が非常に難しい…
あとマウスは設定でカーソルがどれぐらいの距離動くか簡単に調整できるので、文字通り(デスクトップ上で)手の届く範囲を拡張することが可能です。
マウスを開発した人、マジ神。
こうして描いたものが僕が日々X や Instagram に載せている 2Dイラストです。多分ペンで描く人よりは少し時間がかかっていると思いますが、それでも2倍とまではいかないぐらいだと思います。(時間短縮の工夫もいろいろあります!)
ちょうど自分がある程度満足に「マウス手描き」をできるようになったとき(それでも約5年前!)の比較があるので見ていただけると嬉しいです。
どっちもマウスで描いた絵
— Daichi Sugimoto🏵️3D Artist (@daichiandbon) January 29, 2020
2017 → 2019
#画力ビフォーアフター pic.twitter.com/sKAQik5Imu
ビフォーの方は図形の組み合わせで描いたものです。
やっぱり「手描き」の方が温かみがあるというか、タッチを感じられて、僕は好きです。
絵を描きつづけるということ
ここまで長々と書いてきましたが、僕の2Dイラストは自分でもまだまだ満足できるクオリティには全然達してないし、解決すべき問題が山積みだと感じる日々です。
でも僕は、いまXやInstagramなどで素敵な絵を見る度に「自分もこんな絵が描けるようになりたい!」という思いが溢れてきて、絵を描くことをやめられずにいます。足りてない部分も「のびしろ」として前向きに捉えられます。
結局一番のポイントはこの気持ちです。
「こうしたい!」という強い思いがあれば、何事も諦めずいろいろやっているうちに、自分なりの道を見つけていくものなのかな~と思います。
以下有料記事では、僕がマウスで絵を描くために工夫しているあれこれについて具体的に解説していきます。
一応企業秘密(笑)になるので有料にしてみました。
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