神作「First Love 初恋」は色に注目すると100倍おもしろい。というか、注目してほしい。感想・考察。
大島大地(@s4metan)です。2022年11月に配信されたNetflixの話題作「First Love 初恋」をやっと見ました。
世間的にも話題なのは知っていましたが「流行り物は一旦静観してしまう癖(わるいクセ)」で、2ヶ月弱遅れでの視聴。ドンピシャの宇多田ヒカル世代でもない(現在27歳)ので「宇多田ヒカルの名曲をドラマ化!」というコピーにもピンときていませんでした。
ただふと見るきっかけがあり、軽い気持ちで見始めました!
「2週間くらいかけてゆっくり見よ笑」と思った結果…
1月7日夜〜1月8日昼で見終わった!!!(3連休がつぶれた)
正直なめてました。というか、途中で見るのをやめると、自分のメンタルがもたない。
はやく続きをみて、也英と晴道を救わないと俺がの精神がちぎれると思ったので。止まったら死ぬマグロの気持ちで、一気見してしまいました。
物語自体の完成度は言うまでもなくおもしろく「ネトフリのドラマはんぱねえ!」を、全裸監督やら何やらに続いて体現してました。
1990年代〜2022年を生きる日本人全員が共感できる年代記(クロニクル)
上記を裏付ける徹底的な固有名詞の連続(IPまわりおつかれさまです)
愛の不時着を超える(個人的に)脚本のレベル
佐藤健、満島ひかり、濱田岳、夏帆、その他キャストのハマり具合
この辺は、ぶっちゃけ見れば分かりますし、もう誰が見ても面白い!!
ただ個人的にすごく楽しめたのが、
色に注目するとこのドラマもっとおもしろい!!!
という点です。
もう見た人は、とくに色に注目してドラマを思い出してほしい。
全編を通して「色」は、印象的に描かれているので、誰もが気づくポイントですし、考察するポイントはここがメインになるので、多分ドラマ考察系のブロガーとかYouTuberはみんなやってると思います。
だからおそらく内容とかめっちゃかぶってると思う。
自分自身、あまりそういう系の批評や考察は目を通さないので、ごめんなさい。
ただ、いつも自分のなかで完結するこの考察をメモに残したかったんや‥‥
ということで「色で見るFirst Love 初恋」の自分的観点です。
下記の観点で考察していきます。
First Love 初恋ででてくる色の意味
心理状態や状況を反映した色の演出
ここまでやるか?鳥肌級の細部にこだわった色演出
こっから先はネタバレ満載になるので注意です。視聴完了後に読んでもらえると…
↓↓↓以下ネタバレあり↓↓↓
First Love 初恋 に出現する印象的な色たち
いい映画、いいドラマというのは1シーンごとに必ず意味のある描写しかしません。
貴重な予算や時間を使って無駄なシーンは取らず、このような大作ドラマならなおさら小道具1つにとっても力を入れまくってます。
今作「First Love 初恋」では、その意味のあること衣装や背景、ロケーションなどに使われる「色」にあらわれています。
綴(つづる・也英の息子)の全身青いなー!とか、晴道(佐藤健)の家族赤いなー!とか、そのあたりはドラマを見ていればしつこいほど出てきますし、誰もが気づきます。
僕はドラマを見ながら、でてくる色を下記に分けました。
青色・水色
赤色
黄色
白色、黒色
上記以外の中間の色(灰色・くすんだ青・ベージュなど)
この色がドラマ内で持つ意味について、自分はこんな意味があるんじゃないかと考えました。
青色・水色(也英・綴の色)
主人公・野口也英(満島ひかり)の高校生の頃や、その息子・綴(つづる)の衣装として「青色・水色」が使われています。
これは、也英と綴を表すテーマカラーでもあります。
物語の最初のCAのマネをするシーンの空の色、也英の高校生のときの私服、也英と付き合っているときの晴道の服など、
さまざまなシーンで青色・水色が使われています。
共通していえるのは、青色・水色の衣装や小道具が使われているときの也英は「人生がポジティブ方面にはたらいてる」ときです。
総じて、也英が幸せであったり、綴が人生にとってプラスのことをしているときは「青色・水色」が強調されます。
しかし、反対に青色はときとして冷たく寂しい色という印象も受けます。それは、下記に由来しています。
父親と腹違いの姉の華やかな人生と対比になる也英の境遇(決して裕福ではない)
音楽という好奇心に目覚めながら、抑圧された父親の環境で受験勉強を強いられている
青色は也英・綴のポジティブを表す色ですが、青という色の性質上「完璧にポジティブな印象と言い切れない」というのが特徴ですね。
赤色
晴道の家族の色として使われているのが「赤」。すごくビビットで情熱的な赤色です。
赤、青は色の三原色「RGB」の構成色ですし、青色の也英・赤色の晴道は納得いきます。
そして、赤色は晴道の家族のあたたかみを象徴する、底抜けな明るさを表します。
晴道の家族も決して裕福ではなく、ハンディキャップをもった祖父・妹を支えるなどしています。
しかし、晴道の受験勉強を家族全員で見守ったり、妹を馬鹿にされたときは、兄貴が全力でかばうなど、家族としての情熱・あたたかさをどんな家庭よりも持っている素敵な家庭です。
そして、晴道(一家)を象徴する赤は終始ポジティブな印象で描かれています。
黄色
濱田岳演じる旺太郎、夏帆演じる恒美の2人のカラーとして使われているのが「黄色」です。
旺太郎は也英、恒美は晴道に想いを寄せていましたが、どちらも片思い(ないし振られる)というところで恋が終わってしまいます。
その2人がよく身に着けているのが黄色です。
そしてこの黄色、実は黄色いバラの花言葉は「永遠の友情」です。
恋とは程遠い色として黄色が使われています。
白・黒色
北海道やアイスランドの雪景色が美しい白ですが、衣装や小道具の上では、特に「白色」は、まっっっったくのネガティブイメージで用いられます。
也英にとって、理想ではない嘘偽りの時間を過ごしているシーンでは、必ずといって白が使われているのです。
代表的な人物は向井理が演じる行人が「白」の人物。
白衣をまとって脳外科医をし、仕事優先・家庭内モラハラや姑問題を也英に押し付ける問題人物です。
まさに行人と過ごしている時間そのものが「白」であり、也英にとっては嘘・空虚な時間。その象徴が「白色」として描かれています。
また、一見理想ともとれるキザな也英の父親も、也英の母親を振り回した人物。ここもまた、白いスーツで登場してきます。
黒については別れ。ポジティブなイメージでは語られません。それは後ほど…
その他の中間の色(灰色、ベージュ、くすんだ青)
これでもか、というくらい分かりやすい色使いをしている今作ですが、ときに上記に当てはまらない色使いがあります。
その色が、
・灰色
・ベージュ
・くすんだ青
(ほかにもあったかも)
です。
これらが使われている色については、後ほど説明するので、
この色は微妙なときの色、とおぼえててください!
シーンで実際に見る心理状態や状況を反映した色の演出
ここからは上記の色が、実際にどんなシーンの演出で使われたかを、自分が覚えている範囲で書いていきます。
復習ですが、この作品での色の意味は下記の通りです。
青色・水色・・・也英の理想・好奇心・どこか寂しい
赤色・・・晴道自身、家族のあたたかみ、無邪気
黄色・・・友情(恋人になりきれない)
白色・黒色・・・空虚、嘘偽り、理想との乖離
中間色・・・登場人物の心理の変化
主人公・也英の服の色の変わり方
まさに主人公・也英が身につける衣装や小物は、その時の心理や状況によって、色を買えていきます。印象的な変遷は下記のとおりです。
1.高校時代【水色】
使われている箇所:私服
状況:也英の理想の状態・晴道と付き合ってハッピー。しかし、腹違いの姉やお父さんの別居など、寂しい面あり。
2.大学時代【ときに白色】
使われている箇所:強制されたミスコンのドレス、晴道と喧嘩したイタリアンレストランのときの服装。
状況:東京の大学という荒波に揉まれ、理想とはいえない偽りの自分を演じている也英。
3.結婚時代【白色】
使われている箇所:行人の家での服装。
状況:記憶がない状態での偽りの結婚生活。破綻した夫婦。行人にとって理想の妻でいようとし、自然体ではない自分。
4.バツ1実家暮らし時代【白色】
使われている箇所:働いている機内食工場での白い制服
状況:綴を金銭的・時間的に幸せにできていない母親としての想い。自分の母親の理想像と、現在の自分のギャップからくる空虚。
5.タクシー運転手時代【くすんだ青】
使われている箇所:タクシー運転手の制服ジャケット
状況:自立し、綴との面会時間も増え、自分にとって心地良い人生の過ごし方を見つけたので、不満はない状態。
そのため、青に近しい色を着ている。が、それは内なる好奇心や夢を抑え込んだ結果、得た状況のため「青色がくすんでいる」
6.CAのコスプレをするとき【水色】
使われている箇所:CAのコスプレをするとき
状況:自分の夢だったCAに近づくため、工場の出勤前に「水色のCAのコスプレ」をすることで、満足感を得ている。
夢がかなった錯覚をし、羨望の目で見られる様は、一見理想がかなった状態にみえるが「水色」。それは、どこか寂しい色にほかならない。
7.CAの夢を叶えたアイスランドの時代【青】
使われている箇所:ラストシーン
状況:記憶を戻し、晴道と再開を果たしたアイスランドでCAを勤める。その際に着ている服装は「青」。どこか物悲しい「水色」を超え、青の理想系といえる純粋な青を着て、ドラマが終わる。
ほら!色が変わってる!特に制服の色が判明したときはだいぶ鳥肌だった。
晴道の赤・実は也英は無意識的に引き寄せていた。
赤色は晴道を表す色ですが、也英は記憶を失った現在でも、赤色のものを無意識的に引き寄せ、それが結果的に晴道との距離を縮めることとなりました。
結果的に晴道を引き寄せる・距離を縮めることとなった赤いアイテムは下記の通りです。
1.ナポリタン
解説:也英がレストランで並んで食べたナポリタン。晴道を家に入れた時に振る舞った料理・ナポリタン。
ケチャップをふんだんにつかった「赤い料理」です。
まさに、也英の人生に「赤」は切っても離せない色なのが分かります。
2.火星
解説:現代の晴道と也英が距離を縮めることになったのが、火星の大接近の天文イベント。火星の色はまさに「赤色」です。
赤色の天体が大接近するシーン、これはまさに現代の也英と晴道の距離がグッと縮まる展開を指しています。
3.赤い也英のパスポート
解説:日本の有効期限10年のパスポートの色は赤色。これは詩(うた)に影響された也英が日本を飛び出し、海外へ行くために取得したものですが、まさに赤色。
アイスランドという地で、晴道に再開するのは運命だったとしか言えません。
このように「赤色」という色は、晴道(とその家族)を表す色であり、この色を用いたアイテムは必ず晴道との距離を縮めているということになります。
恋人になれない黄色に染まった・染まりかけた也英と晴道
黄色は友情、恋人になりきれない色ということをいいましたが、也英も晴道も「黄色」という色に染まった・染まりかけたことがあります。下記のシーンです。
1.也英が黄色に染まりかけたシーン
也英と旺太郎がボウリング場で会うシーン。全身黄色の旺太郎に向かって、也英は黄色い傘と黄色い長靴で迎えに行きます。
全身ではなく、アイテムの一部に黄色が見えました。
これは旺太郎という存在が少し近くなり、也英の日常に入ってきたことを指します。
しかし、結局告白は成功せず、2人が付き合ったことはないので、也英が全身黄色の服装をしたシーンは一度もありません。
2.晴道が黄色に染まったシーン
これは紛れもなく、夏帆演じる恒美と付き合っているシーンです。カウンセラーという仕事を辞め、北海道に転居してきた恒美の服の色は黄色。そして、この瞬間から晴道の服装は黄色になります。
しかし、付き合って楽しい時間はそう長くなく。ほどなくして、晴道の服装から黄色がなくなります。
黄色は恋人として成功しない色の象徴ですが、実はお互いに一度は別の道を歩みかけています。
脚本家は白黒が嫌い?白黒はただひたすらにネガティブ
本作における白い衣装・小道具はネガティブな印象を与えてきます。白・黒が印象的ない衣装・小道具は下記の通りです。
空虚・偽りを象徴する白の使い方
行人の仕事着=白衣・白色
也英の母を騙した父親のスーツ=白色
晴道の存在を忘れた状態で、ある意味偽りの結婚をする也英の服装=白色
晴道と恒美が偽りの結婚に向かって住む家=白色
恒美が試着するウェディングドレス=白色
別れを意味する黒の使い方
晴道と恒美の結婚が決まり、両家顔合わせ食事会をするスーツ=黒色
晴道が海外のエアラインに挑戦するとき、空港に向かう服=黒色
行人が乗るベンツ=黒色
とりあえず、白と黒は、間違いなくネガティブな印象を与える色して描かれています。
白・黒はもちろんなんでもない色ではありますが、ここまでひどく書かなくていいじゃん…笑
中間色は心理の変化の途中!印象的なアイテム
上記に属さない中間色は、登場人物の微妙な感情を描くときに用いられていました。代表的なシーンは下記です。
1.第1話で晴道が着るセットアップ
色:灰色・グレー
状況:也英の存在に気づくシーンです。両家顔合わせに行くタクシーの道すがら也英を発見し、思わず「初恋」を思い出します。
このときの晴道の衣装はグレー。
恒美との結婚から初恋の人への心の動きを描いています。
2.晴道が公園のランニングで着ているパーカーやダウンベスト
色:灰色・グレー
状況:初恋の人と再会し、恒美との関係を考える晴道。そのときに着ている服装もグレーです。
3.ナポリタンの店でデートしようとするも、直前で諦める晴道
色:ベージュのコート
状況:恒美と別れ、初恋の人・也英と一緒になれるデートの手前、也英の顔を見て引き返す晴道のコートの色はベージュ。
恒美(黄色)との葛藤を経て、無事デートに向かいますが、心は決めきれず、結果として自分の人生を選ぶ、そんな微妙な心理を描いています。
上記の色の法則に則れば、第8話・ナポリタンのデートのシーンは晴道は「赤色」の服を着るか、青色の服を着なければいけません。
そんななか、ベージュのコートを着ていた晴道は、也英を選ばず、自分の道を進むと決めました。
そこまでやるか!鳥肌級の色の使い方
最後です。
「色」に着目して「First Love 初恋」を思い出すと、色に対してのただならぬ執着を感じました。
個人的に鳥肌がたったのが「行人が也英に贈ったプロポーズのバラ」です。
赤い色のバラ100本と、指輪3本(好きなの選んでいいよ)という、なんともキザで、まさに也英の父親を彷彿とさせる行人のプロポーズ。
この行人の赤いバラ、そう赤、赤は「晴道の色」です。本来、行人が使わない色ですが、ここでは使用されています。なぜでしょう?
この行人が贈ったバラは、晴道を表す赤色よりも黒くくすんでいます。
すなわち、行人は晴道の代わりにはなれないことを意味し、演出された赤色は「黒=別れ」へ進んでいることを暗示しています。
これには鳥肌。
何気ないプロポーズ100本の薔薇の赤ですら、ネガティブなイメージをもたせるなんて。ああ。
色に注目してみてね
とまあ、根拠は正直都市伝説レベルですが、ここまで色が強調された作品で、色に意味がないわけがないじゃないですか。
2話くらいから「色の強調」に気づいたので、途中から物語を楽しみつつ「ここ赤!」「ここ青い!」とか、色当てクイズみたいな感じで楽しんでいました。
(あと余談ですが海外でもしっかり戦えるように、LINEではなくメッセージアプリの使用(海外の人からLINEの馴染みがない)とか、ホームアローンのウィットに飛んだジョークとか含めて好きです。)
2022年最後の話題作「First Love 初恋」。話の構成の素晴らしさや脚本、宇多田ヒカルの楽曲とのマッチなど、見どころ満載の神作ですが「色」の使われ方に注目することで、もう1周、楽しめるんじゃないでしょうか?
みてみてねー!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?