撮りっぷ ~戸馳島~
それは異国を旅しているかのような感覚だった。
町自体は見慣れた町や場所だったのだが、
なぜかその日はメキシコやそういう国を想像させた。
梅雨で雨のつもりだったのだが、夏を思わせる快晴になった。
さらに季節に似合わず、乾いた空気がそう思わせたのかもしれない。
宇土を出発し、宇土半島をところどころで写真を撮りながら、戸馳島を目指した。
普段よく通る半島だが、普段足を止めない場所で写真を撮ってみようと、何でもない場所で車を止め、少し路地にはいってもみた。
目に映る建物や風景が異国に見えた。
いつか雑誌などで見た風景に似ていたのだろうか。
戸馳島はよくいく場所だ。
この島にも綺麗な海水浴場やおしゃれなカフェなど、人気のスポットもあるのだが、僕が行く場所は人とはちがっている。
誰もが通り過ぎている、この場所が好きなのだ。
そんな場所を彼女は好きだと言った。
そう言ってもらえると、いい写真が撮れそうな気がしてくる。
どんな旅も終わりはさみしい。
そんなさみしさが撮らせた写真で彼女は笑っていた。