9600形蒸気機関車 重見式給水加熱器試験について②
前回に続き9600形重見式給水加熱器試験について書いていきたいと思います。
前回の記事はコチラ↓
第二回目から昭和2年5月26日に、名鉄局運転課長から本省工作局車輛課長・運輸局運転課長宛てに送付された試験報告書の内容を少しづつ掘り下げていきたいと思います。
今回は試験方法と給水加熱器の3タイプの取り付け方法について書いていきたいと思います。
・試験対象機、対象区間
9629 (直江津機関庫所属)直江津~長野、直江津~牟礼
69647(直江津機関庫所属)直江津~牟礼
39673(直江津機関庫所属)※?
49606(甲府機関庫所属) 甲府~上諏訪
※何故か39673のみ試験区間不記載であるが、
所属機関庫からして試験区間は直江津~長野、或いは直江津~牟礼間と思われる。
・試験方法
上記試験対象機にA,B,Cの3タイプの配管方法で重見式給水加熱器を取り付けて、石炭消費量および水の使用量を給水加熱器使用の場合(配管タイプ別)とインジェクター(注水器)のみ使用の場合で比較を行う。
・配管タイプ
(A)
下の青図は機関車を上部から見た簡略図です。画像左側を煙室扉、右側をインジェクター側として図示されています。先ず左右のインジェクター(注水器)から送水された水は機関車公式側の給水加熱器に送水されます。公式側給水加熱器内をインジェクター側から煙室側へ通過した水は、煙突前部を横切るように配された管を通り今度は非公式側給水加熱器に送られます。非公式側給水加熱器へ送られた水は煙室側→インジェクター側→煙室側と加熱器内部を一往復し、ボイラーに送水されます。
注目は配管タイプAが「重見式給水加熱器最初ノ設計にカカルモノ」と報告書に記載されており、この配管タイプAが最初期の重見式給水加熱器の配管方法と思われます。現在の鉄道関連書籍で解説されているもの(C10,C11形搭載タイプ)と配管の取り回しが異なり、非公式側給水加熱器は加熱器内部を往復し熱効率を高める設計がされています。
49685号は今回の試験報告には登場しませんが、参考までに画像検索リンクを貼っておきます。画像を見る限り配管タイプAのようです。
(B)
続いて配管タイプBです。
インジェクター(注水器)から送水された水は、二又管により機関車左右の給水加熱器に送られます。左右それぞれの給水加熱器内を通過した水は、機関車前部の二又管により合流してボイラーに送水されます。タイプBは前述のタイプAとは異なり給水加熱器内を通過する水は左右どちらも内部で往復せず、インジェクターから煙室方向へ水の流れが一方通行になっています。
この配管タイプBが、のちにC10,C11形蒸気機関車に採用された重見式給水加熱器とほぼ同様の配管方法になっています。(C10,C11形の場合はボイラー上部から逆止弁を通過しボイラーに送水)
(C)
最後に配管タイプCです。タイプCは二つの給水加熱器を機関車非公式側に上下二段に重ねて集約したタイプになります。
左右のインジェクター(注水器)から送水された水は機関車非公式側の給水加熱器に送水されます。送水された水は上下二段に重ねられた給水加熱器内を1.5往復してボイラーに送水されます。
タイプCの場合上下二段に重ねられた給水加熱器内を1.5往復すること、タイプAのように公式側給水加熱器から非公式側給水加熱器へ送水する際の温度低下がないので、見た目では一番熱効率が良好に見えます。(あくまで私見ですが。)
では、この3タイプはそれぞれどのような試験成績だったのか?
書き疲れたのでまた次回に😅
だい鉄
※画像の無断転載はご遠慮願います。